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『宇宙葬』がカナダのオンライン雑誌に掲載されました [受賞報告・自作掲載]

『宇宙葬』がカナダのオンライン雑誌に掲載されました。


【雑誌HP:CommuterLit】
http://commuterlit.com/

【Saito Sou の紹介ページ】
http://commuterlit.com/authors-by-last-name-n-z/authors-s-t/sa-sm/saito-sou/

【作品:『Cosmic Funeral』(日本語名『宇宙葬』)】
http://commuterlit.com/2019/01/tuesday-cosmic-funeral/


翻訳者はToshiya Kamei (@kameitoshiya )さんです。
The Internet Speculative Fiction Database というサイトの編集にも参加されており、多数の翻訳を手がけておられます。
本当にありがとうございます。
英語の得意なかたは、ぜひともお読みください。日本語版とはまた別の味わいになっていると思います。

宇宙葬ですが、SFマガジンのリーダーズストーリー(いまはコーナー終了)に投稿した作品です。
いまとなってはやや懐かしいですが、こうした作品に光を当ててくれた亀井さんとCommuterLitさんには感謝です。

本当にありがとうございました!



以下、日本語版

『宇宙葬』 齊藤 想 

 ひとが死ぬと、宇宙に葬られる時代がきた。
 葬式会社は死体の体重を量ると、手際よく飛行距離を計算していった。
「お客様の体重で単独航海を希望なさるのならバルー第五惑星がおすすめです。到着するまでそれなりの時間を要しますが、途中に小惑星群もありませんし、航海の安全は保証できます。こちらがその写真です」
 未亡人は写真を見た。緑色のガスが表面を覆っている。地球上とは似ても似つかぬ環境だ。古い人間である未亡人は、まだ地面へのこだわりがある。
「主人は長いこと地球上で生活してきました。というより地上から両足を離したことがありません。だからこそ、お墓は地球でと思っているのですが」
「あることはありますが……」
 店員はパチパチとキーボードを叩いた。モニターに金額が並ぶ。平凡な老婦人が負担できるような金額ではない。地球上では墓地に適した土地はほぼ開発し尽くされ、大金持ちが少ないパイを奪い合うような状況だった。
「もし地面にこだわられるなら、天明第三惑星はいかがでしょうか。ここなら地球と環境が近いので旦那さんも安心して眠りにつけると思います」
 店員は一冊のファイルを取り出した。緑の巨木が密生し、昆虫や原始的な爬虫類の姿も見える。
「地球でいうところの白亜紀に当たるとでも申し上げればよろしいでしょうか。まだ知的生命体は発生していませんが、恐竜たちは順調に進化をとげています。空気組成も地球と近似していますし、いい環境ですよ」
「その星の評判は耳にしておりますが、ずいぶんと遠いと聞いております。主人の体重では到達できないのではないでしょうか」
「実はここだけの話ですが、天明第三惑星を希望されるお客さんが殺到しておりまして、特別に大型霊柩船を飛ばすこととなりました。いま体重を積算しているところですが、おそらくご主人の体重を加えましたら規定量に達するものと思われます。
 商品の性質上、出発日時を延ばすことはできません。急がせて申し訳ありませんが、この場でお返事をいただければありがたいのですが」
 未亡人は写真を何度も見た。わけのわからないガス星に魂を送られてはたまらない。しかし、この緑と生物に溢れる星なら……。
「わかりました。主人は恐竜がとても好きなひとでした。主人も生物の進化をゆっくりと見物できて楽しく過ごせることでしょう。埋葬地までの長旅も大勢のひとに囲まれていれば気もまぎれるかもしれません」
「ありがとうございます。では早速、手続に入らせていただきます」
 店員の澄みきった声が響いた。

 アインシュタインが証明したE=mc2の公式をそのまま動力に使えるようになり、宇宙船は格段の進歩を遂げた。質量さえあれば、いいかえれば物質さえあればあらゆるものを燃料として地球から飛び立つことができるようになったのだ。
質量から生み出されるエネルギーは膨大だ。
このエネルギーを利用してあらゆる物質を気化させ、光に近い速度で噴出させることで強力な推力を得ることができる。
 とはいえ、コストを削減するために宇宙船はギリギリまで重量とスペースを絞り込まれていた。
 霊柩船の燃料は遺体だった。遺体を燃やし、また気化し噴出させる材料としながら自動操縦で目的地まで航海を続けていく。そして埋葬予定地に到着したとき、霊柩船は遺体を使い果たして空となった燃料タンクを開いた。
 機械にはなにも分からない。感じることもない。科学の力をもってしても決して掴むことはない。しかし、この瞬間に、霊柩船のなかで静かに待機していた魂たちは、思い思いのところへ飛んでいく。このことを信じて、文明が進んだいまでも人間は宇宙の果てまで宇宙船を飛ばし続ける。
 プログラム通りの動作を終えた霊柩船は、何事もなかったかのように燃料タンクを閉じると、燃料コックを切り替え、帰還用の燃料を動力系に注ぎ込みながら地球への帰路についた。
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