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【書評】杉森久英『滝田樗陰~ある編集者の生涯~』 [書評]

明治後半~大正時代に活躍した大編集者の太く短い生涯です。


滝田樗陰―ある編集者の生涯 (1966年) (中公新書)

滝田樗陰―ある編集者の生涯 (1966年) (中公新書)

  • 作者: 杉森 久英
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1966
  • メディア: 新書



中央公論は本願寺系の宗教雑誌でした。
発行撫部数は1000部で、うち300部が寄贈、実売は300部という弱小雑誌を、滝田樗陰が4万部にまで伸ばしました。
この驚異的な進捗の原動力となったのが、小説です。
滝田は押しの強さで次々と有力作家の原稿をものにして、中央公論を総合雑誌の勇に押し上げていきます。
当時の文壇は、雅な修辞を駆使した美文調から、自然体の文章への転換期にありました。
自然体の小説を掲載しながら、滝田自身は美文調を好むなので、趣味と編集を分けて考えることのできる柔軟性がありました。
ただ、編集歴が長くなるとともに、やや時代遅れとなり、売り上げも下がり始めます。
そのような時期に滝田はその生涯を閉じました。わずか43歳です。最も良い時期に死んだのかもしれません。
著者は、滝田の後輩にあたり、滝田のことを良く知る人物が存命でした。
明治時代の文壇の様子や、明治後半から大正時代の雰囲気を肌で感じられる内容だと思います。

明治後半~大正時代をより知りたいひとのために!

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