【書評】小松左京『日本アパッチ族』 [書評]
小松左京の処女長編SFです。
戦後の大阪に「アパッチ族」と呼ばれるひとたちがいました。
彼らは爆撃で廃墟となった軍事工場跡に忍び込み、屑鉄をかっぱらっては売りさばいて生活していたのですが、そんな彼らをモチーフにしたSF小説です。
本書のアパッチ族は、食鉄族です。
舞台は失業すると追放区に放逐される新法が施行された世の中で、アパッチ族はその追放区にすんでいます。
彼らは鉄を食べることで肉体を鋼鉄化しているのですが、日本陸軍の襲撃を撃破し、テレビ出演を図るなどして人気者となります。
最後は日本政府との全面戦争となり、犠牲をはらいつつも、アパッチ族が勝利します。
まるで筒井康隆のような、変な設定の小説です。
途中もユーモアたっぷりで、さらにアパッチ族の生態を詳細に解説するなど、ある意味ではハードSFっぽいところも見せます。
歴史的な意義はいろいろあるかもしれませんが、荒唐無稽な設定を、気がるに楽しめる本だと思います。
記念すべき小松左京の処女SF長編を読みたいひとのために!
戦後の大阪に「アパッチ族」と呼ばれるひとたちがいました。
彼らは爆撃で廃墟となった軍事工場跡に忍び込み、屑鉄をかっぱらっては売りさばいて生活していたのですが、そんな彼らをモチーフにしたSF小説です。
本書のアパッチ族は、食鉄族です。
舞台は失業すると追放区に放逐される新法が施行された世の中で、アパッチ族はその追放区にすんでいます。
彼らは鉄を食べることで肉体を鋼鉄化しているのですが、日本陸軍の襲撃を撃破し、テレビ出演を図るなどして人気者となります。
最後は日本政府との全面戦争となり、犠牲をはらいつつも、アパッチ族が勝利します。
まるで筒井康隆のような、変な設定の小説です。
途中もユーモアたっぷりで、さらにアパッチ族の生態を詳細に解説するなど、ある意味ではハードSFっぽいところも見せます。
歴史的な意義はいろいろあるかもしれませんが、荒唐無稽な設定を、気がるに楽しめる本だと思います。
記念すべき小松左京の処女SF長編を読みたいひとのために!
【書評】眉村卓『なぞの転校生』 [書評]
眉村卓のSFジュブナイル小説の代表作のひとつです。
舞台は大阪の中学校です。
そこに容姿端麗、何をしても完璧な転校生がやってきます。
しかし、その転校生には妙なところがあり、雨を「放射能が含まれている」と極端に怖がったり、飛行機の爆音に驚いたり、科学文明を嫌ったりと、妙なところがあります。
となると、だいたいラストは見えてくると思います。
1965年から連載開始なので、時代背景もあるかとは思います。
主人公が何らかの困難と戦うことで物語を盛り上げていくのがよくあるパターンですが、本書では困難と闘うことはほとんどなく、むしろ苦しんでいるのは「なぞの転校生」であることを考えると、ちょっと物足りなく感じます。
主人公とセットの女子生徒もいるのですが、援助者でもなく物語を進める推進役でもなく、立ち位置があいまいなように感じました。
本書はNHKやテレビ東京でテレビドラマ化されています。
眉村卓の代表作のひとつを読みたいひとのために!
舞台は大阪の中学校です。
そこに容姿端麗、何をしても完璧な転校生がやってきます。
しかし、その転校生には妙なところがあり、雨を「放射能が含まれている」と極端に怖がったり、飛行機の爆音に驚いたり、科学文明を嫌ったりと、妙なところがあります。
となると、だいたいラストは見えてくると思います。
1965年から連載開始なので、時代背景もあるかとは思います。
主人公が何らかの困難と戦うことで物語を盛り上げていくのがよくあるパターンですが、本書では困難と闘うことはほとんどなく、むしろ苦しんでいるのは「なぞの転校生」であることを考えると、ちょっと物足りなく感じます。
主人公とセットの女子生徒もいるのですが、援助者でもなく物語を進める推進役でもなく、立ち位置があいまいなように感じました。
本書はNHKやテレビ東京でテレビドラマ化されています。
眉村卓の代表作のひとつを読みたいひとのために!
