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【書評】深井俊之助『戦艦「大和」副砲長が語る真実』 [書評]

レイテ沖海戦時に大和副砲長だった著者が語る真実です。


私はその場に居た 戦艦「大和」副砲長が語る真実 海軍士官一〇二歳の生涯

私はその場に居た 戦艦「大和」副砲長が語る真実 海軍士官一〇二歳の生涯

  • 作者: 深井 俊之助
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/04/06
  • メディア: 単行本



深井俊之助氏は大正3年生まれで、当時大和副砲長という重責を担っていました。
著述は少年時代から始まり、訓練に明け暮れたり、お召艦に乗艦し溥儀の世話をしたりといった日々がつづられます。
戦争に入ると駆逐艦勤務となり、そこから金剛を経て大和乗艦、運命のレイテ沖海戦へと向かいます。
運命の電報ですが、著者は「捏造の可能性が高い」と判断しています。まず他のだれも受信していないこと、様式が異なっていることなど、不審な点はたくさんです。
また、戦艦部隊より優速の機動部隊を追いかけるという命令にも首をひねっています。いま目の前にいる空母部隊を同じ理由で追跡をあきらめたのにも関わらずです。
そうした実体験から、栗田中将への評価は非常に厳しいものがあります。
著者の証言については、高齢のためか記憶違い等を指摘されている部分はありますが、戦争を実体験しているだけに、貴重な証言がたくさんです。

太平洋戦争をより深く知りたいひとのために!
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第80期順位戦展望【A級・開幕前】 [将棋]

いよいよ永瀬王座A級に上がってきました。

〔対戦表〕 
https://www.shogi.or.jp/match/junni/2021/80a/index.html

名人戦の決着がついたばかりですが、A級順位戦が始まります。
注目は豊島竜王と永瀬王座です。
この2人が挑戦者レースの中心になる可能性は高いでしょう。
A級でも安定した実力を発揮している広瀬八段ですが、最近は爆発的に連勝するイメージがありません。
第1回戦、第2回戦と連続して永瀬王座、豊島竜王とゴツイ相手とぶつかるので、ここで連勝すると初挑戦が見えてくるかもしれません。
前半が注目です。
残留争いですが、佐藤天彦九段と菅井竜也八段の調子が上がりません。山崎八段もやや下り坂なのが気になります。
レーティング的に最下位なのは佐藤康光九段ですが、取りこぼしが多いわりに、どんな強敵相手でも丸太で殴り倒す腕力が健在なので、なんだかんだと残ると予想します。
ここ2年は降級の心配があった羽生九段ですが、トータルレーティングで4強の次のグループを保っているので、普通の結果なら残る可能性が高いと思います。
まとめとして、今期の挑戦は豊島竜王、降級は佐藤天九段、山崎八段と予想します。

開幕局は糸谷八段、菅井八段戦で、6月2日に行われます!
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第79期名人戦第5局(渡辺明名人VS斎藤慎太郎八段) [将棋]

渡辺名人の3勝1敗で迎えた第5局です。

〔中継サイト〕
http://www.meijinsen.jp/

斎藤八段は、自他ともに認める詰将棋愛好家です。
解くのも得意なら、詰将棋作家としても活躍しています。
その作風は、個人的な印象では、詰将棋らしい作図だと感じます。
古くから将棋の鍛錬として詰将棋は解かれてきましたが、あまり技巧的過ぎる作品は実戦には繋がらない、というのが概ねの共通認識のようです。
谷川浩司もどこかのコラムで、詰将棋に没頭しなければもう少しタイトルを取れていたかもしてない、という主旨のことを書いていた記憶があります。
将棋界には伊藤完寿の『将棋図巧』という難解な詰将棋を全部解ければプロになれる、という話があります。
これは技術を磨くのではなく「将棋がどれだけ好きか試す」意味があるそうです。
さあ詰将棋愛好家の斎藤八段ですが、本局では詰め将棋能力を発揮する場面があったでしょうか!

