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最近の日常【令和4年8月上旬】 [日常]

〔ノートPCを買い替えようと思った話〕
在宅ワーク用のノートPCのエンターキーが利かなくなった。
エンターキーが使えないと仕事にならないし、外付けキーボードも面倒なので、思い切って買い替えることにした。
正直なんでもいいのだが、ソフトやらの移行がめんどくさい。
いまのPCを基準に考えようと思って、画面サイズやSSDなどを確かめる。
で、同じ性能の製品を買おうと思っていろいろ確かめている途中で、エンターキーが復活しました。
まあ、こういうこともあるということで。

〔ノートパソコンを購入した話〕
とか思ってしばらくノートパソコンの購入をためらっていたら、今度は充電口の接触が悪くなった。
充電するのに角度調整やらのテクニックが必要となり、さすがに面倒になってきた。
完全にダメになる前にということで、思い切って新たなノートパソコンを購入する。
サイズは小さめで軽量。長時間バッテリーで、できればワード系ソフトがプリインストールしてあれば楽だなあ。ただ、中国系のメーカーはいろいろ不安があるので除外。
という基準で選んでいくと、ASUSで3万ちょっとの製品が見つかった。ただSSDが64GBと小さい。
さてこれで大丈夫かなと思って、使用中のノートパソコンの使用状況を見ると、なんと31GBしか使用していない。
なんだ大丈夫じゃん、と思って即購入しました。はい。
ただ、小さいのでキータッチの感触が変わるため、慣れるのに多少の時間がかかりそう。
おいおい、使っていきます。
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第16回白瀧あゆみ杯争奪 新人登竜戦決勝(和田はな女流1級VS砂原奏) [将棋]

若手女流棋士選抜の非公式戦です。

〔主催者ツィッター〕
https://twitter.com/umegoshogi

非公式戦ですが、その後に活躍する女流棋士が目立ちます。
上田初美、中村真梨花、伊藤沙恵、西山朋佳、渡部愛、塚田恵梨花、山根ことみ、などなど女流トップクラスが並んでいます。
過去にはコマ落ちで若手男性棋士が参加したこともあり、第5回で永瀬拓矢が優勝しています。
ちなみに第4回も男性棋士である田中悠一が優勝しています。
この2人は、女流棋戦で優勝した男性棋士という今後おそらく現れないだろう珍記録の持ち主となりました。
第16回の決勝は和田はな女流1級とアマチュア枠から勝ち上がった砂原奏です。
さあ、優勝はどちらの女性に輝いたでしょうか!

〔棋譜※徹底解説!将棋の定跡さんより〕
https://www.youtube.com/watch?v=z5qTgk5QvnA

ということで、将棋です。
後手の砂原アマは三間飛車から美濃囲いを採用します。
先手側の対策はいろいろありますが、左美濃からシンプルに銀を繰り出し、7五の歩を狙います。
対して砂原アマは6五歩と銀を追い返そうとしますが、これに和田1級が5五歩と反発して激しくなります。
お互いに銀を取り合いますが、和田1級は角飛車交換の上に相手の手順に乗って桂馬を6五まで跳ね出し、さらに飛車も5筋に展開と自然な対応で優勢を築きます。
また桂金交換の駒得にも成功しています。
砂原アマは苦戦しながらも、3一角打ちからの端攻めで見せ場は作ります。
だが、全局を通じて和田1級が手厚かったです。
106手まで後手が勝利し、和田1級が見事に初優勝を決めました。ちなみに姉の和田あき女流初段も優勝経験があり、これで姉妹優勝達成です。

和田女流1級おめでとうございます!
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第5回ABEMAトーナメント【1回戦:チーム斎藤VSチーム三浦】 [将棋]

強力メンバーを要するチーム斎藤が1回戦に登場です。

〔主催者HP〕
https://abema.tv/video/title/288-32

<チーム斎藤>
 斎藤慎太郎八段、木村一基九段、佐々木勇気七段

<チーム三浦>
 三浦弘行九段、池永天史五段、伊藤匠四段

戦いは一進一退の好勝負となります。
お互いに先手番で白星を重ねていきます。
チーム三浦はエースと目されていた伊藤匠五段がなんと3連敗の誤算です。逆に池永五段と三浦九段が白星を重ねます。
この白黒の均衡が破れたのは第7戦です。木村九段が池永五段の先手番をついにブレイクして、第8戦の佐々木勇七段へと繋ぎます。
佐々木七段はここまで連敗と調子は良くありません。
しかし、三度の対決となった三浦九段相手に横歩取りでいどみ、三度目の正直で白星をもぎ取るとともにチームの勝利を決めました。
苦しみながらも2回線進出です。

来週はチーム永瀬VSチーム広瀬です!