【書評】二間瀬敏史『宇宙人にいつ、どこで会えるか? ~地球外生命との遭遇~』 [書評]
未知との遭遇はワクワクします。
地球外生命体に関する本は、定期的に出版されます。
前半は同じような内容なのですが、新しければ新しいほど、最新の知見が反映されて勉強になります。
本書は地球外生命体捜索の歴史から始まります。
そこから惑星ができるまで、ハビタブルゾーンについて、地球外生命体がいる可能性がある有力候補へと続きます。
本書は2017年なので、2016年の火星探査や、2016年にハッブル望遠鏡がエウロパが水蒸気らしいガスを吹き上げたことを発見した情報が盛り込まれています。
宇宙探査技術が進み、いまや生命の痕跡をスペクトル分析で判別することもできるそうです。
ただ、そのためには巨大な望遠鏡が必要であり、これも2020年代に完成する可能性があります。
また、地球外生命体の最有力候補であるエウロパに探査機を送り込む計画もあるそうです。
いろいろと夢が広がります。
宇宙への興味が尽きないひとたちのために!
地球外生命体に関する本は、定期的に出版されます。
前半は同じような内容なのですが、新しければ新しいほど、最新の知見が反映されて勉強になります。
本書は地球外生命体捜索の歴史から始まります。
そこから惑星ができるまで、ハビタブルゾーンについて、地球外生命体がいる可能性がある有力候補へと続きます。
本書は2017年なので、2016年の火星探査や、2016年にハッブル望遠鏡がエウロパが水蒸気らしいガスを吹き上げたことを発見した情報が盛り込まれています。
宇宙探査技術が進み、いまや生命の痕跡をスペクトル分析で判別することもできるそうです。
ただ、そのためには巨大な望遠鏡が必要であり、これも2020年代に完成する可能性があります。
また、地球外生命体の最有力候補であるエウロパに探査機を送り込む計画もあるそうです。
いろいろと夢が広がります。
宇宙への興味が尽きないひとたちのために!
【書評】懸秀彦『地球外生命は存在する! ~宇宙と生命誕生の謎~』 [書評]
ロマンあふれる新書です。
地球外生命が存在するかどうかと問われたら、「ある」と考えるのが普通でしょうか。
宇宙には膨大な数の惑星があり、地球のように生命誕生に適した惑星がないと考えるほうがおかしいです。
そんな地球外生命について、探索の歴史、そもそも生命とは何か、生命を構成する元素の起源などを、コンパクトにまとめています。
遺伝子情報はDNAで伝達されますが、DNAはどうやって生まれたのか、どこからやってきたのか。
RNAから誕生し、というのが本書時点ので有力仮説のようですが、ではRNAはどこから来たのか。
そこまで解明されれば、生命誕生のなぞに迫れそうです。
あともう一歩というところですが、ここからが長いのが科学の常です。
宇宙にロマンを感じたいひとのために!
地球外生命が存在するかどうかと問われたら、「ある」と考えるのが普通でしょうか。
宇宙には膨大な数の惑星があり、地球のように生命誕生に適した惑星がないと考えるほうがおかしいです。
そんな地球外生命について、探索の歴史、そもそも生命とは何か、生命を構成する元素の起源などを、コンパクトにまとめています。
遺伝子情報はDNAで伝達されますが、DNAはどうやって生まれたのか、どこからやってきたのか。
RNAから誕生し、というのが本書時点ので有力仮説のようですが、ではRNAはどこから来たのか。
そこまで解明されれば、生命誕生のなぞに迫れそうです。
あともう一歩というところですが、ここからが長いのが科学の常です。
宇宙にロマンを感じたいひとのために!
【書評】今日泊亜蘭『光の塔』 [書評]
日本SFの古典です。
今日泊亜蘭は1910年生まれです。元号だと明治43年になります。
『光の塔』の初版が1962年なので、52歳の作品となります。
日本SF第一世代のデビューが1963~1970年代なので、彼らの先駆けと言えるかもしれません。
海野十三など今日泊亜蘭より先に長編SFを発表した作家はいましたが、「SF専門作家による長編SF」としては第1号という意味で価値のある作品です。
さて作品ですが、時代は人類が宇宙を自由自在に飛び回るようになった未来が舞台です。
物語は、突然電気が止まるという怪現象から始まります。
そこから謎の集団による地球侵略が始まり、築かれた塔から放たれる光が東京を焼き尽くしていきます。
この彼らの正体は……というストーリーです。
明治生まれだから、というわけでもないでしょうけど、文章は美文体の系統を引いていると感じました。
もちろん本物の美文体のようにコテコテとした装飾がついているわけではありませんが、美文体のキモである「語って聞かせる文章」なのかなあというのが実感です。
目で読むと分かりにくいですが、頭の中で言葉として再生して聞くと、スラスラと読める。
そんな不思議な文体で、古き良き日本という感じがしました。
設定は未来ですが、あらゆるところに戦前感が満載です。
日本SFの古典を楽しみたいひとのために!
