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創作状況【12月上旬】 [ぼくの公募状況]

好き勝手に書くのは楽しいことなりけり。

【サイトーメルマガ第147回の内容紹介】
◆こんな公募に挑戦してきました(渋谷ショートショートコンテスト)
◆TO-BE小説工房に挑戦中(第57回)
◆公募情報数点
 今月は応募したての渋谷ショートショートコンテストを紹介です。
 メルマガ登録はこちらから。もちろん無料です!
 http://www.arasuji.com/saitomagazine.html

【ショートショートガーデン】
ベルモニー・ショートショートコンテストへの応募予定作品の第2段です。
〔いろいろな目〕
https://short-short.garden/S-uCTfuP

あと1作品UPして、合計して3作品にする予定。


【TO-BE小説工房】
今月投稿用の作品を校正する。余計な語句が粘着していたので削り落とした結果、4行ぐらいスペースが開く。
月末にはもうちょっと調整します。
来月はテーマがでたら考えます。はい。

【星新一賞】
再来年の作品は福島正実SFのボツネタを使うつもりだけど、いまいちストーリーが浮かなばい。
いまのところアイデアだけだけど、突如として書き始めるかも。

【創元SF短編賞】
とりあず最後まで書き終えた。40×40で23枚。制限枚数まで残り2枚。
ここから推敲に入りますが、副主人公の最終目的を忘れていたことにびっくり(汗)

【北区内田康夫ミステリー文学賞】
ミステリ小説を再び読み始めました。次も倒叙式にしたいなあと思っているけど、気持ちが変わるかも。
一度くらいは、羊たちの沈黙のような作品を書きたいんだよなあ。
だいぶ昔に専門書を買ってしまったというのもありますが。

【坊ちゃん文学賞】
とりあえずはショートショート化第1回目の受賞作待ちです。

【福島正実SF童話賞】
おいおい考えます。
やっぱり第1案がよいような気がしてきたが、カテゴリがなあ。

【ゆきのまち幻想文学賞】
かなりストックがあるので、あとは投稿時期を待つのみ。
あ、諸費用の郵便為替を買わないと。

【ミステリーズ!】
今年中にテーマを中心に加筆修正をする予定だが、なかなか手が回らず。

【FACEBOOK】
友達募集中です!
https://www.facebook.com/profile.php?id=100007879718530

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【公募情報】極光納豆キャッチフレーズ募集 [公募情報]

ツイッターでお手軽応募です。

〔主催者HP〕
https://peraichi.com/landing_pages/view/eiko-kiwahikari

極光納豆は、値段に厳しい大阪で、3P約200円でも売れ続けている人気商品です。
ちなみに(きわひかり)と読みます。
そんな極光納豆が1年分もらえるチャンスです。
応募方法は考えたキャッチフレーズをツィートするだけです。
関東では馴染みが薄いかもしれませんが、大阪人はぜひと応募してみてください。
応募締切は令和2年1月31日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:キャッチフレーズ
テーマ :極光納豆
最優秀賞:極光納豆1年分
応募締切:令和2年1月31日
応募方法:ツィート
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【書評】神沼三平太『実話怪談 怖気草』 [書評]

著者が取材した怪談集です。


実話怪談 怖気草 (竹書房文庫)

実話怪談 怖気草 (竹書房文庫)

  • 作者: 神沼 三平太
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 文庫



いわるゆ都市伝説のような怪談が、21話収録されています。
舞台は現代で、少し妙な話、死が近づいてくるような詰まってきます。
『ははのひ』は人間の暗い部分がおどろおどろしく表現されていて、なかなかの怪談だと思います。

怖い話が好きなひとのために!
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最近の日常【令和元年12月上旬】 [日常]

〔次男のiphoneを修理した話。〕
次男のアイフォンがフリーズした。アップルの画面から動かない。
どうにもならないので修理に出そうと思い、ネットで調べる。
正規代理店が安心かなあと想っていたけど、近隣店は店員の評判が宜しくないようなので、裏通りのアパートの2階で営業している地味な修理店に依頼する。
ぱっと見でOSの問題、つまり何らかのアップデート中に電源が落ちたかなんかが原因と思っていたけど、店員もまったく同じ見解だった。
こうした事象は頻発しているようで、店員のオススメは無意味なアップデーとはしないこととのこと。まあそうだよね。
いろいろあって、結局、初期化することになりました。
作業時間は約1時間、料金約5,000円なり。
さらっと回復して良かった。

