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【書評】林香里『メディア不信~何が問われているのか~』 [書評]

世間をにぎわしているメディア不信についてです。


メディア不信――何が問われているのか (岩波新書)

メディア不信――何が問われているのか (岩波新書)

  • 作者: 林 香里
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/11/22
  • メディア: 新書



まず最初にドイツ、イギリス、アメリカ、日本のメディア状況を俯瞰します。
その上で、SNS、さらには著者が不安視するポピュリズムによって健全な言論空間が危機を迎えつつあることに憂慮を表明しています。
この手の本で難しいのは、どうしても著者の価値判断が入り込んでしまうことです。
何が健全で、何が不健全なのか。
何がポピュリズムで、何がポピュリズムではないのか。
何が公平で、何が不公平なのか。
そうしたことに注意しながら読み進めると、ヒントがいろいろ転がっています。
個人的には大規模感情伝染実験に興味が湧いたりして。

メディアについて考えたいひとのために!

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第12期マイナビ女子オープン第1局(西山朋佳女王VS里見香奈女流四冠) [将棋]

里見香奈がマイナビ女子オープンに戻ってきました。

【中継サイト】
https://book.mynavi.jp/shogi/mynavi-open/

里見女流四冠が女王を手放したのは2014年です。
休場をはさんで2016年は2回戦で清水市代に、2017年は決勝で上田初美に、2019年は準決勝で西山朋佳に敗れています。
普通の女流棋士であれば4年ぶりというのは短いスパンですが、圧倒的な戦績を誇る里見女流四冠だけに”久しぶり”という感じがします。
両者の対戦は過去4回しかありません。
西山女王1勝、里見女流四冠3勝とやや里見女流四冠が推していますが、まだまだ差がつくといったレベルではありません。
さあ、両雄の5番勝負はどのような展開になるでしょうか!

【棋譜】
https://book.mynavi.jp/shogi/mynavi-open/result/12/mynavi201904090101.html

ということで将棋です。
振り飛車同士の両者ですが、予想された戦形のひとつ、相振り飛車となりました。
序盤は後手の里見香女流四冠が7筋を謝らずにつっぱり、陣形をバランス良く盛り上げます。
戦いは西山玉の反対側の端から。
陣形の差でわずかに有利だった後手をゆさぶるように西山女王から仕掛けていきますが、その差をたもったままお互いに切りあっていきます。
先に火がついたのは先手玉でしたが、勝負士である西山女王は次々と勝負手を連発していきます。
評価値がもっとも差がついたのは、113手目の先手6五飛車です。
それが一気に逆転したのは118手目の5八馬でした。
自玉は凌げていると見て先手玉に詰めろをかけたのですが、危険でした。コンピューターによると、5七桂成と退路を空けるのが良かったようです。
最終盤は詰め将棋のような手順が実現し、西山女王の逆転勝ちです。

これで女王が先勝したことで、シリーズは俄然面白くなってきました。
第2局は4月22日(月)東京都港区「明治記念館」で行われます!

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【公募情報】JA長野県おいしい川柳募集 [公募情報]

2ヶ月に1回のペースで募集があります。

【主催者HP】
https://www.iijan.or.jp/senryu/entry/

テーマは毎回長野県の特産品ですが、今回は「あんず」です。
長野県はフルーツで有名ですが、千曲市はあんずの名産地であることをはじめて知りました。
公募を通じていろいろと地域のことを知ることができるのは、ひとつの効用かも知れません。
応募締切は2019年5月31日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:川柳
テーマ :長野県のあんず
信州大賞:長野県産農畜産物
応募方法:インターネット、はがき
応募締切:2019年5月31日

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【書評】スティーヴン・ウィット『誰が音楽をタダにした?』 [書評]

mp3の登場によって、音楽が実質的に無料となってしまうまでのドキュメンタリーです。


誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/25
  • メディア: Kindle版



本書は3本の軸によって書かれています。
まずはmp3を開発する技術者たち。最初は良さを認めてもらえずというより、既成権益の妨害により敗北を重ねます。
しかし、不法に音楽をネットに流す海賊たちの登場により、一気に標準フォーマットにのし上がり、開発者は大もうけをします。

次に音楽業界たち。
あるドンの半生を語ることで音楽業界の浮沈が表現されます。人気アーティストの激しい囲い込みや、売れる音楽を求めて熾烈な争いが繰り広げれれます。
業界は太る一方ですが、海賊の登場により、CDの売りは激減し、対策を求められます。