今日泊亜蘭は1910年生まれです。元号だと明治43年になります。
『光の塔』の初版が1962年なので、52歳の作品となります。
日本SF第一世代のデビューが1963~1970年代なので、彼らの先駆けと言えるかもしれません。
海野十三など今日泊亜蘭より先に長編SFを発表した作家はいましたが、「SF専門作家による長編SF」としては第1号という意味で価値のある作品です。
さて作品ですが、時代は人類が宇宙を自由自在に飛び回るようになった未来が舞台です。
物語は、突然電気が止まるという怪現象から始まります。
そこから謎の集団による地球侵略が始まり、築かれた塔から放たれる光が東京を焼き尽くしていきます。
この彼らの正体は……というストーリーです。
明治生まれだから、というわけでもないでしょうけど、文章は美文体の系統を引いていると感じました。
もちろん本物の美文体のようにコテコテとした装飾がついているわけではありませんが、美文体のキモである「語って聞かせる文章」なのかなあというのが実感です。
目で読むと分かりにくいですが、頭の中で言葉として再生して聞くと、スラスラと読める。
そんな不思議な文体で、古き良き日本という感じがしました。
設定は未来ですが、あらゆるところに戦前感が満載です。
日本SFの古典を楽しみたいひとのために!
【書評】山田正紀『神狩り』 [書評]
山田正紀の商業誌デビュー作であり、第6回星雲賞日本短編作品部門を受賞作です。
主人公は情報工学者です。
ある遺跡で未発見の古代文字の調査にかかわるのですが、落盤事故で文字は消え、さらに謎の人物が現れては姿を消します。
主人公が古代文字を分析したところ、人間では扱えない言語であることを発見します。
これは神の言語ではないのか。
遺跡で登場した謎の人物は、実は神に協力して、神の証である古代文字を破壊する活動をしていた。
そして、主人公は神と戦う決心をする。
というのが大まかなストーリーです。
その後、多くの作品を発表する人気作家になるだけあって、リーダビリティは高いです。
wikiにも書かれているように「古代文字=神の文字」というワンアイデアストーリーで、あとは青春小説とも、冒険小説ともよめます。
登場人物が次々と死んでいくので、ハードボイド的な味わいとして読むこともできるかもしれません。
発表が1974年であり、日本SF初期を感じさせられる作品だと思います。
山田正紀のデビュー作を楽しみたいひとのために!
主人公は情報工学者です。
ある遺跡で未発見の古代文字の調査にかかわるのですが、落盤事故で文字は消え、さらに謎の人物が現れては姿を消します。
主人公が古代文字を分析したところ、人間では扱えない言語であることを発見します。
これは神の言語ではないのか。
遺跡で登場した謎の人物は、実は神に協力して、神の証である古代文字を破壊する活動をしていた。
そして、主人公は神と戦う決心をする。
というのが大まかなストーリーです。
その後、多くの作品を発表する人気作家になるだけあって、リーダビリティは高いです。
wikiにも書かれているように「古代文字=神の文字」というワンアイデアストーリーで、あとは青春小説とも、冒険小説ともよめます。
登場人物が次々と死んでいくので、ハードボイド的な味わいとして読むこともできるかもしれません。
発表が1974年であり、日本SF初期を感じさせられる作品だと思います。
山田正紀のデビュー作を楽しみたいひとのために!
【書評】森下一仁『ヤング・インディ・ジョーンズ6 初恋のウィーン』 [書評]
インディ・ジョンズ若き日の物語です。
米国ドラマのノベライズです。
インディ・ジョーンズの若き日の冒険を描いた物語ですが、このドラマには教育の意味があったらしく様々な歴史上の人物や、科学者が登場します。
この6の舞台はウィーンですが、サラエボで暗殺されて第一次世界大戦の発端となったフェルナンド公と、心理学の泰斗であるフロイト、ユング、アドラー。さらには画家だったころのヒトラーも登場します。
ストーリーとしては、フェルナンド公の娘であるゾフィーとインディが馬術学校で出会い、ローマの休日のようにひとときの脱出をして、恋に落ちます。
もちろんすぐに二人は引き裂かれるのですが、インディがウィーンを離れる前日に、ゾフィーにプレゼントを贈るために屋敷に忍びこみます。
まあ、無茶といえば無茶なストーリーですが、そこはインディなので。
インディの前には様々な困難が待ち受けますが、そこと機転と、大人たちの助けをうけてなんとか突破してゾフィーのもとにたどり着きます。
困難、突破、困難、突破が連続する児童文学の基本に沿った作りだと思います。
史実のゾフィーは、1920年に結婚するも子供のうち息子2名は第二次世界大戦で戦死し、戦後は全財産を没収されるなど苦労が絶えなかったようですが、89歳の天寿を全うして1990年に亡くなりました。
映画とは異なるインディのストーリーを楽しみたいひとのために!