〔大阪の話〕
大阪出張のついでに実家による。
元々は祖父の工場があった土地だが、祖父が脳梗塞で倒れて仕事復帰が絶望的になったとき、介護用にと母親が居宅に建て替えた。
この大阪の家だが、もうすぐ人手に渡る。
いまは両親が住んでいるが、さすがに家を2軒持っているのは疲れるということで大阪を売り、関東の家に定住することになった。
なので、今回の訪問が最後になる。幼い頃から見慣れた光景なので、少し感傷に浸る。
寂しい気持ちもあるけど、祖父が死んだあとも十数年維持してくれたのだから、両親には感謝すべきだろう。
祖父の住居は、工場とは川を挟んだ反対側にあった。
長屋の借家で、2階に上がるのが恐ろしいほど古かったのだが、祖父の希望で買取り、死後に売却した。いまは現代的な一軒家になっている。
祖父の家が取り壊されてかなり経つのだが、それでも目の前にくると子供の頃の記憶がよみがえってくる。
自分の原風景が徐々に掠れていく。
これが年齢を重ねるということなのだろう、という思いを抱きながら。

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第32期竜王戦第5局(広瀬章人竜王VS豊島将之名人) [将棋]

広瀬竜王の1勝3敗で迎えた第4局です。

〔中継サイト〕
http://live.shogi.or.jp/ryuou/

豊島名人の師匠は桐山清澄九段で、72歳になりますがまだ現役です。プロ入りしてからの年数は半世紀を超えます。
豊島名人はプロ入りしてから13年になりますので、師匠とも13年間共に将棋界にいたことになります。
この13年間に師弟対決があったのかどうかですが、調べると1回だけありました。
2011年4月に行われた第59期王座戦の二次予選2回戦で、豊島将之が師匠相手に白星を挙げています。
いま桐山九段はC級2組に在籍し、降級点を2つ持っています。今期の順位戦成績が芳しくないため、引退は避けられない情勢です。
引退前に弟子が名人になったのは、棋士としてこの上ない喜びだと思います。
豊島名人が勝てば、師匠に名人だけでなく竜王になった姿を見せることができます。
桐山清澄は棋聖、棋王、タイトル昇格前の王座を獲得していますが、名人、竜王(十段)には縁がありませんでした。
さあ、弟子の豊島名人は、師匠が届かなかったタイトルを2並べることができるでしょか!

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/32/ryuou201912060101.html

ということで、将棋です。
先手豊島名人は、十八番といえる角換わりを選択します。
最近流行の後手待機戦術に桂成り捨ての筋には入らず、2六歩を生かした2五桂跳ねから先手が攻めていきます。
その桂馬は取られますが、歩得と陣形の良さが先手の主張です。
途中で千日手の筋もありましたが、局面良しと思ったのか後手広瀬竜王が千日手の筋には入らず、俄然と攻め、豊島玉を寄せにいきます。
控え室からは後手良しの声が多かったですが、評価値的にはむしろ先手有利の時間が長かったようです。
最終番、広瀬竜王が豊島玉を詰ましに入りますが、しかし歩がひとつ足りません。もしかしたら見落としかもしれません。
急転直下で豊島名人勝勢となり、143手まで先手の勝ちとなりました。

これで豊島名人が4勝1敗となり、名人竜王の大二冠を達成しました。
おめでとうございます!
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【公募情報】おはか川柳コンテスト [公募情報]

なんと「お墓」をテーマにした募集です。

〔主催者HP〕※10/19の記事参照
https://www.mk-project.tokyo/category/blog/

主催者は町屋光明寺ですが、HPを見ると「町屋光明寺プロジェクト」を立ち上げて、とてもお寺のHPとは思えない斬新なものです。
進行中の企画でも
・最先端の技術を使ったプロジェクションマッピング法要
・お堂を使ったエンターテインメントの上映
・人とロボットで織りなす仏事演出(企画中)
などなど、これから何が飛び出すのかわくわくしてしまいます。
そんな町屋光明寺が募集するので、正直、何がよいのか五里霧中です。
新しいお墓を考えたいひとにぴったりかもしれません。
応募締切は令和2年1月末日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:川柳
テーマ :お墓
最優秀賞:5万円
応募締切:令和2年1月末日
応募方法:郵送、メール
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第78期順位戦【B級2組・中盤戦】 [将棋]

