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創作状況【6月上旬】 [ぼくの公募状況]

ときおり、懐かしい曲を聴きたくなります。

【第177回のメュー】
◆公募分析 第18回坊っちゃん文学賞
◆小説でもどうぞ!に挑戦中(第7回)
◆おまけのもう1作
◆公募情報数点

 来月のテーマは坊ちゃん文学賞の傾向と対策です。
 次回発行は7月5日です。メルマガは無料なので、ドンドン登録してください!
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 ※ページの下の方に登録フォームがあります。

【ショートショートガーデン】
昔話シリーズの第7弾です。これで昔話シリーズはひと段落ということで。たぶん。
〔桃太郎〕
https://short-short.garden/S-uCTsJS


【小説でもどうぞ】
第11回のテーマは「別れ」。
三題噺ででてきたのは「学校 ハエ 望遠鏡」という超難物な組み合わせ。いろいろなパターンを当てはめて、なんとか完成させたものの、ちょっとこれは酷い。
もう1作考えます。はい。

[あらすじの森]
https://mori.arasuji.com/


【yomeba!】
第18回「ともだち」でとりあえず優秀作品に選ばれました。ありがたいこです。
ここから入選するかどうかは、神のみぞ知るということで。
第19回のテーマは「ゲーム」ですね。久しぶりに以前使っていた技法を復活させてみようと思ったのだが、これまた、何にも思いつかない。
使わないと錆びるものですね、はい。
ということで三題噺に頼る。「閻魔大王 キツネ スタンガン」ですか。ふむふむ。

【星新一賞】
第9回星新一賞受賞作品を順番に読んでいます。

・アマダ賞 『味覚転送システムの未来について』 Mouki
これは面白い技法ですね。
小説では説明過多は禁忌です。なので設定が複雑なSFではどうやって状況説明をするのか難儀するわけですが、本作では「プレゼンテーション」という形式をとることによって、この説明過多の問題をクリアーしています。
なるほど、と思いました。
ストーリーとしては、デジタル的に味覚を再現できるシステムについてです。オチは予想通りですが、プレゼンの語り口調が秀逸で、楽しんで読むことができました。
工夫に満ち溢れた作品だと思います。


【坊っちゃん文学賞】
前回受賞作を熟読し、傾向は把握しました。
ただ……自分の作風からは少し外れているので、なかなか難しい。
いまのところ、3つ応募する予定ですが、2つは少しでも坊ちゃん文学賞の傾向に近い作品を選び、残り1つは自分の趣味のど真ん中で行く予定です。
あとは地道に推敲を続けます。応募締切は9月30日、と書かないと忘れそう(笑)


【その他モロモロ】
・第18回台所・お風呂の川柳に4つ応募しました。10月中旬発表です。
・健康(セルメ)川柳で3つ応募。今回は勉強しました。8月下旬発表です。
・児童文学の雑誌を読む。やっぱり特定の政党臭が強いなあ。うーん。

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第81期順位戦展望【A級~B級1組・開幕前】 [将棋]

いよいよ順位戦が開幕します。

[A級]
https://www.shogi.or.jp/match/junni/2022/81a/index.html

とにかく注目は藤井竜王です。名人挑戦を決めて、そのまま奪取すれば史上最年少名人の記録達成です。
このチャンスは1回しかありません。
ポイントは、藤井竜王との対戦成績が互角の稲葉八段と、直近で3連敗中の永瀬王座との対戦だと思います。ここを乗り切れば、挑戦が見えてきます。
残留争いは混戦です。レーティング的には最年長の佐藤康九段が厳しいですが、どんな相手でもある程度は勝てるのが会長です。
だれが落ちてもおかしくありません。序盤が大事かと思います。