[トータル成績]
 斎藤慎太郎八段 5-2
 木村一基九段  4-2
 佐々木勇気七段 4-5

 三浦弘行九段  3-5
 池永天史五段  4-3
 伊藤匠四段   3-6
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創作状況【8月上旬】 [ぼくの公募状況]

猛暑が続きますので、熱中症にはご注意を。

【第179回のメュー】
◆創作に役立つ本 ~ 眉村卓 『ねらわれた学園』 ~
◆W選考委員版・小説でもどうぞ!に挑戦中(第1回)
◆小説でもどうぞ!に挑戦中(第10回)
◆公募情報数点

 来月のテーマは物語に引き込むための序盤の仕掛けです。
 次回発行は9月5日です。メルマガは無料なので、ドンドン登録してください!
 https://www.arasuji.com/mailmagazine.html
 ※ページの下の方に登録フォームがあります。

【ショートショートガーデン】
生物シリーズの第6弾です。
とりあえずUPということで。

〔鹿の話〕
https://short-short.garden/S-uCTtfd



【小説でもどうぞ】
第12回課題「休暇」に、ギリギリでもう1作応募する。
ショートガーデンに回したボツアイデアがあったのだが、これにもうひとつアイデアを足すと素晴らしい作品になることに気が付いたので、慌てて原稿用紙5枚に仕上げる。
そんな経緯があるので、推敲が不足しています。
だけど、ストーリーとしては自分の中では満点に近いです。特に最後の1行は自分でも自画自賛の出来栄えです。
という作品は、ほぼ例外なく、落選するんですよね。
まあ、自分の趣味が強すぎるんでしょう、この手の作品につきましては。
第13回は第1作を推敲中。うーん、5行余っている。もう少し推敲して、最後の1行まで埋めたい気分。

【yomeba!】
第18回の入選作を順番に読みます。

山田ヒラリ『リカちゃんの娘』

これは叙述トリックとリドルストーリーの組み合わせです。
場面と時代がカチャカチャと変わり読みにくいのですが、生者と思わせて死者だった、そして死者が復讐のために生まれ変わろうとしている、という二人のどんでん返しがあり、最後に読者に「生まれ変わるべきか否か」を問いかけます。
ひんやりとした描写からは、生まれ変わりを選択したようです。
この生者と思わせて死者だったというパターンは多数書かれており、しかも名作もたんまりとあります。
もうちょっと、ストーリーラインをすっきりしたほうがショートショートらしいかな、という気がしました。
ただ、ショートショートを読み慣れていないひとには、インパクト大だと思います。


【星新一賞】
第9回星新一賞受賞作品を順番に読んでいます。

・ジュニア部門 優秀賞 『記憶』 髙向剛志
コンピューターと強制的に連動させられ、あらゆる記憶を想起できる世界。
青年は施設に忍び込みコンピューターを破壊しますが……というショートショートです。
うーん、前半が完全に60年代テイストのアニメですな。重大なシステムの警備がショボすぎる……。
まあ、それはそうと、コンピューターを壊したら言葉を忘れる意味が分かりません。母国語は記憶とは別システムですし、そもそも脳の中の記憶は残るはずなので。
うーん、微妙。


【坊っちゃん文学賞】
3作並行して推敲を重ねる。
1作、2作は短いのでほぼ完成だが、本命の3作目が長い。3800字ほどあるので、原稿用紙だと余白込みで12~13枚程度でしょうか。
ちょっと狙った作品なので、こちらは最後までゴリゴリ進めたい。


【その他モロモロ】
・宇宙文化創造コンテスト宇宙川柳にも応募してみたいなあ。8/31締切
・第9回朝礼川柳に応募しました。発表は10月10日です。
・第18回台所・お風呂の川柳に4つ応募しました。10月中旬発表です。
・健康(セルメ)川柳で3つ応募。今回は勉強しました。8月下旬発表です。

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【公募情報】ARUHIアワード2022(掌編・10/31〆) [公募情報]

国際短編祭に繋がる短編小説公募です。

〔主催者HP〕
https://bookshorts.jp/aruhi_award_2022

BookShortsとのコラボ企画ですが、今年のテーマは「新しい生活」「わたしの「家族」」です。
ARUHI(アルヒ株式会社)は一般的な知名度は低いですが、大手住宅ローン会社で、東証一部上場企業です。
住宅ローンの会社だけにテーマも住宅系で「新しい生活」「わたしの「家族」」となっています。
前者はコロナ禍がひと段落して、新しい生活様式になじんできたことが反映されているのかな、とも思います。
大賞を取ると、ショートフィルム化が検討されます。
制限文字数は5000字以内、応募締切は令和4年10月31日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:掌編
テーマ :新しい生活」「わたしの「家族」」
大  賞:30万円
制限文字数:5000字
応募締切:令和4年10月31日
応募方法:インターネット
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【書評】『ベスト本格ミステリTOP5 001』 [書評]

