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【書評】井上靖『風濤』 [書評]

元寇を高麗の視点から描きます。


風濤 (新潮文庫)

風濤 (新潮文庫)

  • 作者: 靖, 井上
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/14
  • メディア: 文庫



井上靖の歴史小説のうち、西域物と言われる一連の作品群のひとつです。
主人公は元寇のときの高麗王である忠烈王です。
当時の朝鮮半島はモンゴル帝国に蹂躙され、属国として辛うじて命脈を保っている状態でした。
モンゴル人からの苛烈な要求に、王と重臣は右往左往しながらも、なんとかして国を保とうと努力します。
自らモンゴルの風俗に染まり、フビライにはおべっかを使います。元から派遣された高官には従うしかなく、フビライの温情にすがる姿はとくにかく悲しいです。
著者は資料を深く読んでいるためか、原文で使われている語句が小説でもそのまま使われています。
そのため巻末の注釈を読まないと分かりにくく、とっつきにくいかもしれません。
世代の近い海音寺潮五郎(M34生・井上康の6つ上)の歴史小説と比べると、その文体の差ははっきりします。
なお、井上靖は高麗の元寇参加を、フビライから強要されてのこととして描いていますが、これについては異なる説や資料があるようなので要注意です。

重厚な歴史小説を読みたいひとのために!
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