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【書評】大川慎太郎『証言 羽生世代』 [書評]

将棋界の伝説ともいえる羽生世代を、16人の棋士へのインタビューで描き出します。


証言 羽生世代 (講談社現代新書)

証言 羽生世代 (講談社現代新書)

  • 作者: 大川 慎太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/12/16
  • メディア: 新書



羽生世代はまさに奇跡です。
同学年に二人の永世名人を産み出し、タイトル獲得13期で永世棋聖の佐藤康光、タイトル6期の郷田真隆、竜王3期の藤井猛、名人経験者の丸山忠久と、タイトル獲得だけでも大変なのに、同世代+1年上でこれだけの実績を残しました。
インタビューの相手は多種多彩で、それぞれの人柄がにじみ出ています。
ユーモアあふれるマンモスこと豊川孝弘(羽生と奨励会同期)、大人としてのやさしさにあふれている飯塚祐紀(同左)、どこか達観している森下卓、早々に諦観している島朗、理論的な渡辺明、王道を行く決意あふれる郷田真隆。
著者は棋士たちに「なぜ羽生世代に強い棋士がそろったのか」と聞いています。
子どもが多かった、娯楽も限られていた、などの時代背景もありますが、谷川浩司の登場で世間一般の将棋界に対するイメージが変わったのが大きいのかなと思います。
親として、子どもを将棋界に送り込む下地ができました。
そして、だれもが言及するのが羽生善治の影響です。
羽生世代の少し上の55年組から、将棋は技術という考え方がでてきて、羽生世代が将棋を「盤上のみの勝負」として序盤研究が本格的になります。
まだ定跡が整備されていなく、AIもない時代。
羽生世代たちは、自分の頭でひたすら考え、ひとつづつ道を整備していきます。羽生が技術を全て公開したことで仲間たちを引き上げ、逆にいえば羽生の近くに引き上げられるだけの才能のを持った若者たちがそろっていました。
ひたすら自分の頭で考え続けたことが、棋士としての血となり肉となり、将棋界を席巻していきます。
羽生世代に対する思いはいろいろかと思いますが豊川孝弘の「とにかく感謝、感謝」という言葉に全て表されているような気がします。

羽生世代のことをいろいろ知りたいひとために!
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