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【書評】吉田満『提督伊藤整一の生涯』 [書評]

戦艦大和最後の司令長官である伊藤整一の評伝です。


提督伊藤整一の生涯 (洋泉社MC新書)

提督伊藤整一の生涯 (洋泉社MC新書)

  • 作者: 吉田 満
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2008/11/06
  • メディア: 新書



伊藤整一は日米開戦に反対で、米軍の司令官スプルーアンス大将とも昵懇の中である知米派であり、良識派として目されていました。
しかし開戦となり、長らく中央における作戦のかなめ、軍令部次長という重責を担い続けます。
終戦間際に大和を含む沖縄特攻部隊の司令長官に任命され、定められた運命のように戦死します。
伊藤整一の生涯は、愛する妻や家族との生活と、軍人としての生活に分かれます。
他のひとも書いているように、心の広い素晴らしい人格者で、だれにでも公平で、命を大切にする軍人だったようです。
なにより、心から妻を愛する愛妻家でした。そして、妻も夫を誇りに思っていました。
だからこそ、最後の出撃前の別れのシーンは、お互いに最後だと分かっていながら、妻が夫を勇ましく送り出すところが涙を誘います。
戦争だからやむを得ないとはいえ、貴重な人材を次々と失っていく現実に胸が痛みます。なお、伊藤整一の息子も海軍軍人で飛行機乗りでしたが、終戦直前に戦死しています。
著者の吉田満は大和乗組員で、戦後すぐに『戦艦大和ノ最後』を記しています。
作品の少ない吉田満があえて選んだという点でも、伊藤整一の評価がしのばれます。

伊藤整一の人生を知りたいひとのために!
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