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【書評】田辺太一『幕末外交談』 [書評]

幕末に外交の最前線で活躍した著者の回顧録です。


幕末外交談〈第2〉 (1966年) (東洋文庫〈72〉)

幕末外交談〈第2〉 (1966年) (東洋文庫〈72〉)

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2020/02/16
  • メディア: 文庫




幕末外交談〈第1〉 (1966年) (東洋文庫〈69〉)

幕末外交談〈第1〉 (1966年) (東洋文庫〈69〉)

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2020/02/16
  • メディア: 文庫



形は回顧録ですが、その内容は幕末外交史です。
ペリーの来航から始まり、大政奉還で筆をおきます。
内部から見た当時の幕府首脳の評価は興味深いです。
著者が開国派だったこともり、阿部正弘、安藤信正、小笠原長行、水野忠精の評価が高いです。
特に阿部正弘は決断力に欠けていたことを除き絶賛です。ちなみに幕末に小笠原諸島に一時期外国人が住み着きますが、水野忠精が決断して外国人から買い戻すことで決着しています。彼がいなければ、小笠原諸島は外国領になっていたかもしれません。
さて、幕末の外交ですが、幕府首脳は時勢を理解し「開国やむなし」の方向性でした。
ところが勢力の衰えた幕府は、陋習に閉じ込められた朝意を奉じて鎖攘をはかり、右往左往するだけでした。
それが時代を下るにつれて、酷くなっていきます。
当時の朝廷の不見識、不勉強は本当に酷いです。
それなのに、なぜこれほどまで尊皇が広まったのか謎ですが、どうも幕府が進めた儒学の結果だそうです。
今から見たら吹飯ものの政策が多いですが、苦労した結果というのが見えてきました。
後付の知識で批判するのは簡単なことですが、当時のひとたちだって苦渋の決断の連続だったことを知ることは大事だと思います。

幕末の外交をより知りたいひとのために!
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