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【書評】門田隆将『康子十九歳 戦禍の日記』 [書評]

戦時中の日本を生き、わずか十九歳で逝った少女の記録です。


康子十九歳 戦渦の日記 (文春文庫)

康子十九歳 戦渦の日記 (文春文庫)

  • 作者: 門田 隆将
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 文庫



粟屋康子は、広島市長在職中に原爆で即死した粟屋仙吉と妻の幸代との間に生まれた次女です。
姉、弟2人、妹の7人家族で、愛情豊かな家族に包まれて健やかに成長していました。
戦時中の窮乏生活ももちまえの明るさと前向きさで戦い続け、勤労奉仕でも日本の行く末を案じながら友人たちとの思い出を重ねていきます。
疎開で家族がバラバラとなり、広島にいた父、弟、姪の3人を一気に失います。辛うじて一命をとりとめた母も一か月後に亡くなります。
そして、広島に駆け付けて懸命に母を看病した康子も、原爆症により短い生涯を閉じます。
とにかく、家族の愛情の豊かさと、その家族を一瞬で吹き飛ばした原爆の悲惨さは、涙なしには読めません。
康子は恵まれた家庭に育ちますが、それでも当時の日本人の家族のひとつの姿を、描き出しています。
戦後60年がたち、それでも親友たちが康子のことを忘れず、著者に様々な思いを語ってくれます。
脚色のない、当時の日本人の姿が、ここにあると思います。

家族愛に溢れた戦中の日本人の姿を知りたいひとのために!
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