〔棋譜〕※棋譜はロック将棋さんから
https://6shogi.com/79meijinsen5/

ということで将棋です。
後手番の渡辺名人が角換わりを拒否して雁木模様に進みます。
先手の斎藤八段は玉をコンパクトに囲い、右四間飛車から1日目の午前中から仕掛けます。
歩を突き捨ててから桂馬を跳ねるのが呼吸で、スピードアップの手筋です。
お互いに引かず、真っ向から切り合います。
攻め込まれた渡辺名人も控えの桂で反撃の構えを取りますが、先手の斎藤八段がいち早く5三に成桂を作り、攻めが一歩早そうな雰囲気です。
勝負の分かれ目は封じ手だったと思います。
渡辺名人が金の頭を歩で叩いた手に対して、誰もが予想する同金ではなく、斎藤八段は8九金と引きました。
安全策だったようですが、結果としてこの1手でいままでの優位を不意にしてしまいました。
さらに4四歩から攻め立てますが、中央の馬が強く、厳しい情勢です。
最後は下駄を預けた斎藤八段に対し、渡辺名人はきっちり先手玉を詰ましに入った段階で斎藤八段は投了しました。

これで4勝1敗となり、盤石の態勢で渡辺名人が防衛を果たしました。
渡辺名人おめでとうございます!
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【公募情報】メフィスト賞2021年下期座談会(長編・8/31〆) [公募情報]

エンタメ小説公募界の革命児だと思います。

〔主催者HP〕
http://kodansha-novels.jp/mephisto/award/index.html

下読みを介さずに編集者が直接選ぶという賞で、その特色からか、かなりの人気作家を輩出しています。
京極夏彦、森博嗣、舞城王太郎、西尾維新、井上真偽などなど、数え上げたらきりがありません。
一部のマニアからカルト的人気を誇っている蘇部健一『六枚のとんかつ』も受賞しています。
どちらかというと、ミステリ要素が強い賞かな、という気もします。
制限枚数は40×40で50枚以内、応募締め切りは令和3年8月31日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:エンタメ小説
大  賞:印税
制限枚数:40×40で50枚以内
応募締切:令和3年8月31日
応募方法:インターネット、郵送
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創作状況【5月下旬】 [ぼくの公募状況]

緊急事態宣言延長の流れです。ワクチン普及まで我慢ですね。

【サイトーメルマガ第164回の内容紹介】
◆本の選び方 ~ 読書のすすめ ~
◆TO-BE小説工房に挑戦中(第74回)
◆公募情報数点
 来月のテーマは「読書のすすめ」です。
 次回発行は6月5日です。メルマガは無料なので、ドンドン登録してください!
 https://www.arasuji.com/mailmagazine.html
 ※ページの下の方に登録フォームがあります。

【ショートショートガーデン】
百物語用のボツアイデアを順番に出していきます。
これは児童文学的に暗すぎてボツにしたのですが、ホラーなので採用してもよかったかも。

〔いっちゅうひ〕
https://short-short.garden/S-uCTpwd

【TO-BE小説工房】
今月の作品に悪戦苦闘。原因はキャラ造形と舞台設定の不足、ということにようやく気が付く。ようするにイメージを膨らませずに書いているから、こうなる。
さんざんいじくり回して、少しマシになった段階で投稿です。
来月は幕ですか。なんなくミステリを書いてみたくて、ショートミステリにチャレンジです。トリックは手品の応用です。
設定が陳腐すぎるのが、なんともかんとも。

【SSスタジアム】
結果発表までのんびりと。

【星新一賞】
第8回星新一賞受賞作品を順番に読んでいきます。

・優秀賞『ペンを取ってくれませんか?』松樹凛
言語系SFに分類されるのかな、と思います。
相手の感情を分析し、言葉遣いまで完璧に訳される未来の自動翻訳システム、「キャンディボックス」が普及した未来を描きます。
なにしろ、このシステムを使えば相手の歓心を得ることが容易であるため、自動翻訳システムを悪用した詐欺が多発し、社会が変容していきます。
2人の女性が中心となってストーリーは進みますが、この2人が旧世界と新世界を象徴していると感じます。
そして、最後は新世界が「ペンを取ってくれませんか?」の一言で、高らかに勝利を宣言します。
内容はいかにも現代的なSFですが、自分にはちょと苦手なジャンルです。
一本調子のきらいはありますが、新技術の問題点を、論理的にストーリーに落とし込むところに、技術を感じます。