羽生世代が覚醒中です。

〔対戦表〕
https://www.shogi.or.jp/match/junni/2019/78b2/index.html

今季好調の丸山忠久九段が6連勝とトップを走ります。
羽生世代なのでもう49歳です。それを若手棋士たちをなぎ倒しての連勝街道は驚異的で、残るベテラン勢との戦いでも勢いを維持できれば昇級の可能性大です。1敗しても星ひとつで追う横山泰明六段、大石直嗣七段が全勝しないと越えられないので、かなり有利であることは間違いありません。
同じ羽生世代の元竜王、藤井猛九段も5勝2敗と上位陣を伺っています。
4つ下に当たる45歳、鈴木大介九段も5勝1敗と好調です。次節同星である大石七段戦、ラス前に同じく1敗の近藤誠也七段戦があります。今後の展開によっては自力復活がありえます。
後半戦に1敗同士の潰し合いが多数組まれています。偶然の産物ではありますが、展開としては面白いです。
昇級予想としては、丸山九段と逆転で近藤誠六段としておきます。

残留争いとしては全敗がいないのでまだまだ混戦です。
B級1組から落ちたばかりの野月浩貴八段はまだ1勝と苦しんでいます。
どうしてしまったのでしょうか。

第8回戦は12月18日です!

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第9期リコー杯女流王座戦第4局(里見香奈女流王座VS西山朋佳女王) [将棋]

里見女流王座の1勝2敗で迎えた第4局です。

〔中継サイト〕
http://live.shogi.or.jp/joryu_ouza/

文春オンラインで西山女流二冠のインタビューの中で「トップ棋士にはあらゆる将棋で負ける」というフレーズが印象に残っています。
「駒組みのスキを突かれてボコボコにされますし、こちらの序盤がうまくいっても勝負術がたくさんとんできて逆転負けします」という実感からよく考えるようになったとのことです。
西山女王は早見え早指しのですが、これは手が良く見えるからできることです。
ここにさらに「深い読み」が加われば鬼に金棒、女流棋戦で勝ちまくっているのもわかります。
奨励会員が出場できる女流棋戦は、マイナビ女子オープン、女流王将戦と女流王座戦の3つです。
西山女王はすでに2冠を制覇しているので、残るは女流王座のみです。
さあ女流棋界の制覇する勢いの西山女王ですが、第4局の結果はどうなったでしょうか!

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/joryu_ouza/kifu/9/joryu_ouza201912040101.html

ということで、将棋です。
西山女王の三間飛車に里見女流王座は居飛車銀冠で対抗します。
CPU的には振り飛車の評価値が低いため、序盤は先手+400を越えますが、こまがぶつかってからが勝負です。
先手から角交換し、再び盤上に放ち、はねさせた左桂を目標に攻めます。
里見女流王座は、47手目に香車を取りながら馬を作る筋がありましたが、嫌な筋がありこれを見送ります。
ですが、ここからは後手ペースになったようです。
中央で威張る馬が手厚く、さらに働きの悪かった飛車を切り、手にした銀で玉頭方面から圧迫します。
四段目まで歩が伸び、その裏には馬や銀の支えがあるので、容易なことでは切れません。
終盤、一瞬だけ混戦になりかけましたが、先手飛車を追い掛け回しながら銀や桂馬を盤上に配置し、ふたたび手厚くなってからは逆転の目はありませんでした。
中盤の力強さで上回った西山女流二冠が最後は磐石の差し回しをみせて、144手まで完勝です。
これで3勝1敗となり、これで里見香奈相手にタイトル戦3連勝、女流三冠となりました。

西山女流王座、おめでとうございます!
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第78期順位戦【B級1組・中盤戦】 [将棋]

全13局中、7~8局まで終了です。

〔対戦表〕
https://www.shogi.or.jp/match/junni/2019/78b1/index.html

突飛を走るのは菅井竜也七段で、7勝1敗と好調です。
ただ、全員が強豪であり、2敗勢の斎藤慎太郎七段、千田翔太七段との対戦が残っているので、安全圏とは言えません。
3敗勢にもまだまだチャンスがあるので、昇級争いはまったく読めません。序盤に苦戦した行方八段も3連敗から4連勝と星を伸ばしてきました。
最近も対局結果も上々なので、ここから伸びる可能性があります。
混戦が続くようだと、年度終盤に調子の良い棋士が昇級しそうです。
残留争いは2勝で山崎隆之八段、谷川浩司九段、畠山鎮七段が並んでいます。3勝も3人おり、こちらも危ないです。
一番苦しいのは上位陣との対戦が残っている谷川九段、あとは順位が低い畠山鎮七段も危険です。
山崎八段は波のある棋士なので、終盤戦に向けて星を伸ばしてくると思います。
10回戦に組まれている山崎・畠山戦が残留に向けての大勝負になりそうです。
今期は混戦で、もちろん3勝勢も安全ではありません。
3勝5敗の屋敷九段は最終戦で山崎八段と、3勝4敗の松尾八段は同じく最終戦で畠山鎮七段戦があります。

