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【書評】倉知淳『片桐大三郎とXYZの悲劇』 [書評]

引退した大物時代劇俳優が探偵役を務める意欲作です。


片桐大三郎とXYZの悲劇

片桐大三郎とXYZの悲劇

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/09/24
  • メディア: 単行本



警察物以外のミステリでの悩みところは、どうやって探偵役を事件にからめるかです。
風変わりな探偵を産み出してきた倉知淳ですが、本作では耳が聞こえなくなったため引退した大物俳優を探偵役として送り出しました。
設定としては、一日警察署長に就任した際に、強引に割り込んだ捜査室で難事件をピタリと解決してから警察のアドバイザー役をしていて……ということですが、設定的に苦しいのはまあしかたがありません。
楽しければよいのです。
ということで、収録作品は以下の4編です。
・冬の章 ぎゅうぎゅう詰めの殺意
→ 満員電車の中で毒物注射による殺人が行われます。意外なところから犯人の隠ぺ
  い工作が明らかになりますが、まあ、普通は余計なことをせず逃げるところ。 
・春の章 極めて陽気で呑気な凶器
→ 設定が面白い。凶器になぜマスカラが使われたのか、というところから事件の真
  相が明らかになります。佳作だと思います。
・夏の章 途切れ途切れの誘拐
→ 誘拐事件と思わせて、意外な結末が待っています。なによりブラックジャック
  の正体が……。
・秋の章 片桐大三郎最後の季節
→ 叙述トリックです。ここだけ、「主人公が耳が聞こえない」という設定が活かさ
  れています。

『途切れ途切れの誘拐』が衝撃度では一番です。
いやあ……と思ってしまいました。

変わった探偵役が登場するミステリを読みたい人のために!

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