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創作状況【4月上旬】 [ぼくの公募状況]

プロ野球が開幕しました。話題の楽天が1位です。

【サイトーメルマガ第163回の内容紹介】
◆こんな公募に挑戦してきました 第13回YOMEBAショートショート募集
◆TO-BE小説工房に挑戦中(第73回)
◆公募情報数点
 来月のテーマは「冒頭から作る方法のか、オチから逆算するのか」です。
 次回発行は5月5日です。メルマガは無料なので、ドンドン登録してください!
 https://www.arasuji.com/mailmagazine.html
 ※ページの下の方に登録フォームがあります。

【ショートショートガーデン】
ボツ・アイデアシリーズの第5、6弾です。

〔龍と住む〕
https://short-short.garden/S-uCTnRN

〔外来種〕
https://short-short.garden/S-uCTnVd

【TO-BE小説工房】
今月の作品を推敲する。とりあえず、意味が分かると怖いを目指したが、意味が分かっても怖くない。
単なるショートショートになってしまいった。
来月は「目」ですが。意味が分かれば怖い話にしようかなあと。
なかなか難しいですね。

【SSスタジアム】
次回のテーマは『誕生』ですか。おいおい考えます。
入選作の『心海探査艇ふろいと』を読む。
これは掌編ですね。言葉遊び系のSFで、無意識の領域である心海にもぐって少女を救います。途中で心海魚に襲われたり、あとはお約束の展開です。
よくある話と言われたらそうかもしれませんが、「心の奥に入る」という設定が流行なのかもしれませんね。
「異世界転生物」が流行しているのと同じように。
次回のテーマは最近の流行りを反映させてみようかな。

【星新一賞】
ストックがありすぎるので、気が向いたら新しいアイデアを書きます。
はい。

【創元SF短編賞】
最終選考が発表されて、能仲謙次さんが残りました。
さすがに受賞してほしいところですけど、どうなるか。

【坊ちゃん文学賞】
受賞作が公開されているので、順番に読みます。

 大 賞 『ドリームダイバー』山猫軒従業員 黒猫
 
 ショートショートというより美しい掌編ですね。
 最初、宮部みゆき『ドリームバスター』のパロディかと思いました。もっとも、そこから発想したのかもしれませんが。
 主人公はドリームダイバーという潜夢服を身にまとい、夢を見失った依頼人たちのために、夢の中にもぐって夢を引き上げる仕事です。
 この「潜夢服」「現素量」という言葉にやられました。SFで使われる言葉遊びです。八島游舷『天駆せよ法勝寺』でも同じ手法が使われていますね。
 テーマは「夢がない人間だからこそ、美しい夢を偏見なしに鑑賞できる」といったところです。いわば逆説ですね。このテーマと雰囲気がとても良いと思います。
 気になる部分としては、主人公の設定でしょうか。「夢がない」と言いながら「夢を持つひとをうらやましがる」というのは行動として矛盾している気がします。「夢を持つことが夢」になっています。
 本当に夢がないひとは、そもそも夢を持つひとをうらやましがることもありませんから。

【福島正実SF童話賞】
気がむいたら校正します。

【ゆきのまち幻想文学賞】
今年は小冊子が届くかなあ、どうかなあ。
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【公募情報】第17回深大寺恋物語 [公募情報]

密かに熱い恋愛小説賞です。

〔主催者HP〕
https://novel.chofu.com/application/entry_17th/

主催者HPに「執筆の前に必ず井上荒野先生の選評をご一読ください」とあります。
そこに求めている作品について書かれています。
端的にいいますと「小説」です。
使い古されたパターンの焼き回しではなく、著者にしか書けない作品。
こうした熱い作品を求めているようです。
言うは易し行うは難しの内容ですが、チャレンジしたいひとはぜひとも挑戦してみてください。
制限枚数は原稿用紙換算10枚内、応募締切は令和3年7月30日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:小説
テーマ :深大寺+恋愛(詳細は主催者HP参照)
最優秀賞:10万円
制限文字数:原稿用紙換算10枚以内
応募締切:令和3年7月30日
応募方法:ンターネット、郵送