いまのところの昇級候補としては、菅井七段と千田七段と予想しておきます。
5日に第9回戦があります!
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【掌編】齊藤想『ハルピンの冬空』 [自作ショートショート]

第28回ゆきのまち幻想文学賞に応募した作品です。
テーマは毎年同じで「雪の幻想性」です。

―――――

 『ハルピンの冬空』 齊藤 想

 これは、八十五歳で死去した私の祖父から聞いた話です。
 祖父が若いころ、戦争の黒雲が日本全土を覆っていました。祖父は山間の田舎で鍬を振るう農家の後取りでしたが、戦況の悪化とともに赤紙が配達され、三ヶ月の即席訓練だけで戦地に送られました。軍服を着せられただけのお人形さんのような兵士です。鉄砲すらろくに撃てません。
 兵士としては使い物にならないと自覚していた祖父の派遣先は、満州国のハルピンでした。満州国とは旧日本軍が中国の北東部を占領して作った国です。ハルピンは満州国のはずれにあり、ロシア……当時はソビエト連邦共和国でしたが……の国境近くに位置した辺境の街でした。
 ハルピンは寒さの厳しい町です。口から出た言葉はその場で凍りつくような、静謐に包まれた小都市です。
 戦況が悪化していたといっても、それは太平洋の話で、満州国では平和な日々が続いていました。祖父の仕事は補給基地の警備です。歩哨として三交代で周囲を見張り、仕事が終わると食事をして寝るだけの、比較的暇な部隊でした。
 街に出ることも認められていました。
 戦争中とはいえ、満州国からすれば銃火ははるか遠方の出来事です。ハルピンでは何も変わらない日常が続いていました。コメは取れませんでしたが、周辺が農耕地ということもあり、イモ類を中心とする食糧事情にも恵まれていました。
 戦友は同じ境遇の若者ばかりです。暇を持て余し、食事にも満足となると、興味は自然と女性へと向かいます。
 当時の祖父は独身で、お付き合いをしている女性はいませんでした。若者は兵士に取られ、日本全土で男性が不足していましたが、それでも祖父の出身地である山間の農村は嫁不足に悩まされていました。
 新聞は連日大勝利としか報じません。祖父の両親は戦況がひっ迫していることを知らなかったばかりにのんきなもので「外地で嫁を貰ってこい」と旗を振って祖父を送り出していました。
 都市部では食糧不足が深刻化していましたが、まともな道路も通っていない世間と隔絶したような農村では、江戸時代とさほど変わらない生活が続いていたのです。
 ”兵隊”という仕事に慣れると、祖父は「いいところにきた」と思いました。鉄砲を撃つことも無ければ、砲弾の中を逃げ回る必要もありません。飯も食べ放題です。
 外出許可がでると、祖父は戦友とバンザイ突撃のように女性を求めて街へ繰り出していきました。”女性”という慣れない相手を前に戦友たちは次々と玉砕したのですが、祖父は書店の店員をしていた同世代の女性と恋仲になることができました。
 季節は真冬でした。彼女の肌は、透き通るような白さだったそうです。その色は、満州の霜を思い起こさせました。
 彼女の両親は中国人で、戦乱の続く中国本土を避けて満州国に移住したそうです。両親は中国本土で高度な教育を受けていたことから、少しでも住民の知識欲に応えようと書店を開いたそうです。
 彼女の日本語はたどたどしく、会話に不都合を感じるほどだったそうです。祖父は辞書を片手に中国語の勉強を始めました。
 恋の力は偉大です。
 彼女の両親は日本人と付き合うことにあまりいい思いはしなかったそうですが、二人の気持ちが曲がることはありませんでした。戦友たちも、祖父が本気と知ると、逆に心配するようになりました。
 障害があるほど恋は燃え上がります。周囲の懸念をよそに二人の気持ちは高まるばかりです。あげくの果てに、祖父は彼女に見回りに出る時間を教えて、お互いに合図を決めて手を振り合うことまでしていました。
 見回り時間を教えることは、重大な隊規違反です。敵に知られたら、補給基地を襲われるかもしれません。命の危険もあります。
 しかし、祖父は彼女と会いたい一心で、時間を教え続けました。
 見回りは二人でチームを組みます。祖父とペアを組んだのは、教師をしていたという真面目な中年男性でした。彼の名前は前川といいます。祖父も隊規違反であることを認識していたので、前川には「偶然だよ」と言い続けました。
 見え透いたウソがいつまでも通じるわけがありません。
 前川が上官に報告することだけはなかったものの、祖父は居心地の悪い思いを続けていました。危険は承知していました。それでも我慢できず、一瞬の会合を続けてたです。
 彼女に異変が起きました。真冬には活発だった彼女が、季節が移るにつれてふさぎ込むようになったのです。元気が抜けていくような感じです。祖父は彼女の体調を心配しました。彼女は力なく首を横に振るだけです。
 恋人に心配をかけまいと健気に振る舞う彼女を見て、祖父が彼女のことを思う気持ちはますます強くなりました。
 交際から半年が過ぎたころです。
 季節は初夏に差し掛かりました。一日中強風が吹きつける夜です。
 いつものように、祖父は見回り中に彼女の姿を見つけました。暗がりでも彼女のことを見間違えることはありません。前川は何も言いません。教育者らしく、民心掌握に必要とか、自分なりの理屈を築き上げているのかもしれません。
 しかし、その日に限り、彼女の様子が異なっていました。近づいてはならない補給基地にどんどん近づいてくるのです。
 前川は祖父のわき腹をつつきました。隊規だと、まず警告を発し、それでも進んでくるときは射殺しなければなりません。
 後方とはいえ、ここは戦場です。太平洋方面における戦況の悪化は満州にまで伝わってきました。「いつ匪賊に襲われるのか分からないので厳に警戒するように」との訓令を毎日のように聞かされています。彼女にも安易に近づいたら射殺されると伝えてあります。
 撃たなければ、こっちが撃たれる。それが戦場の現実でした。
 前川の顔は、明かにこわばっています。中国軍には便衣兵がいます。軍服を脱がして市民を装い接近し、日本軍を撃つ卑劣な作戦です。これは国際法違反なのですが、中国軍は守るつもりがないようです。
 補給基地にいるのは素人の兵隊ばかりです。だれもが疑心暗鬼に襲われていました。
 前川が日本語で叫び、銃口を彼女に向けました。撃鉄を上げる不気味な音がしました。
「ちょっと待て。日本語が通じないだけかもしれないじゃないか」
 祖父は叫ぶと、現地の言葉で彼女に呼びかけました。祖父は混乱していました。彼女には隊のルールを知らせています。補給基地に向って歩くなと言い続けてきました。疑われると、撃たれる恐れがある。君を失ったらぼくは生きていけない。
 そこまで話していたのにも関わらず、彼女は近づいてきます。幻影ではないか、まぼろしではないか、何度もそう思いました。
 彼女は祖父の説得を無視して、歩いてきます。何かを叫んでいますが、風が耳元を切る音で、彼女の声は全てかき消されてしまいました。
 一発の銃声が響きました。
 祖父の初恋は突如として終わりを告げました。彼女の体は空気の抜けた風船のように崩れ落ちました。
 祖父は彼女の元に駆け寄りました。しかし、彼女の姿は忽然と消えていました。彼女の両親が経営する書店にも向かいましたが、すでに更地となり、夏草がなびいていました。
 その夜から、彼女の姿を見ることは二度とありませんでした。