[B級1組]
https://www.shogi.or.jp/match/junni/2022/81b1/index.html

羽生世代が3人もいます。A級には佐藤会長が在籍中です。
みんな50を超えているわけですから、移り変わりの激しい現代将棋においていまだにこの位置をキープしているのは驚異的です。
とはいえ、常識的には昇級争いは若手中心になると思います。千田翔太七段、佐々木勇気七段、近藤誠也七段あたりかと思いますが、メンバー的に羽生世代にもチャンスはありそうです。事前予測はかなり難しいです。B級2組から復帰したばかりの丸山九段は最下位からのスタートですが、高勝率を維持しているので、混戦になればチャンスはあると思います。
なにせ昇級2名と降級3名と、13人中5人が入れ替わるクラスです。維持するだけでも大変なことだと思います。
残留争いですが、人数が多いので混戦になるほど順位が物をいいそうです。
前期は首の皮一枚でつながった久保利明九段ですが、振り飛車党の総帥として、今期は奮起を期待したいと思います。
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【公募情報】第9回縄文川柳全国大会(川柳・7/22〆) [公募情報]

縄文時代+川柳という異色のコラボです。

〔主催者HP〕
https://www.city.tokamachi.lg.jp/material/files/group/33/no9jomonsenryuzenkokutaikaibosyutirashi.pdf

後援者は新潟県十日町市教育員会等です。
なぜ十日町市かというと、ここで縄文土器の代表かつ国宝である火焔型土器が発掘されたからです。
だれもが一度は目にしたことのある土器かと思います。
主催者HPには「縄文時代に思いを馳せながら」とありますが、前回の受賞作品を見ると「テレワーク」がでてきたり、無理して縄文時代と関連付けることはなさそうです。
本公募には一般部門とジュニア部門があります。
応募締切は令和4年7月22日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:川柳
テーマ :ひらく
賞   :不明
応募締切:令和4年7月22日
応募方法:郵送
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第33期女流王位戦第4局(里見香奈女流王位VS西山朋佳女流二冠) [将棋]

里見香奈女流王位の2勝1敗で迎えた第4局です。

〔中継サイト〕
http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/

棋王戦予選で里見香奈女流四冠が快進撃を続けています。
浦野真彦八段、澤田真吾七段、池永五段、富田四段を撃破して予選決勝まで勝ち上がり、さらに古森悠太五段を撃破して女流棋士初の決勝トーナメント進出を決めました。
澤田七段は、現在B級1組(対局時はB級2組)で、王位戦リーグに入って最終的には陥落したものの白組優勝直前まで行きました。
池永天志五段はC級2組ですが、王位戦リーグで紅組優勝という感じで、若手バリバリを破っての決勝トーナメント進出なので価値が高いです。
また、この勝利でプロ入り編入試験の権利を得ました。
現時点では態度を表明せず、いまのところ否定的な雰囲気ですが、編入試験に挑戦となると大きな話題となりそうです。
のりにのっている里見女流四冠ですが、第4局で防衛を決めることはできるでしょうか!

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/kifu/33/joryu-oui202206070101.html

ということで、将棋です。
先手の里見女流四冠は、いつもの中飛車ですが、居玉のまま二枚銀を前線に繰り出します。
積極的な自由奔放といいますか、とにかく玉が薄いので指しこなすのが大変です。
対する後手西山白玲は相振り飛車から手堅く高美濃に構えます。
先に仕掛けたのは西山白玲でした。
互角の戦いになれば囲いの差を主張できそうです。
交換した角を盤上に放ち、金銀交換と局面を動かしますが、戦果としてはいまひとつ。
里見女流王位に香車を拾われてどうどうとやってこいと言われてみると、思ったより手がなかったようです。
むしろ、この薄い局面でバランスを取る里見女流王位の指しまわしが光ります。
後手の攻撃に乗じて駒得を重ねると、最後の決め手は端攻めです。
金銀で守りを固めた逆側から一気に攻め、そのまま即詰みに打ち取り、89手まで里見女流王位のまさにイナズマ一閃の勝利です。
これで3勝1敗となり、最強の挑戦者相手に女流王位4連覇、通算8期目の獲得となりました。

里見女流王位おめでとうございます!
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最近の日常【令和4年6月上旬】 [日常]