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【書評】エヴァン・トーマス『レイテ沖海戦1944~日米四人の指揮官と艦隊決戦~』 [書評]

アメリカ人の手によるレイテ沖海戦です。


レイテ沖海戦1944―日米四人の指揮官と艦隊決戦

レイテ沖海戦1944―日米四人の指揮官と艦隊決戦

  • 作者: エヴァン トーマス
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2008/09/01
  • メディア: 単行本



著者は日米かなりの資料を読み込んでいます。
アメリカ側資料はもちろんのこと、日本側資料、さらには生存者へのインタビューもしています。
その膨大な資料をつき合わせ、整理し、レイテ沖海戦におけるそれぞの提督が決断した背景、心情に迫ります。
もちろん栗田中将の謎の反転にも触れられています。
著者はひとつの仮説を提示していますが、おそらく、これが真実に近いのではないかと思います。
日本側の本ではほとんど触れられることのない、アメリカ側の提督の生い立ちや、戦後の生活などが絵が描かれいるのも興味深いです。

レイテ沖海戦のことを深く知りたいひとのために!
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第79期名人戦第1局(渡辺明名人VS斎藤慎太郎八段) [将棋]

渡辺名人の初防衛戦が始まります。

〔中継サイト〕
http://www.meijinsen.jp/

使い古された言葉ですが、タイトルは防衛して一人前というのがあります。
渡辺明は竜王戦9連覇など番勝負での強さが際立っていますが、王座と棋聖はタイトルを1期で失っています。
一方で棋王は9連覇中。王将も一時失冠しますが、再獲得してからは3連覇中です。
渡辺明にとって、最初の防衛戦が大きいのかもしれません。
斎藤慎太郎八段との対戦成績は3勝2敗とほぼ五分ですが、3連勝中なので相性は良いのかもしれません。
さあ渡辺名人は、永世名人を目指して、幸先の良い1勝を挙げることはできるでしょうか!

〔棋譜※ロック将棋さんより〕
https://6shogi.com/79meijinsen1/

ということで将棋です。
先手は斎藤慎太郎八段、後手は渡辺明名人です。
先手の作戦は矢倉で、バランス重視の土居矢倉に構えます。後手の渡辺名人は銀矢倉をくみ上げ、待機戦術です。
先手が打開できるかどうか、という将棋になりますが、斎藤八段が思い切って仕掛けていきます。
しかし、狙いすましていたかのように、後手渡辺名人が角切の猛攻をしかけ、100手前後の局面でははっきりと優勢になります。
しかし、斎藤八段が粘って決め手を与えず、渡辺名人を焦らせます。
やや駒損の攻めであるため、攻めが切れたら後手が苦しくなります。
そして最終番になり、斎藤八段が後手の攻め駒を一掃してついに逆転。
179手まで、斎藤八段の勝ちとなりました。
作戦が当たり優勢な将棋になったのに、勝ちきれない。渡辺名人としては不本意な将棋になったと思います。

第2局は、4月27・28日(火・水)に福岡県飯塚市、麻生大浦荘で行われます! 

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【公募情報】第11回銭湯川柳(川柳・5/31〆) [公募情報]

減少中の銭湯ですが、まだまだ利用者は多いです。

〔主催者HP〕
http://1010.or.jp/senryu/

前回の応募総数は約1500句とあるので、川柳公募としては少ない部類だと思います。
主催者HPには「ユーモアたっぷりの川柳をお待ちしております」とありますが、ユーモア系に限定しているわけではなく、過去受賞作を見ると、むしろほのぼのしている作品が多い印象です。
応募締め切りは令和3年5月31日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:川柳
テーマ :銭湯
最優秀賞:(賞品不明)
応募締切:令和3年5月31日
応募方法:はがき、インターネット

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第14期マイナビ女子オープン第1局(西山佳朋女王VS伊藤沙恵女流三段) [将棋]

