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将皇で地道に勉強している話 [将棋日誌(目標二段)]

地道に将棋の勉強を再開した。

ひたすら将皇の詰め将棋を入門から上級まで4問解く。
最初はかなり間違えたが、最近はそれほど時間をかけなくても、詰ませられるようになってきた。まあ2日に1問ぐらい間違えてしまいますが。
勝ちきれ将棋も続けていますが、これは難しい。
基本的にじっくりとリードを広げて勝つ棋風なので、叩き合いの局面に弱い。
とにかく手数がかかる。
掲示板を見ると、みんな決めるところでスパッと決めて、すごいなあと思う。

それと東大将棋6のマスター(アマ四段~五段)との駒落ち対局。
二枚落ちならさすがに勝てるのでいまは飛香落ちだが、これがたまにしか勝てない。
定跡がまったくわからず、手将棋になると分が悪い。
これも勉強だとは思うのですが、まあ楽しみとしてボチボチと。
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【書評】清水カルマ『禁じられた遊び』 [書評]

「第4回本のサナギ賞」大賞受賞作です。


禁じられた遊び (ディスカヴァー文庫)

禁じられた遊び (ディスカヴァー文庫)

  • 作者: 清水 カルマ
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: 文庫



伊原直人は子供に「トカゲのしっぽを埋めると再生するよ」と小さなウソをつきます。そのウソを信じた子供が、愛する母が交通事故で死んだとき、ちぎれた指先を土に埋めて、再生させようと必死に祈ります。
物語はふたつの軸で進んでいきます。伊原直人と、昔の同僚だったフリーのビデオ記者、倉沢比呂子です。
二人の間のほのかな恋愛感情が、死んだ妻の怨念を増幅させ、次々と奇怪なできごとが起こります。ここからドンドンおどろおどろしい展開が続きます。
まさにホラーです。
ただ恐ろしいだけでなく、ラストには意外などんでん返しが待っています。
新人らしく、かつ新人離れした作品だと思います。

ホラー好きの読者のために!

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【掌編】齊藤想『麒麟児』 [自作ショートショート]

TO-BE小説工房(第51回)に応募した作品です。
テーマは「キリン」でした。

―――――

『麒麟児』 齊藤 想

 小学二年生になる息子が、マンションの窓から公園の一角を指差した。
「あそこにキリンがいるよ」
 私は六階の窓から外を眺める。もちろんキリンなどはいない。数本のけやきと、ブランコをこいでいる女の子が二人いるだけだ。
「こんな街中にでキリンが歩いていたら大騒ぎだよ」
「そんなことないよ。だって、キリンがいても、ほとんどのひとは気が付かないもん。キリンって特別なひとにしか見えないんだ」
 私は笑いながら答える。
「動物園にもいるし、図鑑にものっているじゃないか」
「カタカナのキリンじゃなくて、漢字のキリン」
 私はビールのラベルを思い出した。確か中国の神話に現れる霊獣だったはずだ。
「麒麟には翼があるから、空も自由に飛べるんだよ。ほら、いま太陽に向かって駆け上がっている!」
 私は息子の視線に合わせて空を見上げた。必死に息子が麒麟だと思った何かを探すが、目に映るのは澄み切った青空のみ。街中でよく見かけるが、名前のしらない野鳥が視線を横切った。さすがにこれを麒麟とは呼ばないだろう。
 息子は無邪気に空の一点を指差している。
 そもそも、麒麟には翼がない。翼が生えているのは日本橋にある麒麟の像だけ。そういえば祖父母は銀座に住んでいる。幼いころから日本橋を見続けていれば、麒麟に翼があると勘違いするのも当然かもしれない。
 玄関が小さく二回ノックされた。示し合わせた合図だ。チェーンをつけたまま小さく開けると、妻が顔を出した。お互いににっこりとほほ笑むと、私は妻を迎え入れた。息子が「ママ」と言いながら妻に向って駆け寄る。二人は抱擁を繰り返す。
 物心ついたころから、息子はありとあらゆることにまれなる才能を発揮し、麒麟児と呼ばれていた。本当はサバン症候群。ただ息子が通常とは違うところは、知的障害がみられないのに、サバン症候群の特徴である常道を喫した記憶力、卓越した計算能力を持っていることだ。
 視力も尋常ではない。普通の人間には見えないものを目にすることができる。視力も脳内の処理能力に大きく影響しているので、異常な視力もサバン症候群の一種なのかもしれない。
 「キリンが見える」ことも、もしかしたら本当なのかもしれないと思わせるだけの能力が、息子にはあった。
 もちろん科学者たちは息子のことを研究材料にしようと躍起となった。息子が研究材料とされることに嫌悪感を示したため、いくら拒否しても科学者たちがしつこく付きまといときには拉致まがいなこともされたため、数年前から隠遁生活を送るようになった。
 息子を狙うのは、国内だけではない。海外からも怪しげな集団が目を光らせている。
 生活費は息子が稼いでいる。彼にしたら株価の推移を予測するのは簡単なようで、どんな相場でも黒字をたたき出すことができた。

「麒麟児は人類の突然変異である]

 ある研究者は私に向かってこういった。それは人類の希望であり、未来でもあると熱っぽく語ってきた。その一方で、こう告げることも忘れなかった。
「この子をそのままにするのは、不幸です」
 だれが不幸になるのかについては、言葉を濁された。麒麟は王が仁のある政治を行うときに現れる瑞兆とされる一方で、傷つけたり、死骸に出くわしたりするのは不吉なことだとされる。
「そろそろ追っ手がやってくるから、移動しようか」
 息子の言葉に従って、私たちは新しい住居を探す。息子は全人類の動きが手に取るように分かるようで、危機に陥ったことがない。
 科学者が言うように、息子は人類の進化形だ。しかもバージョンアップといった生易しいものではなく、新人類が旧人類を駆逐するような大変化だ。この進化が人類を不幸にするのか、幸福にするのかは分からない。息子はその気になれば、全人類を手の平で転がすことができる。研究者との鬼ごっこも、息子からしたら児戯にひとしく、人類の愚かさを確かめる実験なのかもしれない。
 私は少し悩んでいる。 この麒麟児をこのまま育てたほうが良いのか。それとも親としての愛より人類の未来を選ぶべきだろうか。
 ふっと、息子と目があった。二倍もある大きな目が、心の奥まで見透かすように射すくめてきた。

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