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【書評】ジョン・コラピント『ブレンダと呼ばれた少年』 [書評]

極めて優れたドキュメンタリーです。


ブレンダと呼ばれた少年―ジョンズ・ホプキンス病院で何が起きたのか

ブレンダと呼ばれた少年―ジョンズ・ホプキンス病院で何が起きたのか

  • 作者: ジョン コラピント
  • 出版社/メーカー: 無名舎
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 単行本



主題となっているのはディヴィッド・ライマーです。
彼は正常な男性として誕生しながら、手術の失敗により陰茎の大部分を失い、ジョン・マネー医師の指導の元、性転換手術を受けて女性として育てられました。
これは当時、人間は中性として誕生し、文化的な抑圧により男性・女性の自己認識が生じるという理論に基づいて実施されました。
彼は双子であり、その片方が性転換手術を受けたことで、格好の被験者となりました。
性転換が成功すれば、性差が文化で決まるという最高の症例となるからです。
そして、彼は「女性として順調に成長している」と学会で発表され、この症例が根拠とされて多くの少年少女が性転換手術を受けました。
しかし、その実、ディヴィッド・ライマーのケースは完全なる失敗でした。
この真実が明かされ、彼が男性に戻るまでの、まさに戦いの記録です。
非常に優れたドキュメンタリーだと思います。

彼はこの本が出版された3年後に自殺しました。
冥福を祈りたいです。


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