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第71期名人戦 第5局(森内名人VS羽生三冠) [将棋]

棋風とは不思議なものだな、と思います。
同じ局面でも、棋士によって有利不利の感覚が異なるし、次に攻めるか守るかも違う。攻める手、守る手にしても、軽くいくのか重くいくのか、棋風によって指がつまむ駒や、駒を置く先が異なります。
結局のところ、大局観といえば聞こえが良いですが、コンピューター将棋風に書けば、人間ごとに評価関数が異なるということだと解釈しています。
攻めが好きなひとは、攻めている局面の評価関数が高い。守りが好きなひとは、守っている局面の評価関数が高い。
それと人間ですので、手が見える、見えないもあると思います。
攻め棋風のひとは、攻める手がよく見える。守り気風はその逆。
ここは、コンピュータにはない人間独自の棋風といえなくもないと思います。

森内名人と羽生三冠の棋風はかなり違います。
森内名人は受け棋風で、じっくりとした展開を好みます。羽生三冠は軽い攻めが得意で、先行する局面を好みます。
本局は羽生三冠が先手ですので、先行する可能性が極めて高いと思いますが、重い守りはあまり重視していないのか、碇のような守備をされると攻めを切らされることが多いように思います。

重い守り対軽い攻め。
今回の勝負はどちらが勝つでしょうか。



ということで、将棋です。
先手羽生三冠の初手7六歩に対して、森内名人は8四歩と突きます。
これは矢倉で戦おうの意思表示であり、二人はスラスラとなれた道を進みます。
羽生三冠は矢倉の中でも主流である4六銀戦法を採用します。これに対し、森内名人は金銀4枚で矢倉を固めて徹底抗戦の構えです。
この戦法は端攻めがメインとなります。
定跡通りにいくと91手組みという恐ろしい変化もあるのですが、森内名人は銀交換の後で新手を放ちます。

3七銀

これは森内名人らしい、重厚な手です。
いかにも重苦しいですが、飛車を見捨てて猛攻しても凌げるという深い読みが必要な手です。おそらく準備の手だったのでしょう。

羽生三冠は意表をつかれたのか、長考に沈みます。
苦しんだあげく飛車を逃げたのですが、まだ一日目ですが、この時点で悪くしてしまったようです。
結果的には飛車を見捨てて、端攻めにかけるしかなかったようです。
森内名人は手数をかけて銀を桂と交換し、その桂を拠点である4五歩の支えの元に打ち込みます。この4五歩も、後手の角筋を遮断するために付き捨てた歩ですが、それを逆用されてしまいました。
受けきれないと判断した羽生三冠は攻め合いに活路を見出そうとしますが、ここから森内名人は強く踏み込み、一気に勝利を手繰り寄せます。
そして、夕食休憩前に羽生三冠を投了に追い込み、見事に名人位防衛を果たしました。
森内名人の強さばかりが目立った一局で、40代半ばにして、まさに絶頂期を迎えた感があります。
二日制の将棋では、棋界最強と言ってもいいと思います。
森内名人は王座戦でも勝ちあがっていますので、名人戦以外でも両者のタイトル戦が見られるかもしれません。

羽生三冠は二年連続の挑戦も、またもや森内名人の壁に阻まれました。
その前は名人位失陥なので、三年連続で森内名人に敗れたことになります。
羽生三冠は名人戦だけでなく、全体的に調子落ちなのが気にかかりますが、また棋聖戦、王位戦、王座戦とタイトル戦防衛戦が続きますので、これから調子を上げてくれることを期待したいと思います。

本局の3七銀は、これから流行すると思います。
新手への対策が練られて、また、将棋はひとつ進化していきます。
これからも両者には将棋の進化へと繋がる対局を続けていただき、将棋ファンをワクワクさせて欲しいと思います!



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