伊藤女流三段が8度目のタイトル挑戦です。

〔中継サイト〕
https://book.mynavi.jp/shogi/mynavi-open/

いままでの伊藤女流三段のタイトル戦の相手は、
7回・里見香奈
1回・加藤桃子
となっており、里見女流四冠にはかなり負け越しています。
今回の相手は西山女王ですが、まだ対戦は少ないものの1勝4敗と大きく負け越しています。
やはりこの2人に勝てないと、なかなかタイトルに手が届きません。
西山女王ですが、前期の奨励会三段リーグで終盤崩れて6連敗を喫するなど、本調子ではないようにおもいます。
女流タイトル戦でも防衛は続けているものの、失冠直前まで追い込まれた局面も何度かあありました。
いつまでもシルバーコレクターで終わるわけにはいきません。
さあ、伊藤女流三段にチャンスは回ってくるでしょうか!

〔棋譜〕
https://book.mynavi.jp/shogi/mynavi-open/result/14/mynavi202104060101.html

将棋はいきなりの乱戦になりました。
先手西山女王の三間飛車に、いきなり角交換してお互いに馬を作りあう展開です。
定跡はなく、一手が難しい将棋だと思いますが、後手伊藤女流三段は金銀を前進させて力で抑え込む、自分の得意の形に持って行けたのかなと思います。
こん棒を振り回すような攻めが西山女王の持ち味ですが、本局は我慢の展開です。
その西山女王の攻めのターンが回ってきたのは、61手目でした。西山女王の残時間は34分、伊藤女流三段の残時間は僅か16分です。
そこから西山女王がゴリゴリ攻めていきますが、評価値だけ見ると73手目の華麗なる銀捨てが分水嶺だったようです。
一分将棋だった伊藤女流三段ですが、手に乗って飛車を転回させて馬と刺し違えます。
盤上に残した馬を使って後手の龍を追い回しつつ、盤上に駒を増やして、盤面を制圧していきます。
手数は長くなりましたが、優勢になった後手が1分将棋を乗り切り、初タイトルに向けた大きな白星を上げました。

第2局は4月21日(水)山梨県甲府市「常磐ホテル」で行われます!
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【書評】半藤一利『レイテ沖海戦』 [書評]

多くの当事者からのインテビューを元に書かれた決定版です。


レイテ沖海戦 (PHP文庫)

レイテ沖海戦 (PHP文庫)

  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2001/09/01
  • メディア: 文庫



レイテ沖海戦は絶望的な戦いでした。
海戦の主力である航空機や搭乗員は枯渇し、欧州戦線でもドイツは敗勢に陥っていました。日本の敗戦は決定的となり、あとはどのタイミングで白旗を上げるかという状態でした。
そうした中で、企画されたのがレイテ沖海戦です。
半藤一利はまだ健在だった提督たち、海戦の体験者たちからインタビューをして、様々な資料を集めてこの本を書き上げました。
集めた情報を盛り込むためか視点が激しく移動して読みづらい部分や、感情が篭もり過ぎていられると見られる文章もありますが、それだけ著者の思いが強いのだと思います。
謎の反転はいまでも議論が続いていますが、限られた情報の中で判断しなければならない、指揮官の難しさなのかなとも思います。

レイテ沖海戦の全体像を読みたいひとのために!
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最近の日常【令和3年4月上旬】 [日常]

〔わき腹が痛くなった話その1〕
突然、わき腹が痛くなった。
たぶん体をひねったときとか、そんなレベルの動きのとき。
湿布を貼っているものの、痛みが引かないため整形外科を受診する。
念のためにレントゲンを撮り、骨に異常がないことを確かめる。
「1月ほど痛みが続くことがあるので様子を見てください。軽い呼吸で痛みがでるときは要注意なので、病院にきてください」と言われる。
で、数日間湿布を貼り続けていたら、ある日、突然わき腹が真っ赤に腫れて、血がにじむレベルになる。
仕事で病院にいけず、土曜日になってようやく病院に駆け込むことになった。

