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【書評】渡辺淳子『もじゃもじゃ』 [書評]

第3回小説宝石新人賞受賞作を含む3編が収録されています。
 

もじゃもじゃ (光文社文庫)

もじゃもじゃ (光文社文庫)

  • 作者: 渡辺 淳子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/04/10
  • メディア: 文庫



第一作短編集で、受賞作、雑誌掲載作、書き下ろしとあると、ぼくの経験ではだいたい

 受賞作 > 雑誌掲載作 > 書き下ろし

になりますが、本作は書下ろしが一番素晴らしい稀有な例だと思います。隠れた傑作だと思います。
もちろん受賞作の『私を悩ますもじゃもじゃ頭』も面白い。全般的に関西テイスト満載で、キャラもよく立っていて、最後が分かりながらも安心して読めます。恋愛物ですが、美男美女がでてくるわけではなく、等身大の日常風景のなかに、ユーモアと関西人としての心が詰まっています。
そして書き下ろしの『かいつぶりの胸のうち』ですが、もじゃもじゃ頭で登場した市営結婚相談所の所長の話です。
親子関係がテーマですが、ユーモラスな語り口のなかに、家族がバラバラになる瀬戸際を通じて、新しい家族関係を見つけていきます。
途中で登場するいわしのつみれ汁とか、小道具の使い方も上手いです。
それに、なんといっても会話が面白いです。これも、各キャラクターがしっかりと著者の胸のうちに形作られており、それぞれが作者の手のひらではなく、自分の意思で動いているからだと思います。

収録されている3編とも高レベルの素晴らしい短編集だと思います。
これはオススメです!
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