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最近の日常【令和4年1月上旬】 [日常]

〔12月の株式状況〕
防衛増税と実質利上げで株式が大きく変動する。
両方とも基本的には株価を押し下げる要因ですが、実質利上げは銀行株に限ってプラス要因。
自分の場合は、保有している株式のうち、銀行株の割合が大きいため、結果的に12月は大幅にプラスとなりました。
とはいえ、企業業績がマイナスとなり、令和5年度以降の配当金に悪影響が及びそうで実に不安です。
含み益なんてものは、すぐに消えてなくなるものなので。
コロナショックはわずか3年前ですが、そのときには含み益がほぼゼロでしたから。
しばらくは様子見が続きそうです。


〔アマゾンプライムで映画が見放題であることを知った話〕
昔からアマゾンプライムに加入していた。
元々は加入するつもりはなかったのだが、気が付いたら加入させられていて、送料無料になるしい使用頻度も高いからいいかとそのままにしていた。年数千円程度だし。
だから送料無料以外の特典は知らなかったのだが、最近になって映画が見られることに気がついた。
本当にいまさらだが、興味のないことはまったく調べない人間なので。
種類も豊富だし、画質も良い。これは便利です。
いやあ、この値段でこのサービスには驚きです。しかもほとんどが無料。レンタルDVDが無くなるのも分かります。
これから映画生活が始まりそう。ますます時間が無くなりますなあ。
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【映画】トランスフォーマ・リベンジ [映画評]

変身がさらにパワーアップした娯楽大作です!


トランスフォーマー/リベンジ [DVD]

トランスフォーマー/リベンジ [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • 発売日: 2012/07/13
  • メディア: DVD



前作トランスフォーマーのヒットを受けての続編です。
今回の敵はフォールンです。これは前作のボス、メガトロンの師匠です。
さてストーリーですが、主人公は大学生になります。
恋人とも離れ離れになり、ルームメイトはネット企業をしているロボットマニアの奇人。
さて大学生活どうなると思っていたら、フォールンが米軍宇宙衛星を通じて情報を得て、メガロトンの復活に成功させます。
主人公はオールスパークのかけらに触れたことで、オールスパークの情報が脳に書き込まれてしまいます。
その情報を求めて、フォールンとメガトロンが主人公を狙います。
主人公は逃げますが、オプティマスプライムが戦死します。
フォールンとメガトロンは地球への攻撃を緩めず、主人公を引き渡すよう要求します。
主人公は降伏しようとしますが、戦うことを決意します。
そして前作では敵だったセクター7のシモンズと再会し、オールスパークの情報をもとにしてトランスフォーマーの命の源「エネルゴン」の隠し場所を突き止めます。
とまあ、こんな感じでストーリーは続きます。
ラストは「エネルゴン」を作動させるパワー「マトリクス」でオプティマスプライムが復活し、仮面ライダーシリーズのようにオプティマスプライムが超絶進化して、フォールンを倒します。
そして、メガロトンは(次作のために)逃走します。
この映画ですが、批評家からは酷評されています。
この手の映画は酷評されるのがつきものですが、2時間30分中、2時間まではとても楽しめました。
細かいことは抜きして、マシンたちの超絶変形と、次から次へと続くCG満載のアクションシーンに、派手な爆発の連続。
映像だけで十分に楽しめますし「トランスフォーマーがいるから敵が来る」と主張する謎の官僚との軋轢。次々と謎を解く爽快感。
ですが、最後の30分がさすがにこれは……という感じです。
ご都合主義が多く、不発(というか意味不明)の仕掛けも頻発しています。
両親を使った罠の意味も不明だし、父と息子の分かれのシーンもかなり?です。たぶん、テーマにしたかったのだと思いますが。
で、危ないからと両親を遠ざけながら、彼女を危険にさらすのはОKらしいです。
さらにこの両親ですが、息子が死ぬと突如として戻ってきます。で、息子はなぜかプライムに選ばれて復活する。この仕組みもかなり謎です。
そもそも、主人公が簡単に見つけられたことを、敵がなぜ見つけられないのかもよくわかりません。
マイケル・ベイ監督も今作を失敗作であると認めているでそうで、詰め込みすぎの内容になってしまったことを反省点として挙げているそうです。
確かにそうなのかもしれません。
製作費2億ドルに対して興行収入約8億4千万なので、前作を超えるヒットです。

