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【映画】バンブルビー [映画評]

練りこまれたプロットに、織り込まれた人間ドラマ。隠れた傑作です。


バンブルビー [Blu-ray]

バンブルビー [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント
  • 発売日: 2020/02/27
  • メディア: Blu-ray



トランスフォーマーシリーズの主要キャラ、バンブルビーをメインにしたスピンオフ映画です。
監督もマイケル・ベイではなく、アニメーターとして活躍してきたトラヴィス・ナイトです。
ちなみにトラヴィス・ナイトの父はナイキの創業者とのこと。
さて物語ですが、設定は1980年代です。
サイバトロンから脱出したオートボットですが、バンブルビー(当時の名前はB‐127)はオプティマスから地球で隠れて、時を待つよう指示されます。
ですが、ディセプコンに追いつかれて負傷し、命は助かったものの重傷を負い、記憶を失います。
アメリカの田舎町。
そこに住む少女は家庭に問題を抱えています。元々は有望な高飛び込みの選手でしたが、父を失い、再婚後の義父や母とは感情のすれ違いが生じ、少女は家庭で孤立しています。
遊園地でアルバイトしていますが、失敗続きで、少しいいところのリア充たちに馬鹿にされます。
少女の趣味は機械いじりですが、故障車のエンジンを直すことができず、こちらも行き詰ります。
少女は誕生日に両親から意に沿わないプレゼントを両親から渡された後、行きつけの修理工場から中古のビートルを手に入れます。
このビートルが、バンブルビーです。
少女はバンブルビーを直しますが、バンブルビーも記憶を失い、孤独で、お互いに共通項が多いことに気が付きます。
そして、二人は人間とロボットという関係を超えて、急速に仲を深めていきます。となりにすむ黒人青年は少女に好意を持っていますが、バンブルビーの秘密を共有することで、こちらも仲を深めていきます。
バンブルビーと黒人青年という仲間ができたことで、少女は明るさを取り戻し、前向きになっていきます。
しかし、ディセプコンがバンブルビーが発した信号をキャッチし、危機が急速に迫っていきます。
ディセプコンは軍隊の協力を得ることで、バンブルビーの居場所を突き止め……という感じで話が進んでいきます。
いやもう、人間ドラマがいいんですよ。
主軸として、少女が尊厳を回復するストーリーがあります。
それと頭髪を揶揄されている黒人青年との恋があります。
すれ違い続けた家族についても、お互いに不器用なだけで愛し合っていることに気が付き、和解します。
バンブルビーを狙っていた兵士も、共通の敵に気が付いた後は味方となり、最後は勇敢な戦士としてバンブルビーに尊敬の念を送ります。
前半に様々な伏線が撒かれていますが、少女がバンブルビーを奪回するためにバイクに乗るというワンシーンをミッドポイントとして、一気に回収へと向かっていきます。
ひたすら隠れていたバンブルビーも、戦うために立ち上がります。
アクションシーンもマイケル・ベイ監督みたいな派手さはありませんが、変身が自由自在という長所を逆手に取った作戦など、十分に堪能させてくれます。
むしろ、こちらのほうが大人向けで良いです。
そして、ラスト近くで「少女が高飛び込みの元選手」という設定の意味も分かります。そして、ガレージに置いてある廃車の真の意味も。
後半では何度も感動してしまいました。
そして、映画を彩る80年代のヒット曲にも、耳を奪われます。

とにかくいい映画を見たいひとのために!
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第72期ALSOK王将戦第2局(藤井聡太王将VS羽生善治九段) [将棋]

藤井王将の先勝で迎えた第2局です。

〔中継サイト〕
https://mainichi.jp/oshosen2023

将棋界で最も過酷なリーグと言われる王将戦挑戦者決定戦を、羽生九段は6戦全勝で駆け抜けました。
リーグ定員が7人になった1982年以降だとわずか7回目で、もちろん52歳での達成者は最高齢記録です。ちなみに2番目の最高齢も羽生善治で、43歳のときに達成しています。
また全勝を複数回達成したのは、羽生善治と佐藤康光の2名だけです。
記録尽くしのリーグ戦となりました。
中村太地七段がYoutubeで羽生九段復活の理由を解説していました。
若手が研究を重ねる戦型を避けるのと同時に、評価値は不利でも対戦相手が正解手を探すのが難しい局面に誘導しているのがポイントではないか、とのことです。
具体的には先手有利といわれてプロ間の採用数の少ない後手横歩取りを採用し、カオスな局面から地力で逆転していく指し方です。
羽生善治は歩く記録といった感じで、タイトル獲得99期も歴代1位ですし、通算勝利数も歴代1位です。
ひとつ勝つたびに、記録を伸ばしていきます。
さあ羽生九段は若き王者相手に、さらに記録を伸ばすことはできるでしょうか!

