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【書評】鯨統一郎『金閣寺は燃えているか? ~文豪たちの怪しい宴~』 [書評]

文豪たちの怪しい宴の続編です。


金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6)

金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6)

  • 作者: 鯨 統一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/11/11
  • メディア: 文庫



今回も純文学作品を斬新な視点で切ります。
取り上げられているのは川端康成『雪国』、田山花袋『蒲団』、梶井基次郎『檸檬』、三島由紀夫『金閣寺』です。
『雪国』は主要人物の葉子が幽霊だった!
『蒲団』の本当の著者は花袋の女性弟子だった!
『檸檬』は文学界に投げ込まれた爆弾だった!
『金閣寺』は三島由紀夫の自決で完成した!
という解釈が3人の掛け合いで述べられます。
前作『文豪たちの怪しい宴』と比べるとやや強引で、ネタ的に厳しいかもしれまん。
大量生産できるテーマではありませんからね。
作品には様々な蘊蓄がちりばめられています。
炎上する前の金閣寺は金箔ではなかったとか、川端康成と三島由紀夫の関係とか、田川花袋は文庫の解説で福田恆存から罵倒されていたとか、そうしたマメ知識も面白いです。

純文学作品をモチーフにした変わったミステリを楽しみたいひとのために!
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【映画】スパイダーマン2 [映画評]

全てがハッピーエンドで終わる奇麗なストーリーです。


スパイダーマン2 [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

スパイダーマン2 [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2017/06/07
  • メディア: Blu-ray



サムライミ監督のスパイダーマン第2弾です。
本敵はドク・オクです。
スパイダーマン1のグリーンゴブリンと共通ですが、本敵といって元々悪人ではありません。
グリーンゴブリンは会社のため、ドク・オクは人類を救う新技術を開発しようとした結果、主敵になってしまいます。
さてさて物語ですが、ピーターは大学生になっています。
夜はスパイダーマンとして活躍するため、大学の講義に出席はできず、バイトも遅刻ばかりで家賃も払えず、MJとの大切な約束すらスパイダーマンとしての活動を優先したため遅れてしまいます。
スパイダーマンとして活動すればするほど、ピーターの人生から大切なものがどんどん失われていきます。
特にMJから愛想をつかされ、幼馴染なのに、どんどん距離が離れていきます。
精神的に追い詰められたピーターはスパイダーマンとしての力を失い、ついに引退を決意します。
これがメインプロットです。
サブプロットはドク・オクの話です。
ドク・オクは優秀な科学者で、核融合技術の開発の成功します。核融合装置を操作するために自ら開発した人工知能付きの4本のアームを装着するのですが、実験の途中で核融合装置が暴走します。
4本のアームを制御するチップも壊れたことで、ドク・オクは精神を4本のアームに乗っ取られてしまうます。
ドク・オクは実験を再開するために、銀行強盗を行い、そして装置を着々と組み立てます。
このふたつのプロットは、前半から絡み合います。
ピーターは主敵になる前のドク・オクとも会っていますし、核融技術の実験中、さらには銀行強盗の最中にも遭遇します。
スパイダーマン1とも共通ですが、サブプロットで主敵の背景を描くことで、敵と敵として終わらせないところが上手いです。
ミッドポイントは、養母の引っ越しのシーンです。
時には正義のために夢をあきらめなければならないこと、子どもたちにはヒーローが必要であることを諭され、ピーターはスパイダーマンとして復活することを決意します。
それは、MJを諦めるという選択です。
ドク・オクの実験にはトリチウムが必要です。ドク・オクはオズボーン社の社長になったハリーから、トリチウムの交換条件としてスパイダーマンを連れてくるよう要求されます。
そして、ドク・オクとスパイダーマンとの戦いは佳境を迎えます。
サムライミ監督はスパイダーマンの前はホラー映画を撮っていたそうですが、とてもよくできたストーリーだと思います。
スパイダーマンシリーズを通じてのテーマは「力には義務が伴う」ですが、本作ではピーターに二者択一を迫ります。
最初にピーターま間違った選択しますが、次に正しい選択をさせて主人公の成長を見せます。
この時点では主人公に葛藤が残っていますが、この葛藤も最後に解決されます。とても奇麗なストーリーです。
メインテーマですが「力」を「知恵」にしても成り立ちます。
この新しいテーマを提示されるのがドク・オクです。
MJとの関係も、近づいたり離れたりで、ここは恋愛映画の技法を織り込んでいます。
製作費2億ドルに対して興行収入は前作より少し下がったとはいえ7億8千万ドルと堂々たる成績です。
アカデミー賞も1部門受賞です。

スパイダーマン伝説の第2章を楽しみたいひとのために!
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第3期ヒューリック杯白玲戦展望【終盤戦・ラス前】 [将棋]