とにかく頭を空っぽにして楽しみたいひとのために!
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第72期ALSOK王将戦第1局(藤井聡太王将VS羽生善治九段) [将棋]

いよいよ世紀の対局が始まります。

〔中継サイト〕
https://mainichi.jp/oshosen2023

中原誠十六世名人が、引退時に「悔いがあるとすれば(挑戦を逃した2003年の)竜王戦挑戦者決定戦。羽生さんと一度タイトル戦を戦ってみたかった」と述べたことは有名です。
中原誠十六世名人と羽生九段の年齢差は23歳です。対する藤井王将と羽生九段の年齢差は32歳差もあります。
前期の羽生九段の不調を見て、もうタイトル戦は実現しないと思っていたファンが多かっただけに、1年間でここまで華麗に復活するとは、予想外のサプライズです。
前年の勝率は3割代ですし、その前も勝率5割を辛うじて超える成績でした。
それが今期は6割を大きく超えています。AI時代の対応に苦労していましたが、何かをつかんだのかもしれません。
年齢差からして、藤井王将と羽生九段のタイトル戦が何度も行われるとは思えません。
第72期王将戦も、将棋界の歴史として、長く語り継がれるかもしれません。
さあ、伝説になりうるタイトル戦の第1局は、どのような将棋となったでしょうか!

〔棋譜〕
https://mainichi.jp/oshosen2023/230108.html

さて将棋です。
先手になったのは藤井王将ですが、後手番の羽生九段は意表を突く一手損角換わりを採用します。
基本的に一手損角換わりは後手不利が通説なので、丸山九段や糸谷九段という一部のスぺシャリストが使う戦形です。
羽生九段はほとんど一手損角換わりは採用しませんが、一時期7二金型というかなり特殊というか羽生九段しか採用していない形で連戦連勝していた時期もあります。
本局は先手藤井王将は対一手損で最有力と言われる早繰り銀を採用しますが、羽生九段は3五銀という新手を用意していました。
そこから銀がドリブルして、敵陣で歩を取りながら銀交換です。
互角の形勢ですが、羽生九段らしい積極策を取りながら、後手番で中盤まで評価値に差がないのですから後手番作戦として成功だと思います。
しかし、ここからの藤井王将が強すぎました。
飛車は取られたものの、6筋の歩を消してから桂馬の乱舞で優勢を確保します。
決定的な差がついたのは70手目のようです。
羽生九段は金を取らずに桂馬であたりになっている銀を逃げましたが、王手で取れる金を取った方がまだ難しかったようです。以降は91手まで藤井王将がそのまま押しきり、まずは1勝を上げました。
本局の羽生九段は作戦も良く、46手目の3七歩で通常の相手なら羽生ペースになってもおかしくない展開ですが、ここから最善手連発ですからこれはもう藤井王将が強すぎます。

しかし、まだ7番勝負は始まったばかりです。
第2局は1月21日、22日に大阪府高槻市「摂津峡花の里温泉 山水館」で行われます!
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【映画】トランスフォーマー [映画評]

車が変身しまくりの、期待以上の面白さでした。


トランスフォーマー ブルーレイシリーズパック 特典ブルーレイ付き ※初回限定生産 [Blu-ray]

トランスフォーマー ブルーレイシリーズパック 特典ブルーレイ付き ※初回限定生産 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント
  • 発売日: 2017/12/13
  • メディア: Blu-ray