最後に海賊たち。
彼らは新譜を発売前に聞くというだけの見返りのために、mp3を使ってただひたすら不法にデータをアップしていきます。
しかも、驚くことに、多くのデータがあるCD工場の一従業員によって流出していました。

この3本の軸が合わさり、最後に音楽業界が発見した解決策とは……
といったドキュメンタリーです。
ミステリ仕立てで実に面白いです。
ドキュメンタリーが苦手なひとにもオススメしたい本です。

音楽業界の裏側を知りたいひとのために!
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第4期叡王戦第1局(高見泰地叡王VS永瀬拓矢七段) [講座・セミナーの紹介]

いよいよ初の防衛戦です。

【中継サイト】
http://www.eiou.jp/

ドワンゴ主催の叡王戦ですが、第1局の舞台はなんと海外です。海外でタイトル戦を開催するのは2014年の竜王戦以来です。
会場は台湾の圓山大飯店です。ちなみに中国語で飯店(ディエン)はホテルのことです。
台湾は囲碁が盛んですが、将棋に類するゲームとしてチャンシーも指されています。
囲碁はどもでも囲碁ですが、将棋はバラエティに飛んでいます。
ヨーロッパではチェスであり、中国、台湾ではチャンシー。インドはチャトラガで、タイにも独特の将棋があります。
世界各国に独自の将棋があることが、日本将棋普及の壁になっているように思います。
いつか大々的に日本将棋の世界大会が開催されたらよいですが、海外対局がその一助になることを願っています。

【棋譜】
http://www.eiou.jp/kifu_player/20190406-1.html

ということで将棋です。
先手は永瀬七段で角換わりへと進みます。
用意の作戦かどうかは分かりませんが、永瀬七段は主流の腰掛銀ではなく早繰り銀を採用します。
中盤攻め立てますが、持ち歩がないため小技が利きません。
攻めがひと段落したところで、高見叡王が即座に反撃します。
歩の頭に銀を露骨に打ち込み、銀で金をむしりとって78手目に8七歩成りとします。
このと金を取れないようでは後手の攻めが決まってしまいますが、取りきれず、永瀬七段は玉を中段に逃がします。
評価値は後手側に大きく振れ、ついには2000点を超えます。
後手勝勢です。
コンピューターによれば、先手陣に飛車を打ち込み上下挟み撃ちにするのが良かったようですが、高見叡王は先手玉を頭から押さえにかかります。
この当たりから評価値が急接近します。
先手玉を追いながら銀を取ったものの王手金取りをかけられて怪しくなり、その次の飛車打ちも良くなかったのかついに逆転します。
2200点からわずか10手。まさに急転直下です。
その後も後手は先手玉を追いかけますが届かず、後手玉を即詰みに討ち取られて無念の投了となりました。
高見叡王は終盤の妖術で次々と逆転をものにしてきただけに、悔しい1敗だと思います。

叡王戦第2局は、平成31年4月13日(土)、北海道・北こぶし知床ホテル&リゾー
トで開催されます!
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創作状況【4月上旬】 [ぼくの公募状況]

働き方改革がスタートです。

【サイトーメルマガ第135回の内容紹介】
◆創作に役に立つ書籍紹介(第14回)阿辻哲郎『タブーの漢字学』
◆TO-BE小説工房に挑戦中(第48回)
◆公募情報6点
 今月は純粋に興味深い本を紹介します。
 メルマガ登録はこちらから。もちろん無料です!
 http://www.arasuji.com/saitomagazine.html

【海外用SF】
久しぶりにSFショートショートを書くが、勝手がわからず悪戦苦闘。
余裕で5枚を超える。短くする手法はあるのだが、ただ、うまくはまる設定の組み合わせが見つからない。
アイデアの取捨選択の問題ではあるのだが。

【TO-BE小説工房】
今月投稿のテーマは「戦争」です。
たまたまテーマにピッタリそう過去作品があるので、それをそのまま投稿します。
かなりブラックですが、個人的にはお気に入り。

【星新一賞】
メモ的なアイデアがたまっているので、そのうちひとつを使おうと思っている。
少しだけイメージしたけど、昔調べたことはすっかり忘れたので、まあ、改めて本を借りてみようなかなあと思いつつ。
けど、なんかピンとこないんだよなあ。

【創元SF短編賞】
4月以降仕事が楽になりそうなので(泊まりや休日出勤は無くなりそうなので)、本格的に考えたい。

【北区内田康夫ミステリー文学賞】
倒叙式にしようと思っている。自分なりにハードルを上げるために、いろいろと条件を付けたところ、どうにもこうにもまとまらず。
と思っていたら、過去アイデアで使えそうなネタを発見。これを組み合わせれば何とかなるかも。

