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【書評】高野秀行・岡部敬史・さくらはな『将棋「観る将になれるかな」会議』 [書評]

将棋を”観る”ひとたちのためのガイドブックです。


将棋「観る将になれるかな」会議 (扶桑社新書)

将棋「観る将になれるかな」会議 (扶桑社新書)

  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2019/06/30
  • メディア: 新書



将棋は指すものから見るものへと変わりつつあります。
そんな「観る将」のために、より楽しく将棋を観るためのガイドブックが本書です。
将棋の歴史はもちろんのこと、よく聞くけど意味が分かりにくい将棋用語も対談型式で説明してくれます。
高野六段の説明は分かりやすく、意外な才能に驚きです。
後半は”あじあじ”こと安食女流初段の登場です。天然キャラで有名です。
高校三年生から女流棋士を目指し、女流棋士育成会入会前日に四間飛車を教わり、基本定跡を知らずに圧敗する話など、とにかくナチュラルに面白いです。将棋界はある意味で人材の宝庫です。
ときおりはさまっている漫画も楽しいです。

観る将のハンドブックとしてぜひ!
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【公募情報】第9回54字の文学賞(短文・5/31〆) [公募情報]

超短編公募です。

〔主催者HP〕
https://www.php.co.jp/news/2022/02/54bungaku9.php

ルールは簡単。54文字ぴったりに収めること。1文字のオーバーも、1文字足りないのも許されません。
今回のお題は「54字のクイズ」です。クイズは穴埋め形式で、これは主催者HPの例を見るのが早いと思います。
応募はツイッターかハガキになることに注意してください。
応募締切は5月31日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:短文
テーマ :54字のクイズ
大  賞:1万円分の図書カード
制限文字数:54字丁度
応募締切:令和4年5月31日
応募方法:ツィッター、はがき
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【書評】宿野かおる『ルビンの壺が割れた』 [書評]

宿野かおるのデビュー作です。


ルビンの壺が割れた (新潮文庫)

ルビンの壺が割れた (新潮文庫)

  • 作者: 宿野 かほる
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: 文庫



宿野かおるは覆面作家です。
この作品は友人同士の会話の中から着想を得たとのことで、あくまで趣味として書いたようです。
それがある経緯で出版社の手に渡り、最初はデビューするつもりがなかったのに、説得されて、こうして本になったそうです。
ストーリーは往復書簡で進みます。
男性がFACEBOOKで昔の婚約者と思わしき人物を見つけ、メッセージを送ります。
その婚約者は、男性と結婚式を挙げる当日に現れず、失踪していました。
それから30年。メッセージは現在と二人が愛し合った大学時代を往復しながら、お互いが抱え続けてきた秘密が明らかにされます。
そして、最後の1行が強烈です。
評判は賛否両論です。ミステリマニアからすると、アラが目につくかもしれません。
しかし、エンターテイメントとして読むと本当に面白く、久しぶりに時間を忘れて読んだ気がします。
これは素直におすすめです。

読書を楽しみたいひとのために!
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【公募情報】第13回服育標語ポスター(標語・7/15〆) [公募情報]

服育とは、衣服の大切さやその力について理解し、私達の暮らしに活かす力を養う取り組みとのことです。

〔主催者HP〕
https://www.fukuiku.net/poster_category/apply#form

主催者HPには以下のように書かれています。
「衣服は生活を支える三要素「衣食住」の一つでありながら、おしゃれの観点から語られることが多く、私達の生活を支える様々な役割を担っているものであると意識されることは少ないのではないでしょうか。」
確かにその通りだな、と思います。
普段着の重要性は見過ごされているかもしれません。
ただ、本公募のテーマは「スクールユニフォーム」であることに留意してください。
応募締切は令和4年7月15日です!

<募集要項抜粋>
募集内容:標語
テーマ :スクールユニフォーム
最優秀賞:図書カード5000円分
応募締切:令和4年7月15日
応募方法:インターネット

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第80期名人戦第1局(渡辺明名人VS斎藤慎太郎八段) [将棋]

斎藤八段が2年連続の名人挑戦です。

〔主催者サイト〕
http://www.meijinsen.jp/

名人戦において、2連連続の挑戦という例はあまり多くはありません。
2012年、2012年の羽生善治(名人は森内俊之)、1979年、1980年の米長邦雄(名人は中原誠)、その前は升田幸三まで遡ります(名人は大山康晴)。
失陥してからのリベンジマッチで2年連続の同一カードはそれなりにあるのに、連続挑戦になると一気に減るのが不思議です。A級順位戦を2年連続で勝ち切る力があるのなら、名人を奪取する力があるという意味なのかもしれません。確かに挑戦者の名前を見ると、歴史に残る名棋士ばかりですし、挑戦を受ける名人も、これまた全員が永世名人という豪華さです。
斎藤八段は2年連続で8勝1敗なので、堂々たる成績だと思います。
前期は1-4で力の差を見せつけられた斎藤八段ですが、Abema師弟トーナメントで優勝した勢いで、今期は幸先の良いスタートを切れるでしょうか!