男子であれば、変身物にあこがれると思います。
アレコレ仕組みはわからないが、とにかく変身する。
意味など関係ない。
そうしたシーンにただ興奮するものです。
そうした子供たちの要望に、実写版で真正面から向き合ったのがこの映画だと思います。
ストーリーはというと、あるところに金属生命体の星があります。
そこでは正規軍と反乱軍が激しく戦い、母星はめちゃくちゃになっていした。
その反乱軍のリーダーと金属を生命化する力を持ったオールスパークが、地球の南極に墜落したことで、地球が戦いに巻き込まれます。
主人公は氷漬けの反乱軍リーダーを発見した探検家の子孫です。
高祖父のメガネがキーとなっているため、正規軍と反乱軍で奪い合いになります。
冷凍保存されていた反乱軍のリーダーが目を覚まし、そして正規軍との最後の戦いが始まる……というストーリーですが、細かい話は気にしなくていい映画だと思います。
とにかく車が変身し、人間と共同して反乱軍を倒します。
ダメ人間だった主人公が、最後は英雄になります。
なぜ正規軍が地球の見方をするのかとか(いちおう、かなり弱い理由は付けられていますが)、なぜ主人公にオールスパークを持たせたのかとか、そういうことをまじめに考えてはいけません。
マイケル・ベイ監督の爆発とCGをうまく融合させた映像の妙もあり、予想以上に楽しめました。
笑いの要素もあり、ストーリーの分かりやすさもあり、家族で楽しめるエンターテイメント映画だと思います。
子ども心になって楽しめました。
続編が作られるのもなっとくです。
製作費1億5千万に興行成績約7億1千万のヒット作です。

かっこいい変身シーンを堪能したいひとのために!
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【映画】007 No Time To Die [映画評]

ジェームスポンドシリーズ25作目であり、ダニエル・クレイグ5作目のボンドです。


007/ノー・タイム・トゥ・ダイ [Blu-ray]

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2022/10/07
  • メディア: Blu-ray



冒頭で少女が能面の男に襲われます。
母は殺されますが、娘は逃げ出し、凍り付く湖に落ちたところをなぜか能面の男に助けられます。この能面の男はボンドの敵、スペクターに恨みを持っています。
場面は変わりイタリアへ。引退したボンドが妻と平和に暮らしているところに、突如として敵(スペクター)に襲われ、妻の内通を疑って二人は別れます。
ここまでがプロローグです。
メインはロシア人科学者が開発したナノマシーンです。このマシーンにDNAを読み込ませることで特定のターゲットを確実に殺すことができます。
これはMI6が開発を進めていたのですが、能面の男とロシア人科学者がコンビを組み、秘密基地でこのナノマシーンを改造し、世界を破滅させる兵器に改造を進めていた。
そこにボンドたちが乗り込みます。
というのが、かなりはしょったストーリーです。
テーマとしては別れた夫婦の再生、いかにひとを信じるのか、というところだと思います。
お互いに不信感を持っていた夫婦は再結合し、引退した007を引き継いだ後任はジェームスボンドに敵愾心を持っていましたが、お互いに協力することでチームとなり、和解します。
スパイ映画らしくアクションシーンや特殊道具も盛りだくさんで、セットも派手です。
あと日本人としては、枯山水風の庭に水があるのは違和感かも。
枯山水で白砂に付けられる模様は水の流れを表していて、そもそも水を使わないから枯山水なのですから。
製作費3億ドルで興行収益7億7400万ドルなので成功作だと思います。
2時間40分ありますが、一気に見られる作品だと思います。

肩ひじ張らずにスパイ映画を楽しみたいひとのために!
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【公募情報】三服文学賞(掌編・3/31〆) [公募情報]

温泉旅館発の新しい文学賞です。

〔主催者HP〕
https://wataya.co.jp/sanpuku_bungakusyo/

掌編公募で旅館が主催者というのは非常に珍しいと思います。
主催者の嬉野温泉旅館・和多屋別荘ですが、お茶と本を愉しむための書店「BOOKS&TEA 三服(さんぷく)」を館内に開業し、その関連で公募開催になったのかなと思います。
大賞受賞者には「ライターインレジデンスの権利と賞金10万円を進呈。和多屋別荘に宿泊し、三服で執筆活動を行う権利が1年間得られるなど和多屋別荘があなたの執筆活動を全面的に応援します」とあり、かなりの好待遇です。
制限枚数は原稿用紙換算5枚以内、応募締切は令和5年3月19日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:掌編
テーマ :温泉、お茶、うつわ、日本酒、旅、読むこと、書くこと
大  賞:賞金10万円・ライターインレジデンス権「三服作家」
制限文字数:2000字以内
応募締切:令和5年3月19日
応募方法:主催者HP、郵送、持参
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【書評】髙橋洋一『「年金問題」は嘘ばかり』 [書評]

