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【映画】ストックホルム・ケース [映画評]

ストックホルム症候群の語源となった事件を描くスリラーです。


ストックホルム・ケース スペシャル・プライス[Blu-ray]

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題材となった事件は1973年に発生していますが、映画では犯人の名前などが変えられていますし、経過も少し異なっています。
映画のストーリーですが、変装したラースが逃亡資金を得ることと、刑務所にいる親友を助けるために、銀行を占拠して3人を人質に取ります。
最初は犯人を恐れる人質たちでしたが、徐々に犯人との親密度が増して、最後には恋心まで抱くようになってしまいます。
この事件が、ストックホルム症候群の語源となっています。

いやあ、これ、すごく分かります。
人質から見れば、最初は名前のない凶悪犯です。その凶悪犯が人間らしいところを見せることで、被害者側が犯人を見る目が、凶悪犯から人間へと変わってしまいます。
こうなってくると、進展を見せない警察への不満もあいまって、徐々に人質たちが心理的に犯人を頼るようになります。
人質の心理が変化するのと同時並行で、犯人も人質を大切に扱うようになります。
人質が家に電話するのを許します。一緒にラジオを聴いたり、ヒット曲を歌ったりします。
警察との駆け引きのために防弾チョッキを着せてから犯人が人質を撃ち、殺害したふりをするのですが、人質が気絶したことで「本当に殺してしまった!」と犯人がパニックになってしまいます。
乏しい食料もみんなで分け合います。身の上話までします。
最後には犯人たちを助けるために人質がアイデアを出したりします。
もうこうなると、人質たちも犯人と一心同体です。
最後になると被害者なのに凶悪犯を守るような姿勢まで見せます。
傍目には人質たちの行動は変ですが、その心理の動きを克明に描くことで、だれもが納得せざるを得ない映画に仕上がっていると思います。
いろいろと考えさせられる、いい映画だと思います。

ストックホルム症候群について知りたいひとのために!
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【書評】田丸雅智『オバペディア』 [書評]

日本ショートショート界をけん引する、田丸雅智のショートショート集です。


オバペディア

オバペディア

  • 作者: 田丸雅智
  • 出版社/メーカー: 潮出版社
  • 発売日: 2019/05/31
  • メディア: Kindle版



なにより絶品なのは表題作の『オバペディア』です。
これはインターネットにのらないおばさん知識、オバペディアを活用する話ですが、どちらかと言うと敬遠される”オバサン”という単語を羨望の的にした逆転の発想に加えて、おばさんの知識を極限まで広げた拡大の手法が使われています。
発想法の二重奏が見事です。
あとは『あの日の花火』も印象的です。
誰もが持つ青春時代を振り返りたくなる気持ちにささやきかける、よくある話といえばそうかもしれませんが、やはり琴線に触れてしまいます。
全部で18編収録です。

ショートショートが好きなひとのために!
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