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【映画】ナチスの愛したフェルメール [映画評]

メーヘレンのフェルメール贋作事件をテーマにした近代史的な映画です。


ナチスの愛したフェルメール [DVD]

ナチスの愛したフェルメール [DVD]

  • 出版社/メーカー: オンリー・ハーツ
  • 発売日: 2018/12/07
  • メディア: DVD



メーヘレンは無名画家です。
個展を開くも専門家から「個性がない」と罵倒され、復讐を誓います。
専門家の妻に恋慕してモデルを申し込み、そうした三角関係も影響します。
メーヘレンには妻と息子がいました。
他人の妻に恋する夫に愛想をつかし、妻も息子を連れてでていってしまいます。
そうした中でローマで専門家の妻と再会と喧嘩を経て、メーヘレンは本格的に贋作に取り組みます。
当時のチェック法だったアルコール法を避けるため、樹脂で焼き固める方法を考案します。
また、フェルメール初期の空白期を狙い撃ちして、古い絵画を切り取り、当時の手法で描くことで騙すことに成功します。
第二次世界大戦がはじまり、メーヘレンはナチスにも贋作を売りつけます。
ところが戦後になり、メーヘレンは「本物のフェルメールをナチスに売却した」として、、国家反逆罪で死刑を求刑されます。
メーヘレンは贋作であることを証明し、死刑は逃れますが、代わりに「フェルメールとメーヘレンの差が不当利得である」として50万ギルダー……つまりメーヘレンの絵に価値はほんどなく、ほぼ全額の返還が要求されます。
メーヘレンはつぶやきます。「同じ絵なのに」と。

本作は有名な事件をテーマにしています。
結果として専門家の欺瞞性と、絵の価値についての疑問を提起することになりました。
贋作の製作法を克明に描くだけでなく、専門家の妻を巡る争い……個性がないと言われたメーヘレンが唯一情熱的に書いたのが専門家の妻をモデルにした絵であること。
その絵を専門家に破られたことが、復讐への最後のひと押しになったこと。
息子から諭されて、贋作を告白する気になったこと。
本人の告白があっても贋作だと信じなかった専門家に、メーヘレンと再婚した妻が贋作の証拠を裁判所に提示すること。
映画はすべてメーヘレン目線ですが、同時に複数のストーリーラインを動かす技術といい、前半の伏線が奇麗に回収される構造といい、とても面白かったです。芸術とは何かというテーマ性もあります。
ただ、映画サイトではあまり評価が高くありません。
オランダ・ベルギー・ルクセンブルク合作ということもあり、俳優も監督も日本では知られていないからですかね。日本語タイトルと内容が微妙に違うというのもあったのかも。

フェルメール贋作事件について知りたいひとのために!
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【書評】レイ・ヴクサヴィチ『月の部屋で会いましょう』 [書評]

ショートショートの奇作がテンコモリです。


月の部屋で会いましょう (創元SF文庫)

月の部屋で会いましょう (創元SF文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/09/11
  • メディア: 文庫




脳が錯乱しそうな作品ばかりです。
冒頭から「人間の肌が宇宙服に変わり宇宙に旅立つ奇病」の話ができたと思えば、「手編みのセーターの中で迷子になる話」「赤ん坊のお尻からネズミや小鳥がでてくる話」など、もう何がなんだかです。
しかもこの奇妙な設定を、奇妙な表現で表したりするものだから、ときおり正気を奪われそうになります。
けど、この手の作品は嫌いではありません。世の中には様々な発想があるものだと感心させられます。
2001年フィリップ・K・ディック賞候補作です。

頭のネジがふっとぶような作品を読みたいひとに!
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