世間に氾濫する年金問題のウソをバッサリと切る本です。


「年金問題」は嘘ばかり ダマされて損をしないための必須知識 (PHP新書)

「年金問題」は嘘ばかり ダマされて損をしないための必須知識 (PHP新書)

  • 作者: 高橋 洋一
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: Kindle版



前半で年金未納率4割の話がでてきます。
この4割というのは、実は「納付が免除されているひとたち」も含めた数字であり、通常のひとが想像する「納付の義務があるのに納付していないひと」はわずか3%です。
すっかり騙されていました。マスコミは恐ろしいです。
著者は元大蔵官僚として年金にも関わったことがるだけに詳しいです。
年金の本質は保険であること、税負担をするにも税理論から所得税で対応すべきことを説いていきます。
その関係で、世界的な流れである法人税減税にも触れられています。
完全に安心とまではいきませんが、少しすっきりしました。

年金についてより知りしたいひとのために!
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【SS】齊藤想『彷徨う公園』 [自作ショートショート]

Yomeba!第19回ショートショート募集に応募した作品その2です。
テーマは「ゲーム」でした。

―――――

『彷徨う公園』 齊藤 想

 この公園は、カタツムリのようにゆっくりと動く。子供たちの間で、どちら側に動くのかを予想するゲームのネタになっているぐらいだ。
「これ以上、ぼくの家に寄られたら困るなあ」
 そうぼやくのはタカシだ。なにせ自宅が公園にすり寄られ、いまや駐車場が浸食されている。そのおかげでタカシのお父さんは車を諦め、原付バイクでの通勤を余儀なくされている。そろそろ公園が回れ右をしてくれないと、家が飲み込まれてしまうかもしれない。
「もうすぐ公園デビューできるじゃん」
 そう茶化すのは、ヒロユキだ。
「縁起でもないこと言わないでくれよ。お母さんは”家のローンがまだ二十五年も残っているのに”と、毎日ため息をついて家の中はお通夜状態だし、最後は神頼みしかないと二人でお百度詣りに駆けずり回るし、おれのことなんて完全にほったらかしだし」
「神頼みで助かるなら、だれも苦労しないって。まさに、溺れる者はワラをも、というヤツだな」
「タカシは他人事だからそう言えるけど、うちはシャレになってないから」
「そうムキになるなって。いざとなったら、タカシぐらいウチに泊められるから」
「ヒロユキの家なんて、こっちからお断りだ!」
 学校帰り、タカシとヒロユキは公園に立ち寄った。タカシはほっとした。少しだけ公園がタカシの家から遠ざかっている。タカシの家の庭はわずかに広くなり、いまなら軽自動車なら止められそうだ。両親も喜ぶだろう。
 ヒロユキがつまらなそうに、舌打ちをする。
「いやあ、残念だなあ。あの毛虫の巣窟のような木がタカシの部屋にめり込み、家の中で毛虫軍団と格闘することを期待していたのに」
「友人として、喜ぶところじゃないのかよ」
「ブランコが食い込んだら、ブランコを独り占めできるぜ」
「こっちから願い下げだ」
「滑り台が入り込んだら……」
「もういいから。なんで、素直に喜んでくれないんだよ」
「そんなもん、喜べねえからに決まっているじゃないか。あの家を見てみろよ」
 ヒロユキは公園の反対側にある古い家を指した。そこには老夫婦が住んでいる。老夫婦は窓ガラス越しに近づく公園を見て、不安そうな表情を浮かべている。
「さっきから話を聞いているとなあ、タカシは自分だけ助かれば良いという気持ちがミエミエなんだよ。あの老夫婦がかわいそうに思わないのかよ。ここは公園様にぜひともウチの家を飲み込んでくれとお願いをしてだな……」