【創元SF短編賞】
来年用の作品はできているので、しばらく放置です。

【坊ちゃん文学賞】
受賞作が公開されているので、順番に読みます。

・佳 作 『枕上げの夜』小笠原柚子
http://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/17th-06-makura.pdf
個人的にはこの作品がピカ1です。
主人公が住む地域には『瑠璃小豆』という食味は悪いが枕にすると寝心地が最高になる小豆があります。しかも夢を吸い取ってくれるので、朝まで熟睡。
夢を十分に吸い取った枕は打ち上げ花火のように夜空に打ち上げられ、吸い取った夢を夜空に咲かせてから、新品と交換されます。
年1回の行事ですが、次々と枕上げが進み、おばあちゃんの若いころの姿が映し出されます。
これはお祖母ちゃんの夢かな、と思っていたら、最後にほっこりとしたオチが待っています。さり気ない伏線が効いています。
本作は『瑠璃小豆』『枕上げ』『夜空に描かれる夢』という3つのアイデアの複合ですが、それぞれが関連付けられて違和感なくまとまっているところに作者の力量を感じます。
オチは無難な線ですが、全体的な雰囲気とマッチしていて、バランス感覚も優れています。
心から感服いたしました。

【福島正実SF童話賞】
気がむいたら校正します。

【ゆきのまち幻想文学賞】
小冊子が来たら、分析をしてメルマガのネタにします。はい。
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【書評】奥宮正武『大艦巨砲主義の盛衰』 [書評]

明治から昭和初期にかけて全世界を覆った大艦巨砲主義の流れについてです。


大艦巨砲主義の盛衰

大艦巨砲主義の盛衰

  • 作者: 奥宮 正武
  • 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
  • 発売日: 1989/10
  • メディア: 単行本



その時代は日本だけでなく世界中で戦争が行われてきました。
日清戦争、日露戦争で勝利した日本は戦艦が戦争の趨勢を左右した経験や、第1次世界大戦の戦訓から戦艦への信奉を高めていきます。
そしてそうした巨艦を経験した将校が上位職へと駆け上がりました。
そのような大鑑巨砲主義への流れが、淡々とつづられていきます。
おそらく日本最大の弱点は、この人事の硬直化ではないかと思われます。
高官に巨艦経験者が集まった結果、大艦巨砲主義がまるで宗教のようになり、ある種の派閥となり、神聖不可侵となっていったように思います。
いまの日本にも通じる話だと思います。

戦前の日本の失敗を考えたいひとのために!
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第14期マイナビ女子オープン第4局(西山佳朋女王VS伊藤沙恵女流三段) [将棋]

西山女王の2勝1敗で迎えた第4局です。

〔中継サイト〕
https://book.mynavi.jp/shogi/mynavi-open/

第34期竜王戦は本選トーナメント進出者が出そろいましたが、西山女王もあともう少しで本選進出まで勝ち進みました。
女流枠として6組1回戦に出場すると、長岡裕也五段、室岡克彦七段、冨田誠也四段を撃破して、小山怜央アマに敗れました。
若手四段を撃破したところからしても、組み合わせ次第の部分もありますが6組優勝のチャンスはあると思います。
攻撃的な振り飛車を愛用するアマチュアは多く、体感的には初段前後のアマチュアは居飛車党より振り飛車党が多いです。
そういう意味でも、西山女王の活躍は指す将棋ファンの励みになると思います。
さあ、西山女王が3勝目を上げてマイナビ杯の防衛はなるでしょうか!

〔棋譜〕
https://book.mynavi.jp/shogi/mynavi-open/result/14/mynavi202105250101.html

ということで、将棋です。
後手の西山女王は5三歩と開けたことで、いきなり角交換から打ち込まれての乱戦になります。
伊藤女流三段は馬を作ってから中央に寄せ、さらに6五桂馬跳ねという積極策です。
ここから伊藤女流三段は得意の金銀を盛り上げて厚みを築き、じわじわと盤面を制圧していきます。
一か所でも穴があれば崩壊しますが、中央の馬が強く、西山女王も得意のこん棒を振り回す隙がありません。
後手に手がないことを見越した先手は、理想形まで駒組を進め、流れるような手順で後手陣を崩壊させました。これほど一方的な展開になるのは珍しいです。
伊藤女流三段は持ち時間も残り9分まで使い、まさに充実の1勝だと思います。

93手目まで完勝した伊藤女流三段は、カド番をしのぎ、悲願の初タイトルまであと1勝です。
最終第5局は、6月1日(火)に東京・将棋会館で行われます!
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第62期王位戦挑戦者決定戦(豊島将之竜王VS羽生善治九段) [将棋]