〔皮膚科に行った話〕
太ももにできものができて、徐々に大きくなってきた。
しかも一時期触れただけで痛くなり、痛みは2~3日で収まったけど心配になって皮膚科に行く。
もしかして皮膚がんではないかと、いろいろ心配になりまして。
病院行き、診断してもらった結果は皮膚繊維種でした。
整形外科で摘出手術も可能ですが、医者の話だと「数十年後に自然に消滅する可能性があります」とのこと。
「数十年後?」と思わず聞き返すと「人生長いですから」との返事。
まあねえ、それはそうですが。

〔なんでもスマホの話〕
だいぶ昔の話です。
雑誌のおまけにスゴロクがついていて、子供たちがやたらとせがんだことがあった。
でもサイコロがないなあと思ってインターネットで検索すると、すぐにでてきた。
ボタン一つでサイコロを回せるし、数も何個でも増やせるので本当に便利です。
なにより無くさない(笑)
いまやスゴロクもスマホ片手の時代で、昔、複雑なボードゲームをするために二十面体のサイコロを使っていた時代とは雲泥の差です。
こうして、人間は徐々にスマホ依存症になるんだろうなあと思いつつ。
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【将棋ウォーズ】5月の対局結果 [将棋日誌(目標二段)]

10分 22局対戦して、15勝 7敗の勝率0.681でした。
 3分 54局対戦して、32勝22敗の勝率0.592でした。

〔将棋ウォーズ〕
https://shogiwars.heroz.jp/

ずっと無課金で遊んでいたのが申し訳なくなってきて、課金することにした。
月500円で指し放題は普通に安い。
ということで、苦手な3分に取り組むことにする。将棋は荒くなりますが、経験値を積むには良いかなと思いまして。

初めて四段に勝つ。
しかも受け将棋の自分には珍しく序盤から一方的に攻めて、最後には相手のうっかりがあっての勝利。
あれ?と思って相手情報を確認すると、達成率が極端に低く、たぶん棋神か何かで四段になったプレイヤなのかもしれない。
過去対戦をみても、勝っているのは1級~初段ぐらいだし。
ということで、よろこび半減。

5連勝するとアバターがもらえるイベントがあった。
てっきり10分、3分、10秒で別々にカウントされると思っていたら、ひっくるめて5連勝に達すると良かったらしい。
10分で2連勝して、3分で運よく3連勝して、これで5連勝達成です。
ありがたや。

10分で5連勝しなければならないと思っていたときの話。
4連勝して5戦目にチャレンジしたところ序盤のミスから敗勢となる。
最終盤で相手が急ぎすぎたのに乗じてひっくりかえして勝勢になったと思いきや、手拍子で逃げ間違えての頓死。
そのときは、上手く詰まされたと思っていたのだが、将棋ソフトに正解手を指摘されて唖然としました。
これもまた勉強ですね。

3分の後手番でまったく勝てません。勝率も4割を切っています。
相手が居飛車のときは誘導しやすい菜々河流で決め打ちしてますが、なかなか指しこなすのが難しいです。
自分流にいろいろ試しながら、とりあえず練習ですね。
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【書評】湊かなえ『往復書簡』 [書評]

書簡形式の短編ミステリ3作です。


往復書簡 (幻冬舎文庫)

往復書簡 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/08/02
  • メディア: 文庫



メインは映画化された『十五年後の補習』です。
恋人が海外青年協力隊に応募し、そこが一度停電したらなかなか復旧しないど田舎だったため、連絡は手紙に頼らざるをえなくなります。
ということで、書簡形式でストーリーが進みます。
恋人同士の他愛にのない話から、徐々に過去の記憶がよみがえっていきます。
そこからはサービス精神満点の、どんでん返しにどんでん返しです。
ひっくり返しすぎて、何が本当で何が嘘なのかわからなくなってきましたが、なるほどなあ、という感じです。
『十年後の卒業文集』のラストも印象に残りました。
書簡形式好きにはたまらない一品だと思います。

書簡形式のミステリを読みたいひとのために!
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第93期ヒューリック杯棋聖戦第1局(藤井棋聖VS永瀬拓矢王座) [将棋]