〔わき腹が痛くなった話その2〕
さて病院に行こうと思ったら、ただの土曜日ではなく祝日だった。
ほとんどの病院は祝日休診のため、少し離れた病院まで駆け込む。
オープン前から屋外に並ぶのは久しぶりです。
で、診察してもらった。見事に湿布の形に腫れているねえ、と妙な感心をされる。
先生によると、自分が使っていた湿布は、腫れの症状が出やすい商品みたい。
急に腫れた原因は不明だが、湿布以外の何かに因子が加わり、発症したのだろうとのこと。
すでに治りかけている箇所もあるので、大丈夫だろうと説明されて安心する。
とりあえず塗り薬をもらいました。はい。
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【書評】横山秀夫『看守眼』 [書評]

短編集ですが、様々な主人公が登場するミステリです。


看守眼 (新潮文庫)

看守眼 (新潮文庫)

  • 作者: 横山 秀夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/08/28
  • メディア: 文庫



表題作は刑事になることが夢だった看守が犯人を追いかける話です。
ほかには自伝の執筆を求められたライター、地方紙整理部の記者、知事の秘書、警察HPの管理者など。
表題作は横山秀夫らしいですが、あとは少し毛色の違う作品が多い印象があります。
すっきりとしらラストもあれば、モヤモヤとした最後もあります。
個人的には口癖が印象に残っています。
キーワードが綺麗につながる作品が好きといいますか。

警察小説以外の横山秀夫を読みたいひとのために!
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【SS】齊藤想『祭りおにぎり』 [自作ショートショート]