残り1局です。

[A級]
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/3/a.html

第7戦に西山朋佳女流三冠と伊藤沙恵女流四段との対戦があり、終盤で二転三転する熱戦を西山女流三冠が制し、山根ことみ女流二段が敗れた最終局を前にして挑戦が決定しました。
大本命が堂々と挑戦権獲得です。
残留争いでは、中村真梨花女流四段2勝6敗となり順位の差で陥落決定。
残り1名は2勝の中井広恵女流六段が次局勝利が絶対条件。その上でキャンセル待ちです。
3勝の甲斐智美女流五段と渡部愛女流三段は負けると陥落の可能性があります。
今期で引退する甲斐女流五段の穴がどうなるのかが、気になります。

[B級]
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/3/b.html
塚田恵梨花女流二段が8連勝と圧倒的な成績で昇級一番乗りです。ここまで突き抜けるとはびっくりです。A級でも期待したいです。
残り1枠は鈴木環那女流三段、室田伊緒女流二段、石本さくら女流二段の争い。
鈴木女流三段は自力、室田女流二段はキャンセル待ち、石本女流二段は自身が勝利したうえでのキャンセル待ちです。
陥落は1勝ち岩根忍女流三段、山田久美女流四段で確定ですが、甲斐女流五段の影響で人数調整があれば助かる可能性があるのかもしれません。
最後まで気は抜けません。

[C級]
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/3/c.html
伊奈川愛菓女流二段に続いて和田あき女流二段も7連勝でB級への昇級が決定。室谷由紀女流三段を破った星が大きく、見事な成績だと思います。
残り1枠は室谷由紀女流三段、加藤結李愛女流初段、武富礼衣女流初段、小髙佐季子女流初段の争い。
最終局で勝てば昇級の室谷女流三段の対戦相手は山口恵梨子女流二段なので、激戦は必至です。
降級枠は4名ですが、K・フォルタン女流初段が引退されているので人数維持を優先すると実質3枠でしょうか。
すると、最終戦を前にして1-6の竹部さゆり女流四段、0-7の船戸陽子女流三段、宮宗紫野女流二段で確定です。
4人の場合は2-5の藤井奈々女流初段、10位の3-4ながら藤井奈々女流初段より順位の低い藤田綾女流二段の争いです。

[D級]
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/3/d.html
1敗の内山あや女流初段、大島綾華女流初段が最終局を待たずに昇級決定です。2敗の渡辺弥生女流二段ですが、最終局が不戦勝になるため、順位の差で昇級決定です。
残り1枠を、中村桃子女流二段と堀彩乃女流1級が争います。直接対局で勝者がC級に昇級という鬼勝負です。
最後まで目が離せません。
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ABEMAトーナメント2023【予選Dブロック】 [将棋]

重量級のチームがそろいました。

〔番組HP〕
https://abema.tv/video/title/288-37

何より注目はチームエントリーです。早指しは若手有利の定説を打ち返すような、郷田九段と行方九段の勝ち上がりです。
50を超えた羽生世代ですが、チーム康光にはリーダーの佐藤康光九段が、チーム糸谷には森内俊之九段が、チームエントリーには郷田真隆九段がと全チームにいることが驚きです。
ベテランの技が光る対局になるかもしれません。

[チーム康光 ― チームエントリー]
 チーム康光が好発進。いきなり4連勝かつチーム3人全員が白星を挙げる理想的な展開。
 チームエントリーは古賀悠聖五段が高見泰地七段相手に一矢を報いますが、リーダー康光に行方尚史九段がとどめを刺されました。
 5-1とチーム康光が大きなリードを奪う勝利を挙げました。チームエントリーはいきなり苦しくなりました。
 
[チーム康光 ― チーム糸谷]
 チーム康光は高見泰地七段、大橋貴洸七段が2-1と白星を重ねますが、チーム糸谷もメンバー3人が白星を挙げて互角の勝負となります。
 ラスト2局で勝ち星のない康光リーダーの連投となりますが、糸谷哲郎八段、森内俊之 九段相手に連敗。リーダー3連敗となり、チームも敗れました。しかし、トータルではプラスを維持して、チーム康光が予選突破決定です。   

[チームエントリー ― チーム糸谷]
 -4のチームエントリーは、5-2以上の勝利が絶対条件です。
 途中まで4-2と奇跡の大逆転の可能性を残していましたが、郷田九段が糸谷八段相手に優勢を維持しながら勝ちきれず、無念の敗退決定です。ベテランは終盤で秒に追われるとミスが出やすいのかもしれません。
 残り2戦も森内九段に連敗し、無念の0勝での予選敗退です。


・チーム康光(予選通過)
 佐藤康光 九段  2-3
 高見泰地 七段  3-2
 大橋貴洸 七段  4-1

・チーム糸谷(予選通過)
 糸谷哲郎 八段  4-2
 森内俊之 九段  4-2
 徳田拳士 四段  2-4 

・チームエントリー(敗退)
 郷田真隆 九段  1-4 
 行方尚史 九段  1-4 
 古賀悠聖 五段  3-2 
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