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【書評】保坂直紀『クジラのおなかからプラスチック』 [書評]

プラスチックによる海洋汚染問題を取り上げます。


クジラのおなかからプラスチック

クジラのおなかからプラスチック

  • 作者: 保坂 直紀
  • 出版社/メーカー: 旬報社
  • 発売日: 2018/12/11
  • メディア: 単行本



プラスチックは頑丈で衛生的で形成も容易です。
現代生活にはなくてならないものですが、プラスチックは自然では分解されないため海をただよい、それが海洋生物に様々な悪影響を与えて問題になっています。
やり玉に挙げられるポリ袋だけでなく、マイクロプラスチックというプラチックの欠片も広がっているそうです。
基本的には反プラスチック側の本ですが、無理にリサイクルしようとすると逆に石油を余計に使うこと、単純にプラスチックを無くせばよいわけではないこともしっかり書かれており、バランスが取れていると思います。
冒頭にビニール袋に包まれた海鳥の写真が掲載されていますが、かなり衝撃的です。

プラスチック問題を考えたい児童たちのために!
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【書評】山口育孝『歯と歯みがきのひみつ』 [書評]

学研まんがでよくわかるシリーズ86です。

ほとんどの人が歯科に通ったことがあると思います。
それほど虫歯は国民病と言っても過言ではないと思います。
本書は漫画の形とをかりて、歯の大切さから、歯の仕組み、歯磨きのしかたなどをひととおり学ぶことができます。
ライオンの協力で尽くされているので、途中で紹介される歯ブラシや歯磨き粉の歴史がライオンの製品だったり、工場見学もライオンの工場だったりします。
このあたりは、このシリーズのお約束ということで。

子供たちに歯の大切さを教えたいひとのために!
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【書評】清武英利『石つぶて』 [書評]

2001年に発覚した外務省機密費流用事件を追う刑事たちのノンフィクションです。


石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの (講談社文庫)

石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの (講談社文庫)

  • 作者: 清武英利
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/07/16
  • メディア: Kindle版



警視庁捜査第二課は、知能犯を扱っています。
その中で情報を集める情報班に所属する主任が、ノンフィクションの主人公です。
その主任は昔風の刑事で、いわばテレビドラマの主人公のようです。
足と情で稼いだ情報である汚職事件を追います。調べてみると、桁違いな金額が動いていることに驚きます。
被疑者が外務省の実力者であったことから、捜査に及び腰になる刑事もいる中で、トップの決断で事情聴衆に踏み込みます。
汚職事件かと思っていたら、実は機密費を流用していることが判明し、官邸まで巻き込む大事件へと繋がっていきます。
本書にはヘンクツ者の刑事や、ハミダシ者の刑事が登場します。
事件にあたり、彼らがどのように動いたのか、そのころの捜査第二課の雰囲気がどうだったのかをよく再現していると思います。
近年は汚職事件の摘発が減っているようです。
強引なことができなくなり、捜査も難しい世の中になったのかな、とも思います。

外務省機密流用事件捜査の裏側を知りたいひとのために!
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【書評】清武英利『しんがり~山一証券 最後の12人~』 [書評]

山一証券破綻後も会社に残り、清算業務と破綻の真相解明を続けた社員たちを追うノンフィクションです。


しんがり 山一證券最後の12人 (講談社文庫)

しんがり 山一證券最後の12人 (講談社文庫)

  • 作者: 清武英利
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: Kindle版




本書は2014年講談社ノンフィクション大賞を受賞した渾身作です。
山一証券が破綻したのは、バブル崩壊後数年が経過した1997年です。
それまで飛ばしを始めとする様々な粉飾決算を繰り返し、大口顧客には利回りを約束して資金を集めては違法な損失補填を続け、3000億近い帳簿外債務を隠し続けます。
それらがすべて爆発したのが、1997年です。
混乱する会社に踏みとどまったのは、いままで「場末」と呼ばれて会社の本流からは遠い位置にいた業務管理本部の社員です。
会社の危機は一部の幹部だけが抱え、社員はもちろんのこと、常務の中にも知らないひとがいました。
業務管理本部が敗走する会社の「しんがり」となり、幹部たちへのヒアリングを繰り返し、清算業務も並行して行うという誰も得しない業務を引き受けます。
ОBたちの妨害や、後ろ向きな業務に様々な悩みを抱えつつ、目の前の仕事に没頭する社員たちの頑張りに敬意を表したいです。
主人公がはっきりしていて、まるで小説のように読めるノンフィクションです。

遠ざかりつつあるバブル崩壊の記録を残すために!
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【書評】星新一『進化した猿たち2』 [書評]

アメリカのヒトコマ漫画を紹介する希少本です。


進化した猿たち (2) (新潮文庫)

進化した猿たち (2) (新潮文庫)

  • 作者: 星 新一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/12/22
  • メディア: 文庫



星新一というとショートショートの神様ですが、面白いエッセイを書かせたらこれまた天下一品です。
本作は星新一が趣味で集めたアメリカのヒトコマ漫画を紹介しつつ、テーマにまつわるエッセイがついています。
13のテーマのそれぞれに10~20のヒトコマ漫画がついているので、ざっくりと200本ほどヒトコマ漫画があるお得版です。
本書は雑誌での連載をまとめたものですが、連載されていたのは昭和40年代前半です。
漫画には女性蔑視と取られかねない下ネタやブラックジョークが多く、現代ならポリコレ棒で叩かれて出版が難しいかもしれません。
ベスト版も出版されていますが、こちらはエッセイだけでヒトコマ漫画がありません。
そういう意味で、貴重な本だと思います。

ヒトコマ漫画が好きな人のために!
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【書評】菅浩江『永遠の森』 [書評]

