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【書評】阿川弘之『井上成美』 [書評]

最後の海軍大将井上成美の伝記です。
井上成美

井上成美

  • 作者: 阿川 弘之
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1986/09
  • メディア: ハードカバー
井上成美を一言で説明するのは難しいです。 米内光政、山本五十六と並んで有名な対米戦争反対派で、三国同盟反対にも徹底的に反対し、戦争末期には終戦工作の中心人物のひとりとなりました。 基本的には超優秀な官僚タイプで、合理主義、筋の通らないことは断固拒否といった信念のひとのようでした。平時なら優秀な教育者になったと思います。 このような人なので、だれかが伝記を残すべき人物ですが、実際に書くのは難しく、阿川弘之は丹念に苦心してエピソードを拾い集めて、一冊の大著に仕上げました。 並の作家だと、まず戦争反対をメインに据えてそのイメージに適したエピソードのみ集めてしまいそうですが、阿川弘之は良いも悪いも出すことで、人間井上成美の素の姿を描き出すことに成功していると思います。 同時代、同じ組織で息をしていた著者だからこそかけるリアルな本だと思います。 読んでいるうちに、自分が軍官僚の一員になった気持ちになりました。そこまで書き込まれている資料的価値の高い本だと思います。
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