藤井棋聖と永瀬王座のタイトル戦は初になります。

〔中継サイト〕
http://live.shogi.or.jp/kisei/

永瀬王座のタイトル戦は9回目です。
対戦相手としては、羽生善治、斎藤慎太郎、高見泰地、久保利明、木村一基、豊島将之が各1回、渡辺明2回になります。
こうしてみるとバラエティに富んでいますが、もちろん年下とのタイトル戦は初めてになります。
藤井棋聖とは長らくVSの相手として研鑽を重ね、公式戦でも何度も対戦しています。しかし、さすがに藤井五冠相手には分が悪いようで、公式戦では負け越し、VSでも負け越しているようです。
しかし、なんといってもタイトル戦は別舞台です。
挑戦権を獲得した直後のインタビューで「藤井棋聖の強さは知っている」と発言しています。
永瀬王座はいままでやられてきた借りを返して、初の棋聖位獲得はなるでしょうか!

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/kisei/kifu/93/kisei202206030103.html

ということで、将棋です。
先手番は藤井棋聖で相掛へと進みますが、なんと中盤で千日手となります。藤井棋聖は先手番を失うわけですから、作戦失敗です。非常に珍しいことです。
さて先手番を得た永瀬王座ですが、角換わりへと進み、今度は序盤で千日手となります。
永瀬王座といえば、豊島竜王(当時)との叡王戦7番勝負(当時)で、1千日手に2持将棋になったことがあります。
今回はいきなりの連続千日手です。
また先手は藤井棋聖に戻ってきました。
再び角換わりとなりますが、後手永瀬王座の手が止まりません。
持ち時間が少ないということを割り引いても、ほとんど考慮時間を使っていないので、おそらく研究のレールに乗っているだと思われます。
対する藤井棋聖は永瀬王座より持ち時間が少ないのに、こまめに時間を消費して厳しい情勢に追い込まれます。
おそらく研究から外れたのは90手目あたり。そこから貯めた時間を消費して、逆転されないように読みを入れ、104手目に強く攻め合って勝ちにいきます。ここで14分も投入できたのが大きかったです。
その後も1分単位でこまめに時間を使い、114手まで鋭く寄せ切って、永瀬王座が後手番で大きな白星をもぎ取りました。
完璧なタイムマネジメントで、藤井棋聖のタイトル戦連勝記録を13で止めました。

棋聖戦第2局は6月15日(水)に新潟県新潟市「高志の宿 高島屋」で行われます!

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【SS】齊藤想『古絵』 [自作ショートショート]