宇宙に浮かぶ巨大博物館にまつわる短編連作です。


永遠の森 博物館惑星

永遠の森 博物館惑星

  • 作者: 菅 浩江
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: Kindle版



主人公は美術館の学芸員ですが、そこに様々な不思議なものが持ち込まれます。
主人公は巨大博物館と直接リンクされており、それらの知識を使いつつ、謎を説いていくというのが基本コンセプト……だと思う。
幻想的な話かと思いますが、なかなかイメージがつかめず、悪戦苦闘です。
基本的にはいいひとばかり登場するので、安心して読めるSFです。

綺麗な話を読みたいひとのために!
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【書評】清武英利『トッカイ 不良債権特別回収部~バブルの怪人を追いつめた男たち~』 [書評]

不良債権からの回収に奮闘するトッカイたちの活躍を描くノンフィクションです。


トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち

トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち

  • 作者: 清武 英利
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 単行本



バブルがはじけた後、日本中に膨大な不良債権が残されました。
それらを一手に引き受け、国策会社として回収に奮闘するのがトッカイの面々です。
前半は初代社長である中坊公平のゲキのもと、ブラック企業も真っ青な激務で次々と不良債権を回収していきます。
現場を任された面々は、銀行等で主流を外れた面々で、だからこそ雑草魂で目の前の仕事に向かっていきます。
後半は中坊公平が引いた後です。
時代の流れもあり債権回収から企業再生へと舵を切り、初期の荒法師たちは潮時を感じて会社を去っていきます。
その一方で、バブルの怪商たちとの戦いは続いていきます。
著者は読売巨人軍の元代表ですが、こんなに面白いノンフィクションを書けるひとだとは思いませんでした。
こちらの方が天職なのかもしれません。

トッカイたちの奮闘を読みたいひとのために!
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【書評】小松左京『こちらニッポン……』 [書評]

小松左京得意のパニックSFです。


こちらニッポン… (ハルキ文庫)

こちらニッポン… (ハルキ文庫)

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2021/12/13
  • メディア: 文庫




ある日、突如として人類のほとんどが消滅します。
日本国内で「消え残った」と推測されるのは二十人ほど。わずかな消え残りのひとりである主人公は、日本各地に散らばる仲間たちとコンタクトをとり、なんとか生活のめどを付けようと奮闘します。
『復活の日』『アメリカの壁』『首都消失』『日本沈没』といった系譜につらなるパニックSFです。
『復活の日』では全世界が新種のウィルスにより南極を残して全滅する世界を描き、『アメリカの壁』ではアメリカが不思議な壁により世界から孤立する話を『首都消失』では逆に不思議な壁によって首都圏にアクセスができなくなる話を『日本沈没』では地殻変動によって日本が海に飲み込まれる話を書いています。
これらの話と『こちらニッポン……』の大きな違いは、人間の少なさです。
急に人間が消えたら社会はどうなるのか、というシミレーション小説ではあるのですが、人間が少ないために人間ドラマが希薄になっています。
終盤で少ない女性を巡って男性同士でトラブルになりますが、なぐりあって解決というのはなんだかなあと。
また、オチも、途中でにおわせられて「まさかこれはないよなあ」と思っていたその「まさか」だったので、うーん、という感じです。
ただ、リーダビリティーは抜群だと思います。

小松左京のパニックSFを読みたいひとのために!
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【書評】青野照市『はじめての1手必至問題』 [書評]

良質の必至問題がそろっています。


はじめての1手必至問題 (将棋パワーアップシリーズ)

はじめての1手必至問題 (将棋パワーアップシリーズ)

  • 作者: 青野 照市
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2021/09/10
  • メディア: 単行本



将棋の代表的勉強法といえば詰将棋ですが、それよりはるかに多くの読みを必要とするのが必至です。
本書は序盤が簡単な問題なので、代表的な必至の形を自然と覚えることができます。
終盤になると急に難易度があがり、1手にも関わらずかなり難航しました。
何度も読み返して形を覚えるのによい問題集だと思いました。

終盤の勉強をしたいひとのために!
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【書評】半藤一利・秦郁彦・戸高一成『連合艦隊・戦艦12隻を探偵する』 [書評]

現代史家の泰斗3名による鼎談です。


連合艦隊・戦艦12隻を探偵する

連合艦隊・戦艦12隻を探偵する

  • 作者: 半藤一利,秦 郁彦,戸髙一成
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2011/11/29
  • メディア: 単行本



太平洋戦争は空の戦いでした。
時代遅れとなった戦艦たちですが、かれらがどのような活躍をしたのか、もっと活躍の場はなかったのか、というのを3人がそれぞれの立場で話します。
一番戦ったのは、明治44年から購入、竣工した金剛型4隻です。
近代化改修で推力機関が後の長門型を大きく上回り、大和型に匹敵するするパワーを得たことで30ノットの高速戦艦となり、様々な戦場に駆り出されていきます。
耐用年数を超えた老朽艦なので沈んでも惜しくないと考えたのかもしれません。
次の扶桑型・伊勢型はパワー不足で速力がなく、目立った活躍はありません。伊勢型は航空戦艦に改造されてマニアに人気を博しますが、60万工程×2隻なので、工程的には航空母艦3隻(40万工程×3隻)が作れたようです。
長門型、大和型は大鑑巨砲の極地的存在ですが、「遠いと弾は当たらん」と3人とも意見は一致しています。
酸素魚雷も射程は長いですが、そもそも遠くから打てば当たらないので「意味はあるのか」と散々です。
戦艦もまだまだ使いようはあったと思いますが、国力の限界から損失を恐れる戦い方では難しかったのかなと。
そもそも、戦争自体に無理があったという結論になるとは思いますが。

主役になれなかった戦艦たちの話を聞きたいひとのために!
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