SSブログ

【掌編】齊藤想『公園新聞』 [自作ショートショート]

2022年超ショートショートに応募した作品です。
テーマは選択制ですが、「新聞」を選びました。

―――――

『公園新聞』 齊藤 想

 早川宗太は、公園の掲示板に張り出される新聞、公園新聞を楽しみにしていた。
 だれが書いて、だれが張り出しているのか分からない。記事の範囲は極端に限定されていて、公園内の出来事しか紙面に載らない。オオイヌフグリが青い花を付けましたとか、シラカシの木のうろにシジュウカラが巣を作りましたとか、ベンチで男子高校生が同級生の女子に愛をささやきましたとか、そんな他愛のない話題ばかりだ。
 発行者は紙面に様々な工夫を凝らしている。スペースは限られているのにもかかわらず、四コマ漫画や読者投稿コーナだけでなく、『カマキリ殺虫事件』というミステリ小説まで押し込んでいる。作者はコウロギ太郎となっている。様々な恨みがこもっているのだろうなと思うと、少し笑みがこぼれてしまう。
 この新聞を読んだところで、世の中のことが分かるわけではない。学校の成績が伸びるわけでもない。けど、この新聞を読めば公園のことが全てわかる。記事に不思議なぬくもりがある。なにしろ、公園に対する愛が溢れている。
 そして、大人になった宗太は地元新聞の記者になった。いつか公園新聞のような不思議なぬくもりに溢れる記事を書きたいと思って。

―――――

この作品を題材として、創作に役立つミニ知識をメルマガで公開しています。
無料ですので、ぜひとも登録を!

【サイトーマガジン】
https://www.arasuji.com/mailmagazine/saitomagazine/
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。