【SS】齊藤想『ショートショート部』 [自作ショートショート]
第24回小説でもどうぞに応募した作品その1です。
テーマは「偶然」です。
―――――
『ショートショート部』 齊藤 想
本日はショートショート部の定例会だ。
顧問を目の前にして、部長が高らかに開会を宣言する。
「いまから、偉大なる星沢文学部教授直伝のショートショート特訓を行う。これは偶然を利用した組み合わせ法の一種で、本を開き、最初に目に入った名詞をテーマにして即興でショートショートを作るものである。
しかし、テーマとして決めた名詞を使ってはいけない。それがこの訓練法のミソであり、難しいところである。では、田中君。始めるように」
はい、と一年生が本を開く。
「車です」
うむ、と部長が答える。テーマが決まったら、五秒以内に始めなくてはならない。五秒を示すベルが鳴る。
一年生が、緊張した面持ちで口を開く。
「彼はバイトでお金を貯めると、それを中古で購入しました。それの助手席に彼女を乗せてドライブにでかけ……」
「いかーん」
部長はハリセンで机を何度も叩いた。
「車を”それ”に置き換えているだけではないか。文学界の重鎮である星沢教授の面前で恥ずかしくはないのか」
うなだれる一年生を前にして、副部長が合いの手を入れる。
「ここはバシッと、部長が手本を見せてくださいよ」
副部長の言葉に、部長は「うむ」とうなずくと、無造作に本を開いた。
「テーマは道化だ」
五秒を待たずに、部長が語り始める。
「そのピエロは玉乗りが上手だった。ピエロのドウケは……」
「ちょっと待ってください」
一年生の田中が手を上げる。
「道化とピエロは同じではありませんか。おまけにピエロの名前がドウケだなんて」
「道化だけに、ドウケしたのか?」
「ここはダジャレ部ではありません」
「これから面白くなるところだったのに、無念じゃ。次は副部長。やってみろ」
「任せてください」
副部長が余裕の表情で手元にある本を開いた。しかし、急に顔色が変わると、部員たちをにらみつけた。
「誰ですか。僕の愛読書『かいけつゾロリ』の中身を『平家物語』にすり替えたのは」
「ガハハハ」と部長が高笑いをする。
「お前がおならネタばかり作るから、刺激を与えてやったのだ。何しろ今日は星沢教授がご臨席する名誉ある日だからな。ごたくはいいから、早くテーマを発表せい」
部長の催促に、副部長は仕方なく答える。
「諸行無常です」
「よし、五秒だ。5、4、3……始めろ」
副部長が、冷汗を流しながら口を開く。
「ギオンとショージャは金がない。ショギョウは夢精の嘆きあり」
「なんだ、それは」
「思い付きにもほどがあります」
副部長は苦しそうに答える。
「こ、これはショートショート部秘伝の連句ショートショートである。次は田中、テーマは車で続けろ」
「なんですか突然。命令とあれば、続けますが。三人は金を稼ぐために、キッチンカーを始めました。レモネードを売るのです。次は部長、お願いします」
「うむ、テーマは道化だな。3人のレモネードは全く売れない。ドウケしたのかな?」
「そのダジャレは先ほど使いました」
「最近の一年生は厳しいのう。こうなったら、最後のオチは顧問にお願いするしかなかろう。星沢教授、お願いします」
星沢教授はため息をついた。
「なぜなら三人は体調が悪い上に、場所が南米だったからだ。ひとえに、風邪の前のチリに同じ」
三人が一斉に拍手をした。
「さすがは教授」
「本当に教授のオチは最高ですよ!」
「うぬ。亀の甲より年の功。きっちりと平家物語で締めるとことは、さすがは文学界に名前が轟く星沢教授である」
「お前たち、いい加減にしろ!」
教授は部員たちを一喝した。
「この程度のよいしょで単位をくれと言われても、絶対にやらんぞ。部長は四年生だが、卒業論文はどうなったのか」
三人は相談を始めた。
「そういえば、教授の娘は高校生で、たいそうな美人と聞きました。こんど、学園祭の舞台で主役を務めるとか」
教授も娘には弱い。教授のほほが緩む。その様子を見た部長がほくそ笑む。
日本を代表する大企業には、ヨイショ部の部員が多数紛れ込んでいるという。
―――――
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テーマは「偶然」です。
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『ショートショート部』 齊藤 想
本日はショートショート部の定例会だ。
顧問を目の前にして、部長が高らかに開会を宣言する。