 祖父は悲嘆にくれました。
 数日して、国境線のソ連軍の動きが怪しいという情報が入りました。偵察部隊の募集があり、祖父は真っ先に手を上げました。
 もうそのころには戦況の悪化は隠しようがなくなっていました。祖父は前線に出て戦死するつもりでした。彼女の後を追おうとしました。
 祖父は中年の少尉に率いられた僅かな兵士とともに前線に出ました。そこがたまたま進撃するソ連軍の隙間で、背中に担いだ銃を発砲する間もなく、戦争は終わりました。少し前まで祖父がいた補給基地は全滅し、前川もそこで戦死したそうです。
 祖父はシベリアに抑留されたものの幸いにも生き延び、故郷に戻ることができました。先祖代々の家業である農家を継ぎ、再開した同級生と結婚し、子供も生まれ、孫として私もこの世に生を受けました。
 祖父は、彼女の正体はソ連軍のスパイだっと信じていました。日本軍の情報を取るために近づいたものの本気で恋をしてしまい、ソ連軍の侵攻を警告するために補給基地に近づいたのではないかと。
 そして、彼女は撃たれた。
 死体が見つからないのは、スパイ仲間が処分したに違いない。そう推理しました。
 しかし、私は思うのです。
 祖父が恋した相手は雪女だったのではないか。雪女は夏には消えてしまいます。自らが消える前に、愛する祖父を救うために、あのような行動を取ったのではないかと。
 いまごろ、祖父は天国で雪女と楽しい生活を送っていることでしょう。祖母が遅れてやってきたときに、二人の関係がどうなるかはわかりませんが。

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