〔棋譜※徹底解説!将棋の定跡 様より〕
https://www.youtube.com/watch?v=bWBOw269ePM

将棋は矢倉となりました。
渡辺名人はここ一番の将棋には矢倉を採用するイメージがあります。先手番ですし、初戦を取りに来たのでしょう。
途中まで前例のある将棋でしたが、43手目の9五歩から未知の局面になります。
斎藤八段が6四角と八方にらみの角を放ちますが、その構想を全否定するかのように渡辺名人は5八飛車と回ります。
ここでお互いの主張がぶつかります。
斎藤八段は4五歩とついて銀をどかして香車を取りながら角を成りこみますが、ここから渡辺名人の猛攻が始まります。
1日目終了の時点で、先手がかなり優勢になります。
2日目はいかに斎藤八段が粘り、混とんとした局面に持ち込めるかの勝負です。
斎藤八段は馬を引き付けて粘りの姿勢を見せますが、その馬を消されて、丁寧に指されるとさらにリードを広げられたイメージです。駒損の上に、1~3筋の金銀桂×2香が働いていないのが痛すぎます。
107手まで渡辺名人が完勝し、まずは防衛に向かて幸先の良い1勝を挙げました。
斎藤八段は序盤の構想ミスにより、力を発揮できないまま押し切られた印象です。

名人戦第2局は、4月19日、20日に、金沢市「金沢犀川温泉 川端の湯宿滝亭」で行われます!
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創作状況【4月上旬】 [ぼくの公募状況]

Yomeba!ショートショート公募17回で、一次選考を突破しました。

【第175回の内容紹介】
◆こんな公募に挑戦してきました ~ 第18回坊ちゃん文学賞 ~
◆小説でもどうぞ!に挑戦中(第6回)
◆おまけのもう1作
◆公募情報数点

 来月のテーマは「新しいことに挑戦するときの注意」です。
 次回発行は5月5日です。メルマガは無料なので、ドンドン登録してください!
 https://www.arasuji.com/mailmagazine.html
 ※ページの下の方に登録フォームがあります。

【ショートショートガーデン】
昔話シリーズをしてみようかと。まずは第1段です。
〔シンデレラ〕
https://short-short.garden/S-uCTska

【小説でもどうぞ】
今月の作品を書ききる。あらすじの森の三題噺ででてきたのが、「七面鳥 お盆 入れ替わり」。ここにテーマである「冒険」を加えてストーリーを作っていく。
いろいろ迷走して冒険からかなり離れてしまったが、個人的には満足のいくストーリーに仕上がった。
あとは推敲ですね、はい。

【yomeba!】
第17回募集(テーマ「絵」)で自作『古絵』が一次選考を突破しました。
ありがたいことです。
来週は優秀作の発表です。ドキドキです。

【星新一賞】
第6回星新一賞受賞作品を順番に読んでいます。

・優秀賞 『KNIKAMA』 竹内正人
人工食材をテーマにした話です。
人工的に作られた食材で寿司を握る職人と、それを味わうグルメ評論家との一本勝負が楽しい作品です。オチも決まっています。味わいの描写も良いです。
気になるところといえば、冒頭がもっさりしているところぐらいでしょうか。説明を入れずにすっと物語に入れるシーンを練ってくれれば、さらによかったと感じます。
子気味良くまとまった佳作だと思います。

【坊っちゃん文学賞】
第18回受賞作品を順番に読んでいきます。

・大 賞 『月光キネマ』椿あやか
民話をベースにしたストーリーです、主人公は大人たちから禁止されていたのにもかかわらず、歌に引き寄せられて深夜の浜辺に出てしまいます。
そこで、道化にさそわれて、「月光キネマ」を見てしまいます。
本作ですが、大変申し訳ないのですが、自分的には受け入れがたい作品です。
物語の系列としては因果応報譚ですが、主人公の罪は罰すべき罪とは思えません。
主人公は溺れかかって友人の脚を引っ張ったことを悔いていますが、これは人間のサガです。太平洋戦争でも同様の話はよくあります。元兵士たちは、自らの行いを一生悔いています。生きるか死ぬかの瀬戸際では仕方がないことだと思います。
これを第三者が罪として罰するのは、安全安心な立場にいるから言える偽善にすぎないと感じます。
そもそも、通りかかった漁船に問題がありあす。浮き輪を投げるぐらい接近していたので2人が溺れているのが見えたはずです。それなのに、なぜ主人公しか助けなかったのかが分かりません。主人公も船員に「もう1人溺れている」と言えばいいのに、なぜそう訴えなかったのかも理解できません。
ストーリーの都合上、その辺りは検討しなかったのだと思いますが、あまりに冷たいと思います。漁船の船長が罰せられる話なら、まだ辻褄が合うとは思いますが。また、罰が海亀になるというも、海亀に失礼です。
個人的には、とても残念な作品です。