羽生善治九段と藤井聡太二冠とのタイトル戦が実現するか注目です。

〔中継サイト〕
http://live.shogi.or.jp/oui/

歴代通算タイトル数1位は羽生九段ですが、2位は大山康晴、3位は中原誠です。
25歳差の大山康晴と中原誠は何度もタイトルを争っていますが、23歳差の中原誠と羽生善治は一度もタイトル戦で顔を合わせることがありませんでした。
1994年~2003年にかけて、あと一歩で実現する機会が4回ありましたが、いずれも中原誠が挑戦者決定戦やプレーオフで敗れて、対決は夢のまま終わりました。
羽生善治と藤井聡太との年齢差は両者を大きく上回る32歳差です。
まだ羽生善治が第一線で活躍中とはいえ、タイトル戦で顔を合わせるチャンスはそう多くないものと思われます。
四強の一角を占める豊島竜王との対戦成績は羽生九段から見て5連敗中であり、厳しい情勢ではあります。
しかし、前期の順位戦でも最終盤までどちらが勝つのか分からないシーソーゲームになっており、結果はどう転ぶのか分かりません。
さあ、羽生九段は藤井二冠との番勝負を実現することができるでしょうか!

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/62/oui202105240101.html

ということで、将棋です。
先手は羽生九段で、矢倉へと進みます。
後手は銀を引き付けて専守防衛の構えですが、39手目にいきなり2四歩とつっかけます。
あまりに早い突き捨てで、これが活きるかどうかが勝負の分かれ目ですが、豊島竜王は金銀を押し上げて、先手の突き捨てを逆用しようとします。
そこに羽生九段が攻めかかりますが、さすがに細く、取れる香車を取らずに2三桂馬と銀の進出を抑えたのが受けの決め手で、完全に先手の攻めが止まってしまいます。
羽生九段はB面作戦に切り替えますが、後手の入玉を止められず、飛車を切っていることから点数勝負も望めないことから、潔く投了しました。
アグレッシブな攻めが裏目に出た形となり、これで、藤井羽生の番勝負はお預けです。

藤井王位に豊島竜王が挑む王位戦七番勝負第1局は6月29・30日(火・水)、愛知県名古屋市「名古屋能楽堂」で行われます!
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最近の日常【令和3年5月下旬】 [日常]

〔5%の法則の話〕
勝手に法則を作っているのだが、金融株の配当利回りが5%を超えたら買いだと思っている。
もっとも気分の問題で4%台でもちょくちょく買い足してしまうのだが、5%を超えていたら安心して買えるというか。
最近の株式を見ると、金融系は基本的に4%台だが、銘柄によっては瞬間的に5%を超えることもある。
こういうときに悩むんですよね。
で、悩むときは基本的に買わないのだが、そうこうしているうちに、また上昇のくり返し。
総額が増えてくると感覚がマヒしてくるのですが、無理しない程度で少しづつ増やしていく予定です。桐谷さん式の、農耕型投資術を見習いまして。

〔炊飯器を買い替えた話〕
ついに炊飯器が壊れた。
表面がベタベタなのにごはんに芯が残る状態に炊きあがるということは、たぶん、どこかに隙間が生じて圧力が上がらないのだろう。
ということで近所の家電量販店にいくが、1升炊きが置いていない。
最大でも5.5升炊きなので、このサイズが売れ筋なのかもしれない。
仕方がないので、自宅でネットで購入する。
気分的に、いままで使用していたモデルより、ほんの少しだけ高い商品を購入。
翌日に届きました。はい。

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【書評】天狗太郎『昭和「将棋指し」列伝』 [書評]

大山康晴十五世名人と同時代人の著者による昭和前半を彩った棋士伝です。


昭和「将棋指し」列伝

昭和「将棋指し」列伝

  • 作者: 天狗 太郎
  • 出版社/メーカー: 時事通信
  • 発売日: 1993/09
  • メディア: 単行本



なにより貴重なのは、明治生まれの棋士たちの伝記です。
著者が長老たちにインタビューをしたのは昭和39年です。
関根金次郎、坂田三吉は故人でしたが、両名を知っている棋士が存命で、貴重なインタビューが収録されています。
坂田三吉はものすごく丁寧な人柄だったそうですが、息子との関係があまりよろしくなかったようです。
近代将棋の礎となったのは、実力名人制です。
このあたりの経緯が評伝の中で描かれており、名人だった関根金次郎の苦悩、主催する新聞社の思惑などが入り乱れ、実に生々しいです。
最後は関根名人の英断によって近代将棋の幕開けとなるのですが、昭和前半の将棋史を語るうえで、大事な本だと思います。
金(こん)易二郎が娘にうっかり「タマ」と名付けてしまった話は、大笑いしましたが本人的にはかわいそうすぎる……

そんなあこれ、将棋の歴史を知りたいひとのために!
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