【福島正実SF童話賞】
本当はSF童話賞に合いそうなネタがあるのだが、あえてマニアックなネタに走ります。
というか、本質的に調べて書くのが好きな人間なので。
まずは1冊目に取り組み、近々2冊目に入ります。
最初はイメージを広げて、次に細部に取り掛かるといいますか。

【ゆきのまち幻想文学賞】
今年は落選したので、また来年です。はい。

【ミステリーズ!】
そのうち書き溜めます。

【FACEBOOK】
友達募集中です!
https://www.facebook.com/profile.php?id=100007879718530
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最近の日常【平成31年4月上旬】 [日常]

〔次男のソフトボール部の卒部式でほろりとした話〕
次男のソフトボール部の卒部式があった。
獲得したトロフィーや賞状を6年生で分け合ったのだが、次男は「競争相手がいないから」という理由で市内大会のトロフィーと賞状をもらっていた。
せっかくなら県大会優勝とか、市外大会優勝のトロフィーを狙って欲しかったのだが。
監督はもうすぐ75歳になる。監督のスピーチの番になり、自分の年齢について少し触れたあとで、こんなことを話し始めた。
「君たちが日々成長するのが嬉しくて、成長を見るのが生きがいだった。明日から君たちは切り替えて、新しい目標に向って進んでいって欲しい。けど、ぼくは切り替えられない。ずっと君たちのことを、想い続けるだろう」
 いつもは話の長い監督が、苦言ばかりの監督が、本当に短く、これだけでスピーチを終えた。
 卒部式が終わると、監督はそそくさと帰っていた。本当に別れが辛かったのだろう。
 こんな姿を見せられると、どうしても、ほろりとしてしまう。
 この世代の一員でいられた次男は、本当に幸せだったと思う。

〔次男の卒業式当日にDVDが配られた話〕
次男の卒業式当日に、担任の先生が2年間の思い出を詰め込んだDVDをみんなに配布した。
たぶんパワーポイントで作成したデータを動画変換したものだろう。
DVDプレイヤーでは見ることができないけど、PCなら見ることができる。
冒頭に5年の春と6年秋の姿が並べたシーンがあり、2年間でこんなに成長すしたんだなあと、しみじみ感じました。
クラスの行事やら、学校のイベントやらの写真や動画がたくさんあり、少し驚いた。
学校内でいろいろな撮影をする、という感覚がなかったので。
手の込んだ動画を作ってくれるぐらいなので、先生にとってかなり思い入れのあるクラスだったのだろう。
こうして子供たちに思い入れをもってくれるのは、本当にありがたいことです。
感謝、感謝。
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【公募情報】ラサーナ生誕40周年キャッチコピー募集 [公募情報]

ラサーナとは海藻から生まれたヘアケアブランドです。

【主催者HP】
https://www.lasana.net/lasana40th/campaign02/

それほど有名なブランドではありませんが、主催者HPに40年の歴史をたどる動画が置いてあります。
聖子ちゃんカットに始まり、ガングロメイクの時代もあったなあとか、いろいろと思い出します。
流行は不思議だなあと思います。
ラサーナ愛好者はぜひともチャレンジしてみてください!

<募集要項抜粋>
募集内容:キャッチコピー
テーマ :ラサーナ商品
最優秀賞:JTB選べるギフト10万円
応募方法:インターネット
応募締切:2019年5月31日

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【書評】アン・ファウスト-スターリング『セックス/ジェンダー』 [書評]

生物的な性と、自己同一性としての性を捉えなおします。


セックス/ジェンダー―性分化をとらえ直す

セックス/ジェンダー―性分化をとらえ直す

  • 作者: アン ファウスト‐スターリング
  • 出版社/メーカー: 世織書房
  • 発売日: 2018/09/01
  • メディア: 単行本



著者は正直な研究者だと思います。
性について様々な観点が並列的に記述されています。多様な研究結果を引用しながらも、安易に結論に飛びつくのを避けています。
学術的に正確なのかもしれませんが、その結果として、読み取りにくく、一般人には難解になってしまっているかもしれません。
全体を通して読めば、著者の主張はだいたい把握できます。
この本についてさらに理解するには、性について大きな議論を巻き起こしたジョン・マネーとミルトン・ダイヤモンドについて事前知識が必要だと思われます。
一般書というより、ジェンダーについて勉強している学生が、さらに多様な議論を知るために手に取る本だと思います。
翻訳者は大変だったと思います。

より深く勉強したいひとのために!

