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kyozyさん『助さん、格さん。俺だよ、俺オレ!』 [ショートショートの紹介!]

世の中には様々なパロディ作品が溢れています。
その中でも、ネタ元として人気なのは、童話では”桃太郎”。
テレビドラマでは”水戸黄門”ではないかと思います。

今回紹介するのは、水戸黄門のパロディ作品です。
素直に笑える痛快作なので、ぜひとも軽快な気分でお楽しみください!


【HP:クロヒス諸房】
http://ameblo.jp/kyozy-tohno/

【記事】
http://ameblo.jp/kyozy-tohno/entry-11068847629.html#c11560738951

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『助さん、格さん。俺だよ、俺オレ!』  kyozy
 
 
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「……ご隠居様?」

「あ、そうそうオレだよ、じじいのみっちゃんだよ! 
 実はさあ、出来心で江戸城の金に手つけちゃってさ。
 このままだと副将軍クビんなっちゃうんだよね!
 だからさ! ホント申し訳ないんだけど、
 今晩吉原の入り口、衣紋坂で待ってるからさ。
 五百両! 五百両だけ、ちょっと持ってきてくんねーかな!
 悪い、ごめんねホント! じゃよろしく!」

それは、旅篭で一息ついていた助三郎のスマホ(スマートほら貝)への、突然の着信だった。
相手の声は、確かにいつものご老公。だがしかしやけに軽妙に、まくし立てるような早口で言うだけ言って、一方的にぶちりと切られてしまったのだ。

「どう思う、格さん。着信は確かに、ご隠居のケータイからのものだったんだが……」

眉間にしわを寄せて悩む助三郎に、格之進は肩をすくめて見せる。

「ま、今流行の何とか詐欺って奴だろう。あのご隠居がご公儀の金子に手を着ける等、考えられない事だからな」

端から電話の相手を信じていない格之進。
さらりと言ってのけられたその言葉に、助三郎も納得し頷く。

「そうだな。増してやご隠居は幼少の頃から、3つ以上の数字はすべて”いっぱい!”としか数えた事が無いほどの高潔なお方だ。五百両などという大金が、頭に浮かぶはずもないな」

そうしてほどなく助三郎も、電話の事はさらりと忘れ去ってしまったのだった。


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「どうやらお仲間は来ねえようだな」

夜の帳の下、煌々と燃える吉原の灯火。
衣紋坂で仁王立ちに構えている大男達が、光圀公を嘲笑う。

「くうっ、助さんに格さん。いざとなると冷たいもんじゃのう……」

頑丈な荒縄で、全身をやけに複雑な網目状に縛られた光圀公が、口惜しそうにそう漏らした。
助さんのスマホ(スマートほら貝)への着信は、確かに光圀公ご本人からのものではあった。

さすがのご隠居、ご老公と言えど、人助けばかりでは肩が凝る。
たまにはストレス発散とばかりに、遊郭で一晩(大富豪で)遊びに遊んだ結果、
突きつけられた請求は正しく、五百両ポッキリ。

持ち合わせの無い光圀公は、詰め寄ってきた若い衆の前を前に大慌て。頼みの印籠も無い。
連れに払わせるからと電話をかけたはいいものの、事を荒立てたくは無い。
呼び出し音が鳴る間悩みに悩み、結果あのようなファンキーな形で助けを求めてしまったというのが、事の真相であった。

「そいじゃ爺さん。ちと申し訳ないが、身体で払ってもらおうかね!」

いっせいに服を脱ぎ始める若い衆。
厚い胸板、つやつやの肌。たいまつの炎を艶かしく照らす汗。
淫靡な何かを思わせるご老公のお縄姿に、男達はもう臨界の可能性が極めて高かったのだ。

仕方ない、とでも言わんばかりに、重いため息を吐く光圀公。

「やれやれ。こんな老骨で面目ない限りじゃが、お望み通り身体で払うと致しますか」

若い衆の一人が、息を荒げながら光圀公の戒めを解く。
ほどけた縄と共に、はらりと落ちる羽織の音。
そして。

縄を解いた男の顎に、深々と食い込む光圀の拳。
声も上げずにどうと倒れこむ、哀れな犠牲者の最初の一人目。

「て、てめえ! 何を……っ!」

頭目らしき一際背の高い男が、老人の突然の反目に狼狽を見せる。

「ええい、控えおろう!」
「ぐぇぁ!」
「控えおろう!」
「ぬふぅ!」

言う間に二人の荒くれ者が、鳩尾に重い肘撃を刺し込まれ、悶絶する。

「ここにおわすワシを!」
振り下ろされる丸太をいとも容易く掌打で払い、音速の拳で鼻を折る。

「何方と心得る!」
抜き身の匕首をぐいと引き寄せ、重い頭突きでえいやと打ち据える。

「畏れ多くも先の副将軍……!」
四方から放たれた縄の網を、気合一閃、薙ぎ払った腕の風圧で弾き飛ばす。

「水戸! 光圀公! ご本人! で! あるぞ!」
裂帛の一言一句をその身に叩き込むように、人中を打ち、脾臓を蹴り、関節を極め、骨を砕く。
及び腰になった吉原の守人達を、容赦の一片も見せず次々と打ち倒す。

「頭が高い、控えおろう!」
と、日頃は格之進に任せきりだった決まり文句を言い終える頃には、既に頭を高く持ち上げられている者は、この場に誰一人として残ってはいなかった。


こうして、借金苦に困る善良な民がまた一人、ご老公のやさしいお人柄に、その身を救われたのでありました。


続ぬ


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よい子のおじいちゃんおばあちゃん!
振り込め詐欺はしないように気をつけようね!

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kyozyさんは本作以外にも楽しい水戸黄門のパロディ作品を公開しています。
ぜひともkyozyさんのブログにお邪魔して、そちらも合わせてお楽しみください!
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