どれもこれも粒揃いです。


ベスト本格ミステリ TOP5  短編傑作選001 (講談社文庫)

ベスト本格ミステリ TOP5 短編傑作選001 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: 文庫



収録されているのは5編ですが、いずれも短編の楽しさを堪能できる良作ばかりです。
芦沢央『許されようとは、思いません』は、田舎に嫁に来た祖母の話です。苦しみと悲しみの上に祖父を殺害してしまうのですが、裁判のときに発した「許されようとは、思いません」の意味が最後に逆転して明かされます。自分はこの短編で芹沢央を知り、彼女の作品を貪るようにして読むようになりました。
下村敦史の『死は朝、羽ばたく』もショートショートテイストのある絶品で、最後に設定そのものがひっくりかえります。
いずれも登場する作家の本を読んでみたいと思える短編ばかりで、堪能しました。

短編ミステリが大好物の読者のために!
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【将棋ウォーズ】7月の対局結果 [将棋日誌(目標二段)]

10分 10局対戦して、7勝3敗の勝率0.700でした。(初段64.8%)
 3分 対局なし(初段53.3%)
10秒  6局対戦して、8勝13敗の勝率0.380でした。(初段55.5%)

〔将棋ウォーズ〕
https://shogiwars.heroz.jp/

いろいろあって、7月はあまり対局できず。
10分、3分、10秒で初段を達成したので、次は二段を目指したい。
けど、基本的に早指しは苦手で、特に不得意な10秒で二段を目指そうとする。
とはいえ、10秒は毎月負け越しているうえに、しかも月別成績を見ると勝率も悪化する一方だし、達成率も下がってばかりなので、なのでなんだかなあという部分もありますが。
とりあえず、いろいろと経験です。

「それでも歩は寄せてくる」のコラボイベント開催中
初段の早乙女うるしさんになんとか勝利して、アバターをゲットしました。
ありがとうございます。
30勝で角竜タケルもゲットできる。
頑張れば到達できるかな、どうだろう。
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第4期大成建設杯清麗戦第3局(加藤桃子精麗VS里見香奈女流四冠) [将棋]

里見女流四冠の2勝で迎えた第3局です。

〔中継サイト〕
http://live.shogi.or.jp/seirei/

清麗戦の特徴は、2敗失格システムとシードがほとんどないことにあります。ほぼ横一線のスタートです。
予選はダブルイリミネーショントーナメント方式を採用し、同一勝敗の女流棋士同士が対戦し、4名まで絞りこみます。
その4名で仕切り直しの本選トーナメントとなります。
実績がある女流棋士でも基本的に予選6勝+本選2勝が必要であり、この長丁場による波乱の起きやすさと同時に、2敗失格制度により実力者が勝ち上がりやすいシステムにもなっています。
どんなに強い女流棋士でも、負けることはあります。
トーナメントが長いほど強豪が思わぬ敗戦を喫する可能性が高まりますが、復活する可能性も高い。
そのバランスが清麗戦の魅力かなと思います。
この長いトーナメントを、里見女流四冠が勝ち上がったのは流石としかいいようがありません。
さあ実績、勢いもある里見女流四冠を相手に、加藤清麗はどのような将棋を見せるでしょうか!

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/seirei/kifu/4/seirei202208030101.html

ということで、将棋です。
本局は先手加藤清麗、後手里見女流四冠で始まりました。
里見女流四冠は得意戦法であるゴキゲン中飛車に構えますが、先手が伸ばした2筋の歩を無視して、飛車先の歩交換を受けません。いままでの常識に疑問を投げかけています。
加藤清麗は7分の少考で歩交換をしてポイントを稼ぎますが、その分、手数を要しているため穴熊を断念して左美濃に構えます。
お互いに主張のある展開だと思います。
先に仕掛けたのは加藤清麗です。ですが、後手から6五歩、5六歩と突かれると里見女流四冠の攻めが刺さっているように見えます。
加藤清麗は飛角交換の緊急手段でしのごうとしますが、優勢になった里見女流四冠は負けない将棋に徹していたと思います。
複雑な手順を選ばず、確実にリードを広げる手を続けます。
持ち時間も十分に残しています。
里見女流四冠は加藤清麗相手に108手まで横綱相撲で圧倒し、3連勝でわずか1年で清麗位の復帰を決めました。
これで女流タイトルの半数を超える5冠を達成です。