〔棋譜〕
https://mainichi.jp/oshosen2023/230121.html

ということで、将棋です。
先手は羽生九段で相掛かりに進みますが、前例は今期A級順位戦という最新形へと進みます。
38手目で前例から外れますが、羽生九段は即座に端歩をついたのでおそらく研究かと思います。
その後はお互いに考慮時間を挟みながらの指し手になります。
羽生九段は棋風通りに攻めますが、細いながらも8二金とそっぽに打ち込んだのがすごい手で、それに対する藤井王将の人間らしいバランス型の4二玉がAIの評価では疑問手だったようです。
評価値は先手に振れますが、人間的にはここからのねじりあいです。勝負所なのか、お互いに長考が続きます。
これぞタイトル戦という感じがします。
細かい折衝で局面が互角に戻った後、藤井竜王が85分の長考で7七銀打とねじ込み、ぐいぐいと踏み込んでいきます。
いままで守勢に立たされていただけに、待望の反撃です。
評価値は急に先手に振れますが、一手間違えると先手玉が詰むというまさにギリギリの戦いです。
羽生九段は75分の長考のすえに同金と最善手で返します。さらに藤井竜王の35分7二飛車に、41分4六歩とこれまた最善手でしのぎます。
最後の難関である81手目も、21分6九銀で間違えません。
以降は目だった考慮もなく進んだので、お互いに読み切っていたのだと思います。
藤井竜王の攻めはあと一歩届かず、攻めたことで受けが効かくなった藤井竜王は101手まで投了しました。
52歳の挑戦者が20歳の5冠王からタイトル戦で勝利をもぎ取る記録に残る1勝になったと思います。
王将戦はこれで1勝1敗のタイです。

第3局は、1月28日(土)、29日(日)に石川県金沢市「東急金沢ホテル」で開催されます!
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第49期岡田美術館杯女流名人戦第2局(伊藤沙恵女流名人VS西山朋佳女流二冠) [将棋]

西山女流二冠の先勝で迎えた第2局です。

〔中継サイト〕
http://live.shogi.or.jp/joryumeijin/

女流名人戦とは関係のない話ですが、1月10日に行われたC級1組順位戦で、日浦八段がマスクから鼻を出し、注意されても従わなかったため反則負けとなる事件がありました。
臨時対局規定に基づいた裁定ですが、とても残念です。しかも日浦八段は裁判に訴えると宣言しています。
このマスク規定ですが、元々、日浦八段のために作られたという経緯があるようです。
日浦八段は反マスク派として有名で、マスク着用を拒否していたことから、棋士総会の決議を得てこの規定が作られたと聞いています。
このマスク規定ですが、細部が詰められていないため運用があいまいです。そもそも「鼻を出していたら違反」とはどこにも書かれていません。
将棋界は基本的に性善説で運営されている上に棋士は法律の素人なので、細部が詰め切れないのはやむを得ない部分があります。
マスク規定を見直すというより、運営を棋士のみで行うのは、無理な時代になっていると感じます。
特に裁判沙汰にまでなってしまいますと、よりその思いが強くなります。そもそも現役プレイヤーと役員を兼務するのは、本業への影響が大きすぎます。
もう運営方法を見直す時期ではないかと思います。

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/joryumeijin/kifu/49/joryumeijin202301220101.html

ということで、将棋です。
先手は西山女流二冠です。
いつものように対抗形になりますが、後手の伊藤女流名人がじっくりと銀冠穴熊に組んだのに対して、西山女流二冠は地下鉄飛車から後手の玉頭を直接攻める構えです。
評価値は先手少し有利ですが、実戦的には後手が勝ちやすそうです。
玉頭戦となりますが、西山女流二冠の1六銀がやや疑問手だったようで、先手の攻めが細くなります。
しかし剛腕の西山女流二冠は、いろいろと嫌味を付け、金銀がバラバラになりながらも攻めをつなぎます。
最後は豪快にただの位置に飛車を打ち付け、これが決めてとなり、伊藤女流名人は投了しました。
途中は有望な局面があっただけに、ひときわ悔しい1局だったかと思います。

これで西山女流二冠が2連勝と、女流名人まであと1勝となりました。第3局は、2月5日(日)に千葉県野田市「関根名人記念館」で行われます!
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