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【掌編】齊藤想『空の夢』 [自作ショートショート]

TO-BE小説工房(第48回)に応募した作品です。
テーマは「空」でした。

―――――

『空の夢』 齊藤 想

 病室の中央では、だるまストーブが煌々と炎を上げ続けていた。天板に乗せられホーロー製の薬缶が湯気を吹き、薄い窓ガラスに水滴をつける。
 水蒸気を取り込み、成長した雫が重力に負け始める。周囲の水粒を巻き込みながら体積を増し、最後は窓枠を濡らして消える。
「今日のご機嫌はいかがですか」
 安政生まれという小太りの婦長が、龍之介に声をかける。婦長の兄は彰義隊に参加し、上野の山で戦死したという。
「気分は悪くない」
 そう言うそばから、龍之介は咳き込む。口元から腐臭が漂う。匂いは日を追うごとに強くなっている。もう長くない。自分の体は自分が一番良くわかる。
「じきに良くなりますよ。人生なんてものは、息を吸って吐いてなんぼのものですから」
 龍之介は直接答えず、顔を横に向ける。暗く沈み切った空気が、空の青さを際立たせている。
 こんな日に空を飛べたら、どれだけ気持ち良いだろうか。
「今日は特に青いな」
「空気が澄んでいるのは冬だからよ。それはそうと、辰野さんが好きそうなニュースを持ってきてあげたわ」
 龍之介は婦長が持ってきた新聞を開く。そこには大きく、亜米利加国でライト兄弟が世界で初めて有人動力飛行を成功させた記事が美文調で語られていた。
「少し先を越されたわね」
 婦長は年甲斐もなく、いたずら娘のようにささやく。龍之介も世界初を友人動力飛行の実現を目指して研究を進めてきた。ところが孟宗竹の骨組みに和紙を貼って作った大羽で滑空中に墜落し、胸部を強打。さらには肺炎にも侵された。
 入院中に世界初は奪われた。龍之介は新聞を婦長に返した。
「おれの人生は無駄に終わった」
 龍之介はうっすらと東西に伸びる筋雲を見上げた。スズメが雲の筋を直角に横切り、そのまま飛び去って行く。
「死ぬようなことを口にしたらダメですよ」
「そんなことを言っても、本当に死ぬのだから仕方がない。人間いつかは死ぬ。早く死ぬか、遅く死ぬかの違いにすぎぬ」
「どこかの誰かが言ったことを真似しても、心には響きませんよ。辰野さんの仕事は一日も早く体を治すことです。そのためには、まずは体を清潔に保つことです」
 婦長はそう言いながら濡れタオルを渡してきた。龍之介はおっくうそうに顔を拭う。
「おれはねえ」と龍之介はこぼす。ついついこの婦長には本音を話したくなる。
「悔しいんだよ。世界で初めて空を飛ぶ人間になりたかった。世界史に名前を残したかった。そのために必死に研究をしてきた。それがすべて無駄になった。おれは名のない一市民として、数十年もすれば、まるで春先の雪のように消えてなくなる」
「困った坊やね」
 婦長は駄々っ子をあやすような顔になった。
「私の兄はねえ、上野で戦死したの。バカみたいでしょ? 負け戦と分かっているのに、徳川様に特段の御恩があるわけでもないのに、寛永寺に駆け込んで、なれない鉄砲を抱えて、挙句の果てに流れ弾に当たって死んだ。本当に無意味な人生だと思った
 けどねえ、そうした名のない市民の声や行動が、世の中を動かすエネルギーになったんじゃないかと、いまでは思うの。確かに兄は無駄に命を落とした。けど、兄のような馬鹿がたくさんいて、初めて時代が動いていくんだって」
「すると、おれは時代を動かす燃料みたいなものか」
「そうそう、ガソリンよ。有人動力飛行だって好事家が世界中で研究したことでそういう空気ができ、その空気の中でたまたまライト兄弟が一番最初に成功しただけ。ある意味では、ライト兄弟の成功も、辰野さんのおかげなのよ」
「しかし、直接には関係ない」
「関係なくない。空気は世界中につながっている。時代の空気は一人では作れない。まあ、辰野さんが本当に空気になるのはまだ早すぎるけどね」
 婦長はそれだけいうと、龍之介の肩に手を置き、次に室内の全員からタオルを回収して次の病室へと向かった。
 自分はこれからも空気に作り出す一員になれるのだろうか。時代を後押しする一人になれるのだろうか。
 龍之介は、それを確かめるために、もう少し生きたいと願うようになった。
―――――

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