ヤング・インディ・ジョーンズ〈6〉初恋のウィーン (文春文庫)
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2021/10/03
- メディア: 文庫
米国ドラマのノベライズです。
インディ・ジョーンズの若き日の冒険を描いた物語ですが、このドラマには教育の意味があったらしく様々な歴史上の人物や、科学者が登場します。
この6の舞台はウィーンですが、サラエボで暗殺されて第一次世界大戦の発端となったフェルナンド公と、心理学の泰斗であるフロイト、ユング、アドラー。さらには画家だったころのヒトラーも登場します。
ストーリーとしては、フェルナンド公の娘であるゾフィーとインディが馬術学校で出会い、ローマの休日のようにひとときの脱出をして、恋に落ちます。
もちろんすぐに二人は引き裂かれるのですが、インディがウィーンを離れる前日に、ゾフィーにプレゼントを贈るために屋敷に忍びこみます。
まあ、無茶といえば無茶なストーリーですが、そこはインディなので。
インディの前には様々な困難が待ち受けますが、そこと機転と、大人たちの助けをうけてなんとか突破してゾフィーのもとにたどり着きます。
困難、突破、困難、突破が連続する児童文学の基本に沿った作りだと思います。
史実のゾフィーは、1920年に結婚するも子供のうち息子2名は第二次世界大戦で戦死し、戦後は全財産を没収されるなど苦労が絶えなかったようですが、89歳の天寿を全うして1990年に亡くなりました。
映画とは異なるインディのストーリーを楽しみたいひとのために!
【書評】光瀬龍『派遣軍還る S-Fマガジン版』 [書評]
光瀬龍の初長編です。
『派遣軍還る』は二種類あります。
ひとつは1960年に同人誌『宇宙塵』で連載されたもので、2種類目は1981年に早川書房から出版された際に書き直したバージョンです。
ストーリーはいうと、宇宙に様々な超大国が割拠する時代に、ある国の派遣軍が何者かにやられてしまいます。
で、主人公もいろいろな組織から追われて、うんぬんかんぬん。
スペースオペラを書きたかったんだろうなあ、という熱意を感じる作品です。
途中で組織図とかでてきたり、いかにも昭和テイストです。
のちのSF大家の若かりし作品を読みたいひとのために!
『派遣軍還る』は二種類あります。
ひとつは1960年に同人誌『宇宙塵』で連載されたもので、2種類目は1981年に早川書房から出版された際に書き直したバージョンです。
ストーリーはいうと、宇宙に様々な超大国が割拠する時代に、ある国の派遣軍が何者かにやられてしまいます。
で、主人公もいろいろな組織から追われて、うんぬんかんぬん。
スペースオペラを書きたかったんだろうなあ、という熱意を感じる作品です。
途中で組織図とかでてきたり、いかにも昭和テイストです。
のちのSF大家の若かりし作品を読みたいひとのために!
【書評】山尾悠子『夢の棲む町/遠近法』 [書評]
独特な幻想性あふれる物語です。
SFマガジンで作品を発表してきたことから、山尾悠子はSFにカテゴライズされていますが、基本的には幻想文学です。
本書では4編の短編が収録されていますが、どれも絵のような作品です。
『夢の住む町』は不思議な街をバクが小噺をもとめて歩き回る話です。吉田篤弘『ブランケット・ブルームの星型乗車券』をふっと思い出しました。
『遠近法』は小説の草稿という設定で、腸詰宇宙というナゾの宇宙についての解説が続きます。
『傳説』『繭』は短くて、スケッチのような感じです。
4編を通じてですが、「死」とか「滅亡」といったイメージなのかなと思いました。
独特な幻想性を堪能したいひとのために!
SFマガジンで作品を発表してきたことから、山尾悠子はSFにカテゴライズされていますが、基本的には幻想文学です。
本書では4編の短編が収録されていますが、どれも絵のような作品です。
『夢の住む町』は不思議な街をバクが小噺をもとめて歩き回る話です。吉田篤弘『ブランケット・ブルームの星型乗車券』をふっと思い出しました。
『遠近法』は小説の草稿という設定で、腸詰宇宙というナゾの宇宙についての解説が続きます。
『傳説』『繭』は短くて、スケッチのような感じです。
4編を通じてですが、「死」とか「滅亡」といったイメージなのかなと思いました。
独特な幻想性を堪能したいひとのために!