Yomebaの第17回ショートショートコンテストに応募した作品です。
ありがたいことに、優秀作に選ばれました。
テーマは「絵」です。

―――――

『古絵』 齊藤想

 日本人はカモだ、とナポリの画商であるガリバルディは思っていた。ルネサンス時代の名前の知られた作家なら、馬鹿みたいな値段で買っていく。
 日本人は古ければ古いほど価値があると信じている。東洋は木の文化なので遺物は残りにくい。欧州は石の文化なので千年たっても健在だ。その差なのかもしれないとガリバルディは考えたこともあるが、文化比較論を深く掘り下げるつもりはない。
 今日もいかにも旅行者風の日本人老夫婦が、お土産になりそうな油絵を物色していた。
 しかし、老夫婦は普通の日本人旅行者と異なっていた。虫眼鏡を使って額縁を丁寧に眺めて、裏側まで確かめている。作者名もネットで検索しているようだ。
 贈答用にするつもりだろうか。素人鑑定が完了したのか、老紳士はガリバルディにたどたどしい英語で声をかけてきた。
「これは、ルネサンス時代の油絵ですかね」
 これはもう釣り針にかかった魚だ。ガリバルティはお客に合わせて、分かりやすい英語で返答する。
「さすがはお目が高い。その通りでございます。当社は本物しかおいていませんので、ご安心ください」
 確かに本物だ。だが、作品内容としてはクズだ。ルネサンス時代に工房で大量生産されたオリジナリティの欠片もない劣化コピーに過ぎない。破産した貴族の倉庫に眠っていたゴミを、それらしい説明文を付けて並べているだけだ。
 老紳士は、年代鑑定はできても美術的価値は理解できないようだ。まさに、典型的日本人。絵ではなく装幀ばかり気にするところからしても、間違いない。
 お客の様子を見て、ガリバルデイはふっかけることにした。
「五百年前の絵なので、ここでしか手に入らない希少品です。作者が有名ではないためお手ごろな価格で取引されていますが、再評価されたら美術館に収納されてもおかしくない出来栄えです。モチーフはこの時代に多く描かれたキリストの生誕ですが、この落ち着いた色彩といい、聖母マリアの慈愛に満ちた表情といい、贈答品にぴったりです」
 立て板に水。何度も使い古したフレーズ。老紳士は老婦人とスマホを見せあいながら相談している。
 どうやら結論が出たようだ。
 老紳士はスマホの画面を操作しながら、ガリバルティに質問してきた。
「この作者は実在しているのですか? 検索してもでてきません」
 名前を気にする日本人は多い。この程度では、ガリバルティは慌てない。
「それが良いのです。少しでも名の知られた作家は、それなりのお値段がします。日本では無名ですが、実はイタリアでは再評価されつある作者です。それに、無名でも良い絵はたくさんあります。この絵など、まさに、そうした絵の代表です」
 もちろん嘘八百だ。だが、老夫婦はいかにも感銘を受けたような顔をしている。
「良いことを言いますね。私も同感です。これから埋もれた絵画を再評価していきたいと思っています。ところで同じ時代の絵はたくさんありますか」
 こいつはカモ中のカモだ。これを気に古いクズ絵を売りつけてしまえ。同業者に声をかけてもよいかもしれない。これほどの上玉はなかなか現れないだろう。
「もちろんご用意させていただきます。ちなみに、ルネサンス期の絵となるとかなりの数になりますが、お客様のご予算の方はいかがですか?」
「そこは心配には及ばぬ。ところで、絵を見ているとところどころ痛んでいる箇所があります。補修が必要なので、ルネサンス期の技術を道具や絵の具をお譲りいただける工房を紹介して欲しいのですか?」
「もちろんですとも」
 こんなにボロ儲けできる商売はない。ガリバルティは笑いが止まらなかった。
 日本人が帰った後、ガリバルディは倉庫に眠っている絵画に見とれた。中には世に知られていない有名画家の作品も眠っている。こうした絵は、世間に出ることはなく、本物を知る上流階級の部屋を渡り歩く。
 この絵を成金の日本人に売るのはもったいない。本物を見抜く鑑定眼こそ、画商の魂なのだ。
 ガリバルディは、大切な絵を売るべき上流階級の名前を思い浮かべた。

 老夫婦は、自宅に届いたゴミを満足そうに眺めた。
 手にした絵画に美術的価値がないことは老紳士も理解している。必要なのはルネサンス期のキャンバスであり、装幀だ。ここに新しい命を吹き込むのだ。
 老紳士はキャンバスから油絵具を丁寧にはぎ取ると、画商から紹介を受けた補修工房で手にいれた当時の道具と絵の具を使って絵を描き始めた。
 この絵をあの愚かな画商に見せれば、喜んで買うだろう。ある貴族の倉庫からミケランジェロが発見されたとかささやけば、一発だ。
 こんなにボロ儲けできる商売はない。老夫婦は笑いが止まらなかった。

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【SS】齊藤想『味のある写真』 [自作ショートショート]