「バカなこと言うよな。オレが路頭に迷ってもいいと思うのかよ」
「あの老夫婦がホームレスになるよりなるよりマシだろうが」
「そう思うなら、ヒロユキがあの老夫婦を助けろよ。我が家にはそんな余裕はないから」
「タカシは相変わらず鈍いし頭が固いなあ。オレが言いたのは、この公園を動かないように固定すればいじゃないか。そうすれば一件落着。みんなハッピー。そう思わないか」
 タカシは呆れた。あまりに荒唐無稽すぎる。ヒロユキは楽観的というか、なんというか。
「バカなことをいうなよ。大人たちがたくさんやってきて、いろいろ試して、調査して、その上で原因不明で諦めた公園だぜ。子供たちだけで、できるわけないだろ」
「最初から決めつけるなよ」
 ヒロユキの声が急に大きくなった。
「やれることは、試すんだよ。ゲームだって、いろいろと試すと、思わぬ発見があるじゃないか。フォートナイトで天井をすり抜けられたり、マリオカートでコース外を突っきれたり、ファミスタでフェンスに穴が開いていたり」
「それはゲームのバグだ。それに最後の例えがマニアックすぎる」
「例えの話はどうでもいい。とにかく、オレは戦う前から尻尾を巻いて逃げ出すのが大っ嫌いなんだよ」
 そういうと、ヒロシはランドセルから犬用の首輪とロープを持ってきた。それを近くの電柱に括り付けた。次にスコップで穴を掘り始めて棒を突き刺した。この棒で公園を固定するつもりらしいが、こんな程度で公園の動きが止められわけがない。
「ほら、お前も手伝えって。あの老夫婦が可哀そうに思わないのか」
 タカシのためにじゃないのかよ、とぼやきながらタカシは自宅からシャベルを持ってきた。公園の赤土に突き刺し、足に力を込める。
「試しに公園の外側をぐるりと掘ってみないか」
「なんで?」
「もし、掘られたことで公園が痛みを感じるなら、縮こまって小さくなるかもしれない。そのまま消滅したりして」
「そんなバカな」
「上手くいかなかったら、また別の手段を試せばいい。これはゲームなんだ。何度もトライ&エラーをくり返して、少しづつ上達して、最後にはゴールにたどり着く。努力は必ず報われる」
「ゲームならそうかもしれないけど」
「現実世界だって、同じだよ」
 そうかもしれない、とタカシは思った。少なくとも、神頼みよりは前向きな気がする。
「首輪と杭作戦が失敗したらどうするよ」
「それは、そのとき考えればいいさ。次は公園が生きていると仮定して、殺虫剤でも撒いてみるか」
「そんなんで効くかなあ」
「殺虫剤でダメなら農薬だ。農薬でもダメなら、煮えたぎった油だ。穴を掘って、公園の奥の奥に注ぎ込み、こいつの息の根を止めてやるんだ」
 ヒロユキは汗を流しながら、一心不乱にスコップを公園に突き刺す。噂では、ヒロシの家も公園に踏み潰されたという。それでやむなくこの町に引っ越してきたらしい。だから、この公園のことを骨の髄から恨んでいるのだろう。
「いつか、こいつを倒してやる。こんなヤツに負けてたまるか」
 ヒロユキは狂ったように、掘った穴に棒を差し込む。
 そうだな、と答えながらタカシは思った。ゲームなら必ず正解がある。どんな強敵にも弱点があり、正しい手順を踏み、弱点を突けば倒せる。だが、リアル世界に正解があるとは限らない。むしろ、正解がある問題こそ珍しい。きっと、何をやっても、この公園は止まらない。
 それでも、ぼくたちは希望を失ってはならないのだろう。現実というゲームにも、必ず正解があると信じて。

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【SS】齊藤想『父と猫耳とレオタード』 [自作ショートショート]