里見清麗おめでとうございます!
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【SS】齊藤想『友達の種』 [自作ショートショート]

Yomebaの第18回ショートショートコンテストに応募した作品です。
ありがたいことに、優秀作に選ばれました。
テーマは「ともだち」です。

【該当ページ】
https://yomeba-web.jp/ss/ss-offer/

―――――

 『友達の種』 齊藤 想

 千絵は誰も信じられなかった。心美には恋心を抱いていた先輩を奪われるし、理恵子は親友のふりをながら裏で千絵の陰口を叩いている。
 他の友達も、みんなダメ。千絵が悩んでいても、だれも助けてくれない。
 だから高校の帰り道に、近所の園芸店で「ともだちの種」を購入した。大事に育てると友達が実るという。
 園芸店の店主からは「育てるのが難しいですから、1つにしなさい」と言われたが、お小遣いをはたいて買えるだけ買った。
 渡された種は七色に輝き、あんずの種ほどの大きさがあった。千絵は部屋に大型の植木鉢を並べると、さっそく種を植えた。
 六畳間の窓際に、植木鉢が五個も並んだ様子は壮観だった。親から不思議そうな目で見られたが「綺麗な花が咲くの。最近はやっているんだから」とごまかした。
 千絵は種の取り扱い説明書を読んだ。園芸店の店主が心配したように、とにかく手間がかかる。太陽光は必要だが、直射日光は避けるべき。乾燥は厳禁で、表土は常時適切な湿り気を与えなくてはならない。さらに温度は温かくでも寒くてもダメ。
 なんと手間のかかる種なのか。千絵は植木鉢を藁で覆い、エアコンを常時オンにして、暇さえあれば霧吹きで湿り気を与えた。
 高校で授業を受けている間に、母親にエアコンを切られたときは烈火のごとく怒った。
 芽が出たのは一か月後だった。ほとほと疲れたので、芽が出ない四個は庭に捨てた。
 芽が出てくると楽しくなる。
 説明書には「愛情を注ぐほど成長する」と書いてある。千絵はひたすら芽に話しかけた。ときには一緒に音楽を楽しみ、ときには植木鉢を抱きしめながらネット映画を見たこともある。
 千絵は芽に夢を託した。友達ができたら一緒にしたいこと、遊びに行きたい場所を語り続けた。理想的な友達関係や性格など、千絵の気持ちを全て注ぎ込んだ。
 クラスメイトのことは無視した。たまに声をかけられても突っぱねた。いまさら何だというのよ。家に帰れば大切なともだちの芽がある。この芽さえあれば、偽物の友達は必要ない。
 両親からずいぶんと心配された。部屋に引きこもって、独り言をつぶやいていると思われているらしい。
 千絵は気にならなかった。もうすぐ本当の友達ができる。胸の高鳴りが、押さえきれない。
 芽は順調に成長し、茎の先にほおずきのような赤い実がついた。その実がゆっくりと成長し、人形がすっぽり入るほどの大きさになった。
 あともう少し。真の友達はいつ出てきてくれるのか。今日か明日か明後日か。
 しかし、いつまでたっても友達がでてくることはなかった。実の色は赤を通り越して赤黒くなり、ドロドロになって崩れ落ちた。
 千絵は泣いた。こんなに大事にしてきたのになぜ。
 やり直そう。
 千絵は庭にでて、捨てた種を探した。すると、ほおずきのような実が、四本並んで揺れていた。
 千絵の愛情がないのに育っている。
 庭で育ったともだちの実は、小柄だけど健康的で、千絵の目にはまぶしく映った。なにより、とても自然だった。
 千絵は気が付いた。
 栄養を与えすぎると、植物は根腐れを起こしてしまう。過剰な愛情は、ときに毒になるかもしれない。
 同じ人を好きなるのは仕方がないじゃない。友人の悪口を言いたくなるときもあるよ。
 それが普通の”ともだち”なのだから。

 千絵は日常を取り戻す努力した。
 学校でクラスメイトと話すようにして、笑顔を振りまいた。心美も理恵子も安心していた。心の病気だと思われていたらしい。
 いままでのわだかまりが消えたわけではないけど、飲み込むことが大人になることなのかもしれない。
 庭で実った四本のともだちは、仲よさそうに並んでいる。
 本当はあと一本並ぶはずだった。
 ゴメンね、と千絵は実たちに向かってつぶやいた。
 ゆるい風が吹いた。
 ともだちの芽が、千絵の言葉に頷くかのように、上下に揺れたように見えた。