【書評】眉村卓『ねらわれた学園』 [書評]
何度もドラマ化、映画化されたジュブナイル小説の金字塔です。
舞台は中学校です。
進学校ですがいたずらが頻発し、その風紀を改めようと独りの女子生徒が会長職に立候補して当選します。
しかもこの女子生徒は超能力者で、反対する生徒に頭痛を起こしたり、跳ね飛ばしたりすることができます。
新会長は生徒会の決議を取り「校内パトロール」を開始し、些細な違反で生徒たちを指弾し、中学校を支配していきます。
主人公のクラスは生徒会に反発し、いよいよ対決へと向かいます。
本書は1973年作の古い作品ですが、何度も映像化されているだけ、ムチャクチャ面白いです。
読みやすさと物語に引き込む序盤の仕掛けが絶品です。
冒頭で、会長職になる女子生徒の手先である生徒がクラスで正論をぶって、軽い波乱を起こします。
ここで物語のテーマとキャラを説明しつつ、大問題が発生しそうな予兆というか、期待感を読者にもたせます。
ここまで文庫本でP6~P15なのでわずか9ページです。
ここから主敵である会長職が登場し、ファシズムで中学を支配し……と、怒涛の展開です。しかもキャラは絞り込まれており、不必要な人物がまったくいません。全員が、物語のなかで、それなりに役割をきっちり果たしています。
おそらくですが、ベースになっているのは1969年にアメリカで行われたサード・ウェーブ実験ではないかと思います。
高校教師のジョーンズが、ファシズムの恐ろしさを体験させるためにわずか4日間で完全に洗脳してしますのですが、途中までのストーリーは完全にこの流れです。
本書のラストについては、いま読み返すと甘い部分があるかもしれません。
それでも、傑作であることには変わりがないと思います。
蛇足ですが、当時の眉村卓はSFマガジンを中心に活躍していましたが、早川書房の原稿料は安く、編集者である福島正実はその穴埋めとばかりに、他社のジュブナイル小説の仕事の斡旋をしていたそうです。
だからかもしれませんが、当時のSF作家の多くはジュブナイル小説を手がけています。
後世の読者からすれば、ありがたい限りです。
ジュブナイル小説の金字塔を堪能したい人のために!
舞台は中学校です。
進学校ですがいたずらが頻発し、その風紀を改めようと独りの女子生徒が会長職に立候補して当選します。
しかもこの女子生徒は超能力者で、反対する生徒に頭痛を起こしたり、跳ね飛ばしたりすることができます。
新会長は生徒会の決議を取り「校内パトロール」を開始し、些細な違反で生徒たちを指弾し、中学校を支配していきます。
主人公のクラスは生徒会に反発し、いよいよ対決へと向かいます。
本書は1973年作の古い作品ですが、何度も映像化されているだけ、ムチャクチャ面白いです。
読みやすさと物語に引き込む序盤の仕掛けが絶品です。
冒頭で、会長職になる女子生徒の手先である生徒がクラスで正論をぶって、軽い波乱を起こします。
ここで物語のテーマとキャラを説明しつつ、大問題が発生しそうな予兆というか、期待感を読者にもたせます。
ここまで文庫本でP6~P15なのでわずか9ページです。
ここから主敵である会長職が登場し、ファシズムで中学を支配し……と、怒涛の展開です。しかもキャラは絞り込まれており、不必要な人物がまったくいません。全員が、物語のなかで、それなりに役割をきっちり果たしています。
おそらくですが、ベースになっているのは1969年にアメリカで行われたサード・ウェーブ実験ではないかと思います。
高校教師のジョーンズが、ファシズムの恐ろしさを体験させるためにわずか4日間で完全に洗脳してしますのですが、途中までのストーリーは完全にこの流れです。
本書のラストについては、いま読み返すと甘い部分があるかもしれません。
それでも、傑作であることには変わりがないと思います。
蛇足ですが、当時の眉村卓はSFマガジンを中心に活躍していましたが、早川書房の原稿料は安く、編集者である福島正実はその穴埋めとばかりに、他社のジュブナイル小説の仕事の斡旋をしていたそうです。
だからかもしれませんが、当時のSF作家の多くはジュブナイル小説を手がけています。
後世の読者からすれば、ありがたい限りです。
ジュブナイル小説の金字塔を堪能したい人のために!