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【書評】森見登美彦『恋文の技術』 [書評]

ユーモアたっぷりの書簡体小説です。


([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)

([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2011/04/06
  • メディア: 文庫



主人公は人里離れた研究所に送り込まれた大学院生です。
恋文の確立すると宣言し、愛しい人にいつか恋文を送るため、いろいろなひとと文通を繰り返します。
普通、書簡体形式というと、A→B、B→Aの繰り返しです。
ところが、この本はひたすら主人公から相手方への手紙、つまりA→Bだけで構成されています。
それでも、手紙の中で返信の内容に触れているため、B→Aがどのような文面だったのか概ね理解できます。
とにかく登場人物が変なひとばかりで、奇想天外な事件ばかり起こるのですが、自分が感心したのはその構成です。
全12章で最後が愛しい人への恋文なのですが、1~10章がその手前の11章を活かすために存在していることです。
愛しい人への恋文の中で、主人公は、最も美しい手紙として風船に結ばれて空に浮かんでいる手紙だと書きます。
「伝えなければならない用件なんて何も書いていない。ただ、なんとなく相手につながりたがっている言葉だけが、ポツンと空に浮かんでいる」
このフレーズにしんみりとしました。
なかなかの傑作だと思います。

思いっきり笑いながら、読後感の良い小説を読みたいひとのために!
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