第14回小説でもどうぞに応募した作品その2です。
テーマは「あの日」でした。

―――――

『父と猫耳とレオタード』 齊藤 想

 大学受験を控えた高校三年の秋に、博嗣は父の秘密を見てしまった。
 電気系統のトラブルで高校が臨時休校となり、不意に帰宅すると、父の書斎からアニメ主題歌のような音楽が流れている。
 父はベテラン社会保険労務士として出勤中だ。音楽の消し忘れだろう。父にもこんな趣味があったのか。そう思いながら書斎のドアを開けると、なぜかそこに、猫耳とレオタードを装着して、ノリノリで踊っている父の姿があった。
「みんな元気! いつも元気な向日葵アイちゃんだよ!」
 父は高校野球で鍛えた野性味あふれる声で、カメラに向かって呼びかける。
 向日葵アイのこと博嗣も知っている。それどころか、新規動画がアップされるたびになけなしのバイト代を投げ銭してきた熱烈なファンだ。
 その向日葵アイの正体が、五十代バツイチのわが父だなんて。
 父の書斎では、筋骨隆々で、男性ホルモン過剰な父が、仁王像のような相貌で踊っている。ところが、パソコンを通しただけで、モニターではアニメ顔・アニメ声の超絶美少女が楽しそうに笑顔を振りまいている。
 現代技術は恐ろしい。
 ふと画面を見ると、向日葵アイの背後に、もうひとりの美少女が立っている。油断して、博嗣もカメラに入ってしまったらしい。
 慌てて下がる前に、異変を察知した父が鬼のような形相で振り返った。だが、すぐに営業用スマイルで向き直る。
「あ、ごめんね。妹の向日葵ユメちゃんが画面に入っちゃった。配信中はダメだよと言っているのにね。テへ」
 なにがテへだが。
 博嗣は、そっと書斎の扉を閉めた。

 父と昼食をとるのは何年振りだろうか。父は慣れた手つきでスパゲッティーをゆでると、ホイールトマトとひき肉でお手製のミートソースを作ってくれた。
 仕上げにパルメザンチーズとハーブも添えられている。
 いつもは店屋物で済ませている父の意外な姿に困惑していたが、しばらくするとまじめな顔で博嗣に語り掛けてきた。
「見られてしまったのなら仕方がない。実はな……」
 父はスパゲッティーを丸めていたフォークを休めた。
「半年前に会社をやめて、独立したんだ。いわば、ユーチューバー系社会保険労務士といったところかな」
 博嗣は困惑の表情を浮かべた。”ユーチューバー系保険労務士”というワードが理解できない。だいたい、猫耳とレオタードを装着して踊っている社会保険労務士が存在していいものだろうか。
「博嗣が怪訝な顔をするの分かる。だが、いまはテレワークが浸透し、自宅にいながら仕事ができる時代なんだ」
 動画配信がテレワーク……まあ、それはいいとして、そもそもオヤジが働いてきたのは身内で固めた親族会社だ。なぜ、オヤジだけ独立したのだろうか。
「親戚だからこそ、自ら身を引かなければならないことがある」
 だから社内は全員親戚だって。ようするにクビになったのね。
「いままで黙っていて悪かったが、博嗣に告白しなければならないことがある」
 父はやっと本題に入るらしい。博嗣は背筋を伸ばした。
「苦し紛れに博嗣のことを妹と紹介したら大好評でなあ。次回配信時に共演することが決まった。おめでとう」
 博嗣は椅子から転がり落ちそうになった。話の方向性が絶対に違う。
 しかも、父は「博嗣がこの仕事を継ぐまで、チャンネルを守り続けてみせる」と妙な決意までしてきた。
 老舗商店ではあるまいし。
 少しの沈黙があった。父は食後のコーヒーをひとくち含むと、博嗣に聞こえるようにつぶやいた。
「大学進学にはお金がかかるよなあ」
 このひとことで、博嗣は陥落した。

「こんにちわ。向日葵ユメちゃんだよ。みんな元気、ヒューヒュー」
 これは一時期の迷いだ。大学を卒業して就職するまでの辛抱だ。社会人になったら過去は封印して、消し去ればいい。
 画面越しに、多くのファンが博嗣のことを見つめている。投げ銭がたまっていく。
 しかし、社会人になったとき、この快感を忘れられるのだろうか。
 博嗣には、その自信がなかった。


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【SS】齊藤想『喪失』 [自作ショートショート]