小説でもどうぞ第7回に応募した作品です。
ありがたいことに、佳作に選ばれました。
テーマは「写真」です。

―――――

『味のある写真』 齊藤想

 私の師匠は「味のある写真を撮る」と言われている。実際に師匠の写真を舐めると、様々な味がするのだ。
 若い男女の恋愛を切り取った写真は、ほのかに甘酸っぱいラズベリーの味が広がる。人生を味わいつくした老女をモノクロで映した写真は、キリマンジャロ産コーヒーのような深い苦みが走る。
 インクや紙質の問題かとも思ったが、師匠の写真データをもらい、自宅で印刷しても同じ味がする。
 「味のある写真」というものは、材質に関わりなく、視覚を通じて味蕾を刺激してくるものらしい。
 私が師匠に弟子入りしたのは、ほとんど押しかけ女房のようなものだ。昔から写真が好きだったが、大学三年生を迎えて将来のことを考え始めたとき、キャンパスの近くに高名な写真家が住んでいることを知った。
 突然現れた私に、師匠は胡散臭そうな目を向けた。私の自信作を差し出すと、それを師匠は何も言わずに舐めた。瞬時に顔をしかめると、唾を吐いた。
「これは酷い。何の味もない。君はセンスがないから諦めなさい」
 散々な言われようだった。実は写真に薄く砂糖水を塗っておいたのだが、そんなまやかしは師匠に通じなかった。
「お願いです。次はもっと良い写真を持ってきますから」
 師匠は「ふん」といって家に戻ってしまった。少なくとも拒否はされていない。つまり次も写真を舐めてくれるはず。
 こうして、私は師匠の弟子を自認するようになった。
 私が目指したのは、若さ溢れる、澄み切った青空のような写真だ。写真界に新しい風を巻き起こしたかった。
 私は、師匠の写真を徹底的に分析することから始めた。
 師匠はこの道五十年のベテランだ。写真の数も種類も唸るほどある。雑誌の専属カメラマンとして活躍したこともあれば、新聞記者として事件を追ったこともある。ベテランになってからは、様々なジャンルの写真集を毎年のように出版している。
 私は師匠の写真をふやけるほど舐め、その中でこれだという味を見つけた。
 鼻腔から頭頂部まで突き抜けるミントの香り。体中を吹き抜ける春の風。
 これぞ、私が求めてきた写真だ。
 私は師匠の写真とよく似た風景を探してきて、撮影を続けた。家でプリントして、ひたすら舐めた。
 しかし、味がない。インクと紙の匂いしかない。師匠の写真は、コピーですら強烈なミントの香りがするのに。
 私にはもう無理なのか。
 ある雨の日、師匠に悩みを打ち明けるために自宅を訪れた。師匠は白髪を揺らしながらゆっくりと話を聞いていると、急に写真を見せてみろと言い出した。
 私は、おそるおそる、風景写真を差し出した。師匠の作品を真似した写真だ。
 師匠は鼻をひくつかせると「ドブの匂いがする」とひとことだけ口にした。
 無味無臭だった写真に、少しだけ匂いがでてきたのかもしれない。ガンバレヨ、と言われた気がした。
 私はさらに写真に励んだ。すると、あるときから少しだけ味がでてくるようになった。
 それは酸味だった。ミントからはほど遠いが、私からしたら希望の味だった。
 さらに題材を求めて、私はいろいろな写真を撮影した。風景と人物だけでなく、都市やオブジェにも挑戦した。
 別の味がするかと思ったが、不思議なことにすべて酸味だった。しかもその酸味は徐々に強くなっている。しかも、レモンのような柑橘系の爽やかな酸味ではなく、酢酸のような工業的な酸味だ。
 もしかしたら、新たな写真の才能が目覚めたのかもしれない。
 私は思い切って、とくに酸味の強い一枚を師匠に見せた。その写真はコラージュで、アマゾンの密林の中でアイススケートを踊っている男女を配置し、さらに空にはUFOが漂っている。
 師匠は舌先を少しつけると、眉をひそめた。
「これは酷い失敗作だ。舐めるに堪えん」
「しかし、この強烈な酸味を味わってください。私にも味がある写真が撮れるようになったのです」
「バカなことを言うな。こんな写真を味のある写真とは言わぬ。失敗作ではないか」
「酸味も味のひとつです」
「まだ分からぬか」
 師匠は一喝した。
「これは、味も見た目も、正真正銘のすっぱい作だ!」

―――――

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