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【書評】大西喬『艦隊ぐらしよもやま物語』 [書評]

太平洋戦争時の兵隊暮らしを描くよもやま物語の11番目です。


艦隊ぐらしよもやま物語

艦隊ぐらしよもやま物語

  • 作者: 大西 喬
  • 出版社/メーカー: 光人社
  • 発売日: 1983/05/01
  • メディア: ハードカバー



著者は大正6年生れで、昭和11年に入営します。
まだまだ平和な時代で、若手時代には後には伝統となる鉄拳制裁を受けるときもありましたが、それは限られたときだけで、乗艦した巡洋艦「古鷹」ではほとんど行われなかったそうです。
戦時中になると鉄拳制裁が頻繁に行われたそうですから、余裕のなさが、人間を暴力に向かわせるのかもしれません。
平和な時代は失敗談などの愉快なエピソードが続きます。
戦争に突入してからも、優勢な時は1名の戦死者に皆が涙を流し、丁重に扱うのですが、戦争が苛烈になるにつれて戦死者はただの数になっていきます。
著者は水雷屋として駆逐艦に乗艦し、幾多の戦場に駆り出されます。最初の乗艦「夏潮」は撃沈され、次の乗艦があの好運艦「雪風」だったことから戦争末期まで生き残り、上陸してからは海軍航空学校の教員となり、最期は本土決戦の準備をしているところで終戦となります。
著者は乗艦時代は暗号解読も担当していたことから、だいたいの戦況を把握しており、戦果発表に疑問を持ち続けます。
本土への帰還や休暇を喜び、味方の戦果や損害に一喜一憂し、あるときは覚悟を決め、次々と危険な任務を押し付けてくる上層部に反感を覚えたり、といった人間らしい姿が自然体で描かれています。
ラストで自分の軍歴が書かれた考課表を燃やすのですが、「いま、私の海軍での青春が、煙となって消えていくのを見つめるばかりであった」との文章が胸に響きます。

太平洋戦争における普通の軍人たち様子を知りたいひとのために!
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