第14回小説でもどうぞに応募した作品です。
テーマは「忘却」で、ありがたいことに選外佳作に選ばれました。

〔小説でもどうぞ(第14回)〕
https://www.koubo.co.jp/reading/rensai/oubo/douzo/douzo14.html

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『喪失』 齊藤 想

 最近、人の名前が覚えられない。テレビに出演しているタレントなんて、次の日には完全に忘れている。
 定年後の暇を持て余して、妻にそう話しかけると、妻は慰めるどころか、やんわりと追い打ちをかけてきた。
「貴方が忘れているのは、人の名前だけではありませんよ。例えば、昨日の晩御飯は何を食べたかのかしら?」
 自分は記憶を探った。トンカツを食べた気もするし、煮物だったような気もする。自分は恥ずかしそうに、後頭部をかき回した。
「いつも意識していないからなあ。これは参った」
 冗談でごまかそうとしたが、妻の目は冷たかった。
「意識していないのではなく、興味がないのです。それでは、昨日は何色のシャツを着ていましたか?」
 シャツの色は限られている。青か白だ。二分の一なら当たるだろう。
「これは分かる。青色だ」
「違います。ダボっとした黄色いトレーナーです」
「なんだそれ、ひっかけ問題か」
「覚えていないから、騙されるのです」
 妻はすまし顔で言う。ぐうの音も出ない。
「そもそも、貴方は生活のこと全てについて無関心でした。いつも仕事、仕事で、家庭のことは全部私に押し付けて」
「悪かった、いままで支えてきてくれたことは感謝している。だから定年後は少しでも家事を手伝ってなあ……」
「いまさら遅いです。四十年間にも及ぶ私の苦労を忘れているから、そんなのんきなことを口にできるのです。息子が肺炎になったとき、貴方は何をしてくれましたか? 娘が子宮内膜症になったとき、病院に駆けつけてくれましたか?」
 自分は黙るしかなかった。なにしろ、ふたつとも覚えていない。
「これ以上、貴方を責めても無駄ですわ。呆れて物も言えません。それでは、最後の質問にしましょう。私の名前は?」
「おいおい、いい加減にしろよ。長年寄り添ってきた妻の名前を忘れるわけがないじゃないか」
「いいから答えてください」
 妻の目が自分を射すくめる。背中に冷汗が流れる。まさか、そんなはずはない。
「恵里佳だ」
「残念。それは先ほどまで貴方が見ていたテレビに出ていたタレントの名前です」
 自分は完全に打ちひしがれた。これは病気だ。脳の異常だ。早く病院にいかなくては。
 じゃあこれで、と立ち上がろうとした妻を自分は引き留めた。
「ちょっと待ってくれ。それなら、お前はおれのことをどれだけ覚えているんだ。おれが務めてきた会社名と、役職名は」
「知りません。興味がありませんから」
「いままで住んできた社宅の名前は」
「覚える必要はありません。大事なのは、子供たちが通う学校と担任の先生の名前です」
「いままで給料を振り込んできた銀行と支店名は?」
「いまは使ってませんから」
 自分はぶぜんとした。
「なんだよ、全然覚えていないじゃないか」
「貴方と一緒にしないでください」
「じゃあ、おれからも最後の質問だ。お前に送った初めての誕生日プレゼントは」
 少しの間があった。
「小さなロケット型のペンダントです」
 自分は驚いた。四十年前のことなのに、覚えていたなんて。
「だって、嬉しかったですから。貴方がまだ貧乏だったのに、背伸びしちゃって」
 そうそう、あのころは貧乏で、給料日前はいつもパンとお米だけで過ごして、それでも毎日が楽しくて。
「そんな時代もあったなあ」
「細かいことは忘れてしまいましたけどね」
 ああ、そうだ。人間は忘れる生き物だ。夫婦でどんどん忘れて、老人ホームで世捨て人のように過ごすようになり、共通の思い出は四十年前のペンダントだけ。
 楽しいことも苦しいことも、全て時代の彼方に消え去った。だからこそ、心穏やかに過ごせるのかもしれない。
 老人ホームのスタッフが近づいてきた。笑顔で二人に声をかけきた。
「松下さんと青柳さんは仲良しですね。まるで本当の夫婦みたいに」
 ああ、と自分は答える。妻と思っていた女性も、首を縦に動かす。胸元のペンダントが揺れる。
 そうか、違ったか。けど、きっと明日にはすべて忘れて、同じ会話を繰り返す。
 それでいいのだ。それが幸せなのだから。

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