【ちくま800字文学賞】
3月末で投稿完了。やっぱり短い物語を書くのは楽しいですね。自分の性にあっています。今後も続いて欲しいなあ。
ぴこ蔵さんの三題噺のツールを活用したのですが、かなり強力です。手法を洗練するために、これからも活用して経験値を積もうと考え中。
発表はたぶん6月1日。

【その他モロモロ】
・川柳の作り方の動画を見る。眼からウロコ。健康(セルメ)川柳を目指してみます。
・「海上保安の日」俳句コンテストに応募してみる。5月12日発表です。
・「旅の日川柳」には同一句を出してしまったかも。5月16日発表です。
・福島正実SF童話賞は時期が近付いたら考える。
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第15期マイナビ女子オープン第1局(西山朋佳女王VS里見香奈女流四冠) [将棋]

西山女王が永世女王に挑みます。

〔中継サイト〕
https://book.mynavi.jp/shogi/mynavi-open/

マイナビ女子オープンの永世称号は5連覇または通算7期です。
まだ15期ということもあり通算7期獲得した女流棋士はなく、連覇も加藤桃子と西山朋佳の4連覇が最高です。
今期、西山女王が防衛に成功すれば連続5期となり初代永世称号を得ることができます。逆にここで落とすと通算7期あ条件となるため、復位してからさらに2期防衛する必要があります。
初代永世称号の獲得なるか、それとも一気に遠ざかるかの大きな勝負です。
ちなにみ他の女流棋戦の永世称号は通算5期であり、マイナビ女子オープンだけ竜王戦に準じた厳しさとなっています。
いまはさらに上位棋戦として白玲戦、清麗戦、女流王座戦がありますが、新設された当時は最上位だったこともあり、このような厳しさになったのかなと思います。
挑戦者は最強の相手といえる里見女流四冠です。
防衛のためには初戦を取りたいところだと思いますが、その結果はどうなったでしょうか!

〔棋譜〕
https://book.mynavi.jp/shogi/mynavi-open/result/15/mynavi202204050101.html

ということで、将棋です。
先手番になったのは里見女流四冠でした。得意の中飛車に構えますが、最近の里見四冠は序盤の自由度が増しているように思います。
相振り飛車になるのを確認すると、玉を左側に囲い、飛車を2筋に戻して対抗形のようになります。
仕掛けたのは里見女流四冠です。玉の固さでは西山女王が有利なので、互角の別れならばというところでしたが、先手の駒が伸び伸びと前進します。
途中の4二歩が手筋で、タダですが取ると後手の当たりが強くなります。
ここで西山女王は攻め合いにスイッチしますが、4六桂の金取を無視して5一飛車回りが絶好でした。
リードを広げた里見女流四冠は、駒得を重ねながら確実に後手玉を追い詰め、111手まで快心の指し回しでまずは1勝を挙げました。
第2局は4月21日(木)に、山梨県甲府市「常盤ホテル」で行われます!

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最近の日常【令和4年4月上旬】 [日常]

〔春なのでネクタイと靴を購入した話〕
なんとなく靴とネクタイとベルトを新調した。
とはいえ、基本的にこだわりがないひとなので、どちらも安物です。
ネクタイを新しくしただけで、スーツも少し新しく見えるのが不思議です。
靴は履きつぶしたら買い替えるので、ときおり購入していますが(というか購入せざるを得ない)、ネクタイとベルトは本当に久しぶりです。以前、購入したのがいつか覚えていない。ベルトにしても基本的にウェストサイズに大きな変化がないので、それほど買い替える必要がなかったといいますか。
これからは、少しは身だしなみに気を付けてみようなあ、けど、いまさらだしなあ。
たぶん、これからもこんなペースで忘れたころに買い替える感じになると思います。はい。

〔オリゴ糖の使い道〕
だいぶ前の話だが、株主優待でオリゴ糖をもらった。
オリゴ糖は「オリゴのおかげやで」の印象が強く、健康食品というイメージでいたのだが、思ったより使い道がない。
甘いことは甘い。だが、それほど強くはない。甘味料としては使いずらい。
健康にはいいといえども、わざわざオリゴ糖を選んで摂取するほどでもないし。
それでどうしようかと思って、ミロに混ぜることにした。
ミロはそんなに甘くないので、オリゴ糖を入れて……やっぱり甘みが足りない。
結局のところ、砂糖を追加するはめになりまして(汗)

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【書評】山川健一『太宰治の女たち』 [書評]