「いまから、偉大なる星沢文学部教授直伝のショートショート特訓を行う。これは偶然を利用した組み合わせ法の一種で、本を開き、最初に目に入った名詞をテーマにして即興でショートショートを作るものである。
しかし、テーマとして決めた名詞を使ってはいけない。それがこの訓練法のミソであり、難しいところである。では、田中君。始めるように」
はい、と一年生が本を開く。
「車です」
うむ、と部長が答える。テーマが決まったら、五秒以内に始めなくてはならない。五秒を示すベルが鳴る。
一年生が、緊張した面持ちで口を開く。
「彼はバイトでお金を貯めると、それを中古で購入しました。それの助手席に彼女を乗せてドライブにでかけ……」
「いかーん」
部長はハリセンで机を何度も叩いた。
「車を”それ”に置き換えているだけではないか。文学界の重鎮である星沢教授の面前で恥ずかしくはないのか」
うなだれる一年生を前にして、副部長が合いの手を入れる。
「ここはバシッと、部長が手本を見せてくださいよ」
副部長の言葉に、部長は「うむ」とうなずくと、無造作に本を開いた。
「テーマは道化だ」
五秒を待たずに、部長が語り始める。
「そのピエロは玉乗りが上手だった。ピエロのドウケは……」
「ちょっと待ってください」
一年生の田中が手を上げる。
「道化とピエロは同じではありませんか。おまけにピエロの名前がドウケだなんて」
「道化だけに、ドウケしたのか?」
「ここはダジャレ部ではありません」
「これから面白くなるところだったのに、無念じゃ。次は副部長。やってみろ」
「任せてください」
副部長が余裕の表情で手元にある本を開いた。しかし、急に顔色が変わると、部員たちをにらみつけた。
「誰ですか。僕の愛読書『かいけつゾロリ』の中身を『平家物語』にすり替えたのは」
「ガハハハ」と部長が高笑いをする。
「お前がおならネタばかり作るから、刺激を与えてやったのだ。何しろ今日は星沢教授がご臨席する名誉ある日だからな。ごたくはいいから、早くテーマを発表せい」
部長の催促に、副部長は仕方なく答える。
「諸行無常です」
「よし、五秒だ。5、4、3……始めろ」
副部長が、冷汗を流しながら口を開く。
「ギオンとショージャは金がない。ショギョウは夢精の嘆きあり」
「なんだ、それは」
「思い付きにもほどがあります」
副部長は苦しそうに答える。
「こ、これはショートショート部秘伝の連句ショートショートである。次は田中、テーマは車で続けろ」
「なんですか突然。命令とあれば、続けますが。三人は金を稼ぐために、キッチンカーを始めました。レモネードを売るのです。次は部長、お願いします」
「うむ、テーマは道化だな。3人のレモネードは全く売れない。ドウケしたのかな?」
「そのダジャレは先ほど使いました」
「最近の一年生は厳しいのう。こうなったら、最後のオチは顧問にお願いするしかなかろう。星沢教授、お願いします」
星沢教授はため息をついた。
「なぜなら三人は体調が悪い上に、場所が南米だったからだ。ひとえに、風邪の前のチリに同じ」
三人が一斉に拍手をした。
「さすがは教授」
「本当に教授のオチは最高ですよ!」
「うぬ。亀の甲より年の功。きっちりと平家物語で締めるとことは、さすがは文学界に名前が轟く星沢教授である」
「お前たち、いい加減にしろ!」
教授は部員たちを一喝した。
「この程度のよいしょで単位をくれと言われても、絶対にやらんぞ。部長は四年生だが、卒業論文はどうなったのか」
三人は相談を始めた。
「そういえば、教授の娘は高校生で、たいそうな美人と聞きました。こんど、学園祭の舞台で主役を務めるとか」
教授も娘には弱い。教授のほほが緩む。その様子を見た部長がほくそ笑む。
日本を代表する大企業には、ヨイショ部の部員が多数紛れ込んでいるという。
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第54期将棋新人王戦第1局(藤本渚四段VS上野裕寿四段) [将棋]
上野新四段が棋戦初優勝を目指します。
〔中継サイト〕
https://www.jcp.or.jp/akahata/web_daily/cat11/
上野裕寿四段は第73回奨励会リーグで2位になり、10/1付けでプロ入りを果たしました。
19歳でのプロ入りですから、将来有望かと思います。
奨励会三段で参加して途中で四段になった場合、棋戦優勝の扱いになるのかよくわかりませんが、新人王戦優勝者はかなりの活躍で活躍しているので、若手の登竜門であることは間違いないです。
相手は実力を高く評価され、abemaTVトーナメントでもドラフトで選ばれた藤本四段です。
さあ十代同士の戦いの結果は、どうなったでしょうか!
〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/shinjin/kifu/54/shinjin202310020101.html
ということで、将棋です。
先手は上野四段で、矢倉に進みます。とはいっても現代はお互いに組み合うがっぷり四つの矢倉には進みません。
後手の藤本四段は飛車側の桂馬をポンポン跳ねて、桂金交換に成功しますが、しかしこれで評価値互角なのが不思議です。
上野四段の事前研究だったようです。
そこからさらに金角交換となり、トータルで桂馬と金の交換です。大きな駒損ですが、それでも評価値はむしろ先手有利です。
そこから先手は銀を取り返し、たまった歩の手筋で後手陣をとんどん乱していきます。
このまま先手が押しきりそうかと思ったところで、高勝率をたたき出している後手藤本四段が本領発揮です。
ここで上野四段は27分を費やして、勝ち筋を見つけます。
一手間違えれば後手勝勢になるとことをギリギリで交わし、後手も最後まで先手が一手間違えたら逆転する筋を離しません。
最後までギリギリの勝負になった一戦は、115手まで先手上野四段が嬉しいプロ入り初勝利をこの新人王戦決勝という大舞台で上げることができました。
上野四段は今後に期待が持てると思います。
新人王戦第2局は、10月23日(月)に行われます!
〔中継サイト〕
https://www.jcp.or.jp/akahata/web_daily/cat11/
上野裕寿四段は第73回奨励会リーグで2位になり、10/1付けでプロ入りを果たしました。
19歳でのプロ入りですから、将来有望かと思います。
奨励会三段で参加して途中で四段になった場合、棋戦優勝の扱いになるのかよくわかりませんが、新人王戦優勝者はかなりの活躍で活躍しているので、若手の登竜門であることは間違いないです。
相手は実力を高く評価され、abemaTVトーナメントでもドラフトで選ばれた藤本四段です。
さあ十代同士の戦いの結果は、どうなったでしょうか!
〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/shinjin/kifu/54/shinjin202310020101.html
ということで、将棋です。
先手は上野四段で、矢倉に進みます。とはいっても現代はお互いに組み合うがっぷり四つの矢倉には進みません。
後手の藤本四段は飛車側の桂馬をポンポン跳ねて、桂金交換に成功しますが、しかしこれで評価値互角なのが不思議です。
上野四段の事前研究だったようです。
そこからさらに金角交換となり、トータルで桂馬と金の交換です。大きな駒損ですが、それでも評価値はむしろ先手有利です。
そこから先手は銀を取り返し、たまった歩の手筋で後手陣をとんどん乱していきます。
このまま先手が押しきりそうかと思ったところで、高勝率をたたき出している後手藤本四段が本領発揮です。
ここで上野四段は27分を費やして、勝ち筋を見つけます。
一手間違えれば後手勝勢になるとことをギリギリで交わし、後手も最後まで先手が一手間違えたら逆転する筋を離しません。
最後までギリギリの勝負になった一戦は、115手まで先手上野四段が嬉しいプロ入り初勝利をこの新人王戦決勝という大舞台で上げることができました。
上野四段は今後に期待が持てると思います。
新人王戦第2局は、10月23日(月)に行われます!
最近の金融・投資【令和5年9月第4週】 [金融・投資]
〔先週の株式市場〕
先週は4日マイナス1日プラス、トータルで大幅マイナス。
それでも月単位で見れば、中盤でかなり上昇したのでそれなりのプラスをキープです。
もう少し様子を見て、株を買い足してしまうかも。
来年のNISA枠で買い足すのが正解のような気もしないでもありませんが。
〔『株の時間ですよ』の話〕
yahooファイナンスで「株の時間ですよ」というマンガが連載されている。
いまは塩漬けマンがロコナショックの乱高下に悪戦苦闘している場面になっている。
自分は塩漬けマンとはスタイルが違うのでなんとも言えませんが、いろいろと思い出しますね。
長期投資の自分が、唯一、損切りをしたのがコロナショックです。
赤字転落前に切り抜け、その後の株式市場の復活もあり、結果オーライだったのですが、本当にこの対応で良かったのかどうなのか。
日々勉強ですね。はい。
先週は4日マイナス1日プラス、トータルで大幅マイナス。
それでも月単位で見れば、中盤でかなり上昇したのでそれなりのプラスをキープです。
もう少し様子を見て、株を買い足してしまうかも。
来年のNISA枠で買い足すのが正解のような気もしないでもありませんが。
〔『株の時間ですよ』の話〕
yahooファイナンスで「株の時間ですよ」というマンガが連載されている。
いまは塩漬けマンがロコナショックの乱高下に悪戦苦闘している場面になっている。
自分は塩漬けマンとはスタイルが違うのでなんとも言えませんが、いろいろと思い出しますね。
長期投資の自分が、唯一、損切りをしたのがコロナショックです。
赤字転落前に切り抜け、その後の株式市場の復活もあり、結果オーライだったのですが、本当にこの対応で良かったのかどうなのか。
日々勉強ですね。はい。