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【映画】博士と彼女のセオリー [映画評]

車いすの天才、スティーブン・ホーキンス博士の美しい伝記映画です。


博士と彼女のセオリー [Blu-ray]

博士と彼女のセオリー [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2016/02/03
  • メディア: Blu-ray



スティーブンホーキンスは1942年生まれの宇宙物理学者です。
入ったら光さえ脱出不可能と思われていたブラックホールについて、「素粒子を放出することで消滅する」と提唱して世界中に衝撃を与えました。
何より有名になったのは『ホーキング宇宙を語る』です。
方程式はE=MC^2だけで、あとは言葉で宇宙を語ることで、全世界に多くの読者を獲得し、宇宙について考える多くの子供たちを生み出しました。
そんなホーキング博士を、夫婦関係をメインにつづります。
映画はホーキング博士の学生時代から始まります。
彼は天才にありがちな変人ですが、恋におち、順調な大学生活を歩んでいましたが、突如として筋ジストロフィーに侵されます。
それでも恋人は強い決意をもって結婚し、ホーキング博士を支え続けます。
しかし、病魔は進み、妻も疲れ、助けが必要になってきます。
妻は気晴らしの聖歌隊に入りますが、そこのリーダーと家族ぐるみの付き合いをするなかで、いつしかリーダーと恋愛関係になってしまいます。
日常生活が困難になったホーキング博士は女性介護士を雇いますが、博士は介護士と深い関係になっていきます。
そうして二人は別れますが、別れた後も友人関係は続き、イギリス女王から勲章を受け取るときも一緒にいきます。
そこで子供たち3人をみながら、ホーキングは妻に語り掛けます。
「私たちが作ったものを見て」

とてもいい映画だと思います。
上映当時、ホーキング博士は存命でした。だから難しい部分はあったかと思いますが、上映が終わった後、ホーキング博士は涙を流したそうです。
最後は別れる二人ですが、妻の愛情と、現実と奮闘する姿が丁寧に描かれています。
幸せな瞬間もあれば、疲れる瞬間も、いがみ合う瞬間もある。そうした人間として当然の部分が出ている映画だと思います。
もちろんホーキング博士の偉業も描かれています。
批判の中に偉業に対する掘り下げが足りないという論がありますが、ここを掘り下げるとマニアックになりすぎて、メインテーマである妻との関係性が薄れてしまいます。
さらりと触れるに留めるのは適切な判断だったと思います。
また、映画には有名なペントハウスの件もありますし、『ホーキング宇宙を語る』の執筆、神についての考えも映画のなかにでてきます。
脚本もよくできていると思います。登場人物を絞ることで、ひとりひとりの心情を深く描いています。
不満点といえば、みんないいひとだらけ、という部分ぐらいでしょうか。けど、伝記映画だし、病気と宇宙相手に戦っていた学者なので、これでよかったのかもしれません。
こうした映画は興行的に苦戦するかと思ったのですが、製作費15百万ドルに対して興行収入1億24百万ドルと大成功を納めました。
受賞も多数ですが、ホーキング博士を演じたエディ・レッドメインがアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。それだけの価値のある演技だと思います。

ホーキング博士の生涯を振り返りたいひとのために!
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【書評】倉知淳『皇帝と拳銃』 [書評]

死神のような刑事「乙姫」が難事件に挑む倒叙ミステリです。


皇帝と拳銃と (創元推理文庫)

皇帝と拳銃と (創元推理文庫)

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/11/11
  • メディア: Kindle版



収録されているのは4編です。
いずれも由緒正しいと言いたくなるような、正統派倒叙ミステリです。
まず事件が犯人目線で語られ、主人公である刑事が関係者に聞き込みをしながら犯行を暴いてきます。
ただし、主人公である乙姫刑事の心情は一切語られません。
刑事の心情を書かないあたりが、刑事コロンボから続く倒叙ミステリの形式でしょうか。

『運命の銀輪』ですが、犯行が発覚する理由の意外性が印象に残りました。
ただ、自転車を外においておくのは不自然かな。洗い流したいなら、雨に打たれなくても、途中の公園で洗うかなにかすれば良いだけだし。
『皇帝と拳銃』は雰囲気が良いです。
ただ、皇帝が主張する外部犯行説は、そもそも外部の人間が大学に侵入する必然性がないから苦しいかな。
『恋人たちの灯』は読後感が良いです。
ただ、二人のSUICAの履歴からアリバイ工作がすぐにバレそうな気も。
『吊られた男と語らない女』は早い段階で真相が見えました。首吊り死体の現場には特徴的な跡が残るので、移動したかしないかは鑑識で分かると思う気が。

とまあ、つっこみたくなるところもありますが、よくできたミステリだと思います。
倒叙ミステリファンのために!
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第82期順位戦【最終結果・B級2組】 [将棋]

※◎○▲は開幕前の予想です。
〔B級2組〕◎高見泰地七段 ○丸山忠久九段 ▲村山慈明七段
https://www.shogi.or.jp/match/junni/2023/82b2/index.html
最終戦を前に大石直嗣七段の昇級が決定。残り2枠を2敗勢の髙見泰地七段、深浦康市九段、石井健太郎六段、青嶋未来六段が争います。
数字上は3敗勢にも可能性はありますが、さすがに確率は低そうです。
昇級戦線は以下のような結果となりました。

 高見泰地七段 ○ - ● 杉本昌隆八段
 深浦康市九段 ● - ○ 佐々木慎七段
 戸辺誠七段  ● - ○ 石井健太郎六段
 青嶋未来六段 ○ -● 阿部 隆九段

昇級者は大石七段、高見七段、石井六段の3人です。深浦九段は最終戦に敗れ、青嶋六段は順位の差で惜しくも昇級を逃しました。来季に期待です。

B級2組は降級点2つで降級です。
今期降級となったのは阿部隆九段、中村修九段、畠山鎮八段、飯島栄治八段、井上慶太九段の5名です。
長年B級2組で踏ん張ってきた中村九段と井上九段が揃って降級となってしまいました。
大ベテランの谷川浩司十七世名人は7勝3敗と奮闘し順位が大幅にアップしました。来季も頑張ってほしいです!

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