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【SS】齊藤想『桃太郎』 [自作ショートショート]

小説でもどうぞ第9回に応募した作品です。
ありがたいことに佳作に選ばれました。
テーマは「冒険」です。

【該当ページ】
https://www.koubo.co.jp/reading/rensai/oubo/douzo/douzo09.html

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『桃太郎』 齊藤 想

 なぜ、このような劇になってしまったのだろうか。ヒカリ先生は、奇妙なお遊戯会を舞台の袖から観察しながら、ため息をついた。
 今年のテーマは桃太郎だった。3年前の衣装をそのまま使えるし、前任者が作ったシナリオもある。あとは配役を決めて何回か練習すれば、準備万端のはずだった。
 それが、まつ組のリーダー的存在だった雪菜ちゃんの一言から迷走が始まった。
「キジより七面鳥がいいと思います。だって、キジにはなじみがないし」
 純粋な日本人であるヒカリ先生としては、七面鳥の方がなじみがないと思うのだが。まさか、クリスマスのディナーではあるまいし。
「けど、これは昔話だから」
「だから何だと言うのですか。そのような因襲にこだわるべきではないと思います」
 いきなり園児らしからぬ難しい言葉をぶつけてくる。ちょっと、と思っていると、別の園児からつぎつぎと声が上がる。
「犬よりアルパカがいいと思います。だって、かわいいから」
「サルの役は、サルにそっくりな園長先生がいいと思います」
「桃太郎に攻め込まれる鬼たちがかわいそうです。ぼくは戦争反対です」
 ヒカリ先生は、頭が痛くなってきた。
「あなたたちは何を言っているのよ。桃太郎はキジと犬とサルを連れて、鬼退治にいくと決まっているの」
 ここでまた、雪菜ちゃんが手をあげてぶっこんでくる。
「ヒカリ先生は、もっと園児の自主性や個性を尊重すべきだと思います。ヒカリ先生は私たちの思いを踏み潰そうとしています」
 ぐぬぬ。こやつはろくな大人にならない。 それとも大物の片鱗を見せたというべきか。
 こうなると園児たちは止まらない。アイデアがどんどん飛び出してくる。ヒカリ先生がシナリオを書き直すたびに、劇は桃太郎から離れていく一方だった。

 そうして、いま舞台では、桃太郎とは思えないストーリーが展開している。
 辛うじて主人公は桃太郎だ。しかし、桃太郎が引き連れているのは、七面鳥とアルパカと、サルの恰好をした園長先生だ。
 ざわめく保護者席。これから何が始まるのか、という顔をしている。
「桃太郎さん、冒険たのしみですね」
 園長先生が中腰で桃太郎に話しかける。練習のたびに腰を痛めて大変そうだ。担任として申し訳なく思う。
 桃太郎は保護者席に向かって、こう高らかに宣言する。
「うむ、そうだな。これから冥界の世界に旅立ち、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんを連れてかえるぞ!」
 保護者席からの視線が痛い。いったい、これは何の劇なのかという保護者からの疑問がひしひしと伝わってくる。
 クラスで話し合っているうちに、鬼ヶ島に攻め込むのは平和的ではないという意見で一致した。かといってアマゾンを冒険するもおかしいとなり、なぜか唐突に「死んだお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに会いたい」と泣き出す園児があらわれ、そのあげくがこの奇妙な劇だ。
 冥界に旅立った桃太郎と七面鳥とアルパカと園長が、地底を支配する鬼たちと戦う。わあわあ言いながら、鬼たちがバタバタと倒れていく。
 ほどなくして鬼たちは桃太郎たちに屈服した。高らかに桃太郎たちが勝利を宣言する。
「よし、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんと連れて帰るぞ。いいな」
「すみませんでした~」
 鬼たちが平伏する。
 それと同時に、舞台の袖からぞくぞくと老人たちが現れた。保護者たちがあっけに取られている。
 老人たちの正体は、友情出演してくれた園児の祖父母たちだ。中には連れ合いの遺影を掲げている祖父母もいる。
 このアイデアが出たとき、園児たちよりむしろ祖父母たちがノリノリだった。孫と一緒に舞台に立つのが心から嬉しかったらしい。しかも両親には秘密にするという約束を全員が守ったので、保護者からすれば思わぬサプライズとなった。
 舞台では孫と祖父母が抱き合っている。
 主人公が桃太郎ということ以外、どこにも桃太郎的な要素はない。
 けど、たまにはこんなお遊戯会も良いのかな、と腰をさすっている園長先生を横目で見ながら、ヒカリ先生は思った。
「園長先生来年もよろしくね」とヒカリ先生は心の中で思った。

―――――

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