第12回YOMEBAショートショートに応募した作品です。
テーマは「祭り」です。

―――――

『祭りおにぎり』 齊藤 想

 今日も頭が重い。
 出社すれば上司から営業ノルマの未達を激しく責められ、土日も「本当に家でゴロゴロしているつもりじゃないだろうな」と追い立てられる。
 転職しようにも、この不況下では雇ってくれる会社はない。そもそも、あの会社が辞めさせてくれるとは思えない。
 いったい自分は何のために生きているのだろうか。
 時間になったら目覚め、スーツに着替えて駅に向かい、まるでパブロフの犬のようにキオスクでいつものサンドイッチを購入して電車にのる。職場につけば、上司や先輩に終業時刻まで小突き回される。
 ただそれだけの人生だ。遊ぶ時間も酒を飲む時間もない。ましてや、恋をする時間などもってのほかだ。
 自分はため息をつきながら、いつものキオスクの前に立つ。ところが、昨日とは雰囲気が違うことに気が付いた。
 キオスクがおにぎり屋に変わっている。
 しかも、店員として立っているのは、ねじり鉢巻に法被を着た中年男性だ。
 カウンターの内側から、威勢のよい声が聞こえてきた。
「へい、そこのお兄さん。ずいぶんと景気の悪そうな顔をしているじゃないか。ちょいと、この”祭りおにぎり”を食べていきなよ。元気がでるからさあ」
 自分は駅をぐるりと見渡した。いつも同じ七番線。オレンジ色の電車。ホームを間違えたわけではない。
「へいへい、おにぎりごときで悩んでいるんじゃないよ。お前さんがどんなに暗い顔をしようが、世界は続くし、太陽は昇る。朝になれば腹は減るし、夜になれば眠くなる」
「いや、実は不眠症で……」
「それは困ったな。そいつには、このおにぎりだ」
 店員というより”兄貴”といった感じの中年男性は、小さい粒が混じったおにぎりを渡してきた。
「こいつで不眠症などふっとばせ!」
 店員の勢いに飲まれるまま、自分はひと口かじってみた。プチプチとした触感が口内にひろがる。この食感は粟か。その粟が口の中で踊るような……これは一体なんだ?
「こいつは、阿波踊りおにぎりだ」
 粟が踊るから阿波踊り。そう気が付いた瞬間、自分の脳裏に、祭りの光景が浮かんできた。町中を練り歩く大勢の踊り子たち。踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿保なら踊らなソンソン……。
 熱気が大脳をめぐり、突風のように通り過ぎていく。
「どうだい。少しは元気がでたかい?」
 ”兄貴”は自分の目を覗き込んできた。だが、しばらくして小さく首を横に振った。
「まだまだ元気が足りないようだな。次はこいつでいってみようか」
 自分は店員から渡されるまま、二つ目のおにぎりを口にした。
 魚の香りが鼻腔を刺激する。赤身魚と白身魚が混ぜられた炊き込みご飯だ。赤身はカツオだろう。白身は鯉か? カツオといえば土佐だ。土佐に鯉とくれば、これは”よさこい祭り”なのか。
「正解だ」
 店員が満足そうにうなずくと同時に、陽気なよさいこい祭りの音楽が耳に迫ってきた。
 ジャズダンス風に編曲された軽快なメロディ-に、リズムを取り続ける鳴子たち。
 伝統的な祭りとは一線を画すこの踊りに、自分の心は突き動かされる。頭の中でたくさんの踊り子たちが踊りまくる。ダンスとダンスがぶつかり合う。自然と自分の体も動き出す。
「だいぶ元気がでてきたようだな。ダメ押しで、もうひとついってみようか」
 自分は店員から渡されるまま、新しいおにぎりを口にした。
 今度の具は鶏肉だ。だが、食べなれているもも肉や胸肉ではない。とり皮のような脂っこさがあるが、かといって皮ではなく、コロンとしたかたまりになっている。
 このおにぎりの正体が分かった。
「この具は鳥のお尻の肉、ぼんじりだ。つまり、今度のおにぎりは”だんじり祭り”だ」
「その通り。お兄さん、最高だね」
 店員は親指を突き立てながら、満面の笑みを浮かべた。
 駅のアナウンスをかき消す勢いで、勇壮な男たちがホームに流れ込んできた。彼らの掛け声に押されるように、レールの上を次から次へと山車が通り過ぎていく。見えなくなったかと思えば、今度は逆側のホームに威勢の良い掛け声が殺到してきた。
 山車の上で音頭を取る青年が、自分に向かって何か声をかけてきた。
 こっちにきなよ。
 喧騒に包まれてよく聞こえないが、そう言われた気がした。全身が高揚感で包まれる。腹の底から不思議な力が湧き上る。思わずレールに駆け下りようとして、なんとか踏みとどまる。
 男たちは立ち去った。
 久しぶりに楽しいひとときを過ごせた。
 しかし、祭りの熱気が過ぎてしまえば現実に戻される。いまの気持ちは、まさに”祭りの後”だ。
 店員がしんみりとした様子で、語りかけてくる。
「そうだよな、祭りの後は寂しいよな。だから、しめはこいつでいこうか」
 おなかが一杯だからと断ろうとしたが、最後のおにぎりには、なぜか断れない雰囲気が漂っていた。
 自分は店員から渡されたおにぎりを、申し訳程度に少しだけ齧った。
 なんだろう、この味は。ほんのりとした塩味。具はなく、このうえなくシンプルで、かつ口に入れたとたんに米粒がほぐれていく絶妙な力加減。
 自分は思い出した。その様子を見ていた店員が、満足そうに首を縦に振る。
「こいつは、お前さんのおふくろのおにぎりだ。地元の祭りのとき、みんなによく配っていたよな。素敵なお母さんじゃないか」
 意識が子供のころに戻っていく。楽しかったあのころ。何も悩みがなかった少年時代。全てを包み込んでくれたお母さん。
 お母さんは、いまも郊外の一軒家で、盆暮れの息子の帰省を楽しみにしている。
 だから、自分はこの程度でくじけてはいけない。自殺なんてもってのほかだ。
 自分が現実に戻ると、おにぎり屋は忽然と姿を消していた。目の前には、いつものキオスクがある。

「あの……いつものサンドイッチでよろしいでしょうか」
 いつもの店員が、自分に声をかけてきた。
 いままで気が付かなかったが、よく見ると店員は自分と同年配の女性だ。
 自分にどれだけ余裕がなかったのかと、思わず苦笑する。まるで、いままで目と耳をふさいで生活していたようなものだ。
 店員は、自分がいつも買う商品を覚えてくれている。たったそれだけのことで、自分は一人じゃないと実感する。それに、郊外にはお母さんが健在だ。
「ああ、それで。お願いします」
 自分は料金を払うと、いつものサンドイッチを手にして職場に向かった。
 祭りから少し元気をもらって。

 
―――――

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