Tome館長さん『空っぽ』 [ショートショートの紹介!]
Tome館長さんの作品を紹介するのは4回目です。
(1回目 『忘れたい女』 → http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2011-05-23 )
(2回目 『ピアノの失恋』 → http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2011-06-29 )
(3回目 『門番』 → http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25 )
驚くべきは、Tome館長さんの創作能力です。
文章と絵がセットになった作品が、ほぼ毎日のように更新されています。
実際に作品を書かれたひとならわかると思いますが、これは実に大変なことです。
アイディアが豊富なだけでは足りなくて、作品を完成させる職人的な手際よさが必要になります。
両方の能力を兼ね備えているTome館長さんの作品を、絵と文章を併せてお楽しみください!
【Tome館長さんのブログ・Tome文芸館】 → ほぼ毎日更新中!
http://poetome.exblog.jp/
【FC2 小説】
http://novel.fc2.com/user/10003215/
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『空っぽ』 Tome館長さん
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別れ際に恋人から刺された。
驚いた。けれど痛みはなかった。
彼女の後姿が小さくなってゆく。
ありふれた別れの言葉さえなかった。
どうしてこんな仕打ちを受けるのか、
納得できる理由は浮かばなかった。
とりあえず胸からナイフを抜く。
ありふれた安物の果物ナイフ。
傷口は穴になっていた。
出血はない。ただの細長い穴。
そのすぐ近くにナイフを刺してみた。
やはり痛くない。予想通り。
細長い穴が二つになっただけ。
腹にも刺してみた。
細長い穴が三つ。
尻にも刺したら、
胸の穴から床が見えた。
穴が繋がったらしい。
腕にも足にも背中にも頭にも
ところかまわず滅茶苦茶に刺してみた。
体中が穴だらけになった。
なんにも入ってない
空っぽの体。
風が吹き抜ける。
寒い。とても寒い。
喉にも刺したから
いまさら恋人の名を呼んでも、
声にすらならない。
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体が穴だらけになるというショートショートはどこかで読んだことがありますが、最後の「喉にも刺したから~声にもならない」という段落がTome館長さんのセンスが発揮された素晴らしい文章です。
Tome館長さんの作品のほうが、断然にセンスがいいです。
異世界的な要素で進んでいた物語が、この段落にきて現実世界に引き戻されます。
遠くの世界だと思っていた話が、急に読者の目の前に、肉感をもって迫ってきます。
このいわば断絶が、この作品に濃淡を生み出していると感じました。
見習うべき手法だと思います。
(1回目 『忘れたい女』 → http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2011-05-23 )
(2回目 『ピアノの失恋』 → http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2011-06-29 )
(3回目 『門番』 → http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25 )
驚くべきは、Tome館長さんの創作能力です。
文章と絵がセットになった作品が、ほぼ毎日のように更新されています。
実際に作品を書かれたひとならわかると思いますが、これは実に大変なことです。
アイディアが豊富なだけでは足りなくて、作品を完成させる職人的な手際よさが必要になります。
両方の能力を兼ね備えているTome館長さんの作品を、絵と文章を併せてお楽しみください!
【Tome館長さんのブログ・Tome文芸館】 → ほぼ毎日更新中!
http://poetome.exblog.jp/
【FC2 小説】
http://novel.fc2.com/user/10003215/
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『空っぽ』 Tome館長さん
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別れ際に恋人から刺された。
驚いた。けれど痛みはなかった。
彼女の後姿が小さくなってゆく。
ありふれた別れの言葉さえなかった。
どうしてこんな仕打ちを受けるのか、
納得できる理由は浮かばなかった。
とりあえず胸からナイフを抜く。
ありふれた安物の果物ナイフ。
傷口は穴になっていた。
出血はない。ただの細長い穴。
そのすぐ近くにナイフを刺してみた。
やはり痛くない。予想通り。
細長い穴が二つになっただけ。
腹にも刺してみた。
細長い穴が三つ。
尻にも刺したら、
胸の穴から床が見えた。
穴が繋がったらしい。
腕にも足にも背中にも頭にも
ところかまわず滅茶苦茶に刺してみた。
体中が穴だらけになった。
なんにも入ってない
空っぽの体。
風が吹き抜ける。
寒い。とても寒い。
喉にも刺したから
いまさら恋人の名を呼んでも、
声にすらならない。
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体が穴だらけになるというショートショートはどこかで読んだことがありますが、最後の「喉にも刺したから~声にもならない」という段落がTome館長さんのセンスが発揮された素晴らしい文章です。
Tome館長さんの作品のほうが、断然にセンスがいいです。
異世界的な要素で進んでいた物語が、この段落にきて現実世界に引き戻されます。
遠くの世界だと思っていた話が、急に読者の目の前に、肉感をもって迫ってきます。
このいわば断絶が、この作品に濃淡を生み出していると感じました。
見習うべき手法だと思います。
紹介していただき、お褒めいただき、とても嬉しく、感謝いたします。
古い作品の投稿が多いのですが、さすがに、そろそろネタ切れ間近。
雑念と煩悩が命ですね。
by Tome館長 (2011-11-19 10:23)
>Tome館長さん
以前もネタ切れ間近といわれつつも、更新速度を落とさないのは流石のひところです。
これからもお互いに雑念と煩悩を膨らませましょう(笑)
by サイトー (2011-11-19 16:26)