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【掌編】齊藤想『ライオンの時間』 [自作ショートショート]

2022年超ショートショートに応募した作品です。
テーマは選択制ですが、「ライオンの像」を選びました。
本作は「掌編」と「ショートショート」の差を意識して書いた作品です。

※具体的な技法はこちらのニュースレターで紹介します。次回は3/5発行です。


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『ライオンの時間』 齊藤 想

 デパートの前に飾られているライオン像。このライオン像が深夜に散歩していることを知る顧客はまだ少ない。
 デパートとしての威厳を守るため、昼間のライオン像は仕方なくすまし顔で座っている。子供に鼻面を叩かれたり、荷物置き場として使用されたり、さらには背中に乗られて写真を撮られても、まばたきもせず我慢している。
 だからこそ、人通りが絶える深夜はライオンの時間なのだ。特に定休日前の深夜は最高だ。最後の従業員が帰宅し、終電が終わり、タクシーの波も途絶えたころを見計らって、ライオンは走り出す。
 街灯を避けながら路地を疾走し、ときには漆黒の空に咆哮を轟かせる。野良犬も野良ネコもドブネズミも、みんなが百獣の王たるライオンにひれ伏す。
 人間どもは恐れるに足りない。目撃されても、睨みつけるだけで、人間どもの記憶を吹き飛ばす力をライオン像は持っているのだ。
 十分に体を動かし、満足したらライオン像はデパートに戻る。そして、元と同じ姿勢で座り続ける。
 ライオン像はデパートの威厳を守るため、今日も行き交う人々を見守り続けている。

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