太宰治をめぐる女性を中心とした太宰治論です。


太宰治の女たち (幻冬舎新書 や 6-1)

太宰治の女たち (幻冬舎新書 や 6-1)

  • 作者: 山川 健一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2009/11/27
  • メディア: 新書



『人間失格』で有名な太宰治ですが、その生活はまさに人間失格そのものです。
芸者との結婚に家族から反対されても押し切ったのに、結婚直前に別の女と心中騒ぎを起こして、女性だけ死亡させてしまいます。
その後、芸者と結婚しますが、鎮痛剤のパビナール中毒がひどくなり、実家が大富豪なのに借金をして歩く日々。
最初の結婚は妻が不貞を働き、また心中事件を起こすが結局は離婚。
二人目の妻とはひとときの平和な家庭を築きますが酒びたりで税金や借金といった難事は妻に押し付けている間に大田静子に子供を生ませ、最後は山崎富栄と心中します。
とにかく生活は破綻しています。
著者は大田静子と会ったことがあり、その娘(つまり太宰治の娘)とも交流があります。
著者独自の視点で、なぜ、太宰治にこれらの女性が必要だったのか、なぜこのような人生を歩んでしまったのか、ということを語ります。
軽妙な文章なので、引き込まれるようにして読んでしまいました。

太宰治をもっと知りたいひとのために!
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【SS】齊藤想『愛の手を』 [自作ショートショート]

第18回坊ちゃん文学賞に応募した作品です。

―――――

『愛の手を』 齊藤 想

 福澤氏が、サラリーマン相手の一杯飲み屋とバス路線が集中するターミナル駅を降りると、コンコースには募金箱を持った少年少女が並んでいた。
「貧しい子供たちのために愛の手を」
 見慣れた光景とはいえ、少年少女の無垢な瞳に見つめられると福澤氏はついつい財布を開いてしまう。募金が本当に貧しいひとたちのために使われるのか怪しいものだが、それでも「いいことをした」という満足感は残る。
 福澤氏は数枚の硬貨を募金箱に落とした。
「ありがとうございます」
 三つ編みの少女が頭を下げる。
 くたびれたサラリーマンには、このひとことが、最高の清涼剤となるのだ。
 少年少女たちの隣には、中年のご婦人方が並んでいた。手すりに立て掛けてある看板には、ベッドに横たわる幼い笑顔が貼られている。
「難病で苦しむ少女に、心臓移植のチャンスを!」
 日本国内ではドナーが極端に少ないため、手術を受けるには海外に渡る必要がある。この少女が助かる一方で、この心臓を得られなかった海外の誰かが死ぬ。ある意味では、国際的な命の売買みたいなものではないかという疑問も無きにしもあらずだが、親として何としてもわが子を助けたい気持ちはわかる。自分も二人の幼い子を持つ親なのだ。
 福澤氏は、いつもより多めの金額を募金箱に入れた。
「本当に助かります」
 母親らしき夫人が頭を下げた。自分の子供の顔を思い浮かべる。子は宝だ。ぜひとも助かって欲しい。
 自宅のある郊外へと向かうバス停は、階段の下にある。その階段の手前に、交通事故遺児たちが並んでいた。
「ぼくたちのことを助けてください」
 彼らの訴えは切実だった。無保険車に一家の大黒柱をなぎ倒され、社会的には無一文の状態で路頭に放り出されたも当然だった。
 彼らが頼るのは母親の細々としたアルバイトだけ。生活保護も行政の財政悪化とともに認定が厳しくなり、水道もガスも止められ、まさに日々の糧を得るための戦いを毎日続けている。
 福澤氏は彼らの生活を思うと、涙が止まらない。テレワークが一般的になり、通勤回数が少なくなっているいま、彼らも募金集めが大変だろう。
 募金箱に書かれたストーリーが真実かどうかは検証しようがない。お涙頂戴を狙った創作で、純朴そうな顔をして「またカモをだましてやった」と悪魔の舌を出しているかもしれない。
 それでも、福澤氏は募金箱に札をねじ込むのを止めることができなかった。
「こころから感謝します。ぼくたち頑張って生きます」
 福澤氏は笑顔で手を振った。心の中で、子供たちにエールを送り続けた。
 階段を下りると、バス停のすぐ横で母親と二人の子供が並んで募金箱を抱えていた。よくみると、福澤氏の家族だ。いったい、ここで何をしているのか。
「父親が見境なく募金してしまうので、生活費が足りません。かわいそうな私たちのために、愛の手を」
 福澤氏は自分の子供たちのために何としてでも募金しようと思ったが、すで財布の中身は空っぽだった。
 福澤氏はポケットに残っていたなけなしの小銭を募金箱に放り込むと、家族の横に立ち、一緒になって声を嗄らした。
「かわいそうな私たちの家族のために、愛の手を」


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