【書評】赤座憲久『目の見えぬ子ら』 [書評]
目の見えぬ子ら―点字の作文をそだてる (岩波新書 青版 439)
- 作者: 赤座 憲久
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1961/12/23
- メディア: 新書
戦後間もなくの、まだ日本が貧しかった時代。
盲学校で盲児たちと向き合い続けた教師が、盲学校での日常を生徒たちの作文を通じてつづります。盲学校の先生と生徒の心の交流が伝わってくる素晴らしい本です。
子供たちは同じ立場に有る仲間たちと、遠足にいったり、修学旅行にいったりと、活き活きとした学生生活を送ります。
収録されている作文に素晴らしいものも多く、P36の「草刈り」は傑作だと思います。草を背負ったときの音といい、そのときの誇らしげな気持ちといい、作者の心情がそのまま読者に伝わるような名描写だと思います。
五体不満足で乙武氏は「不自由だけど不幸ではない」と書きました。その精神と繋がるものが、この本には詰まっています。
本書でも先生からの「同情より理解を」との叫びがあります。
また、晴眼者のためのあんま師養成所ができると聞いたとき、著者たちは反対します。その当時、盲人はあんま師や鍼灸師としてしか生きていけませんでした。
著者たちの訴えが多くのひとの賛同を得て効を奏しながらも、「同情されないと生きていないのは、淋しいことです」とのひとことが胸を打ちます。
障害への理解こそ、この本を貫く、また現在にも繋がる大切なキーワードだと思います。
この本が書かれた当時から50年以上が経ちました。
日本は豊かになりました。障害者へのいろいろなサービスも行き渡っています。障害者に対する気遣いも、一部を除けばコンセンサスが進んでいるように感じています。
本書で述べられているのは盲児についてですが、障害という広いカテゴリで捕らえると、世の中にはまだまだ理解を得られない方もたくさんいると思います。
これからも障害に対する理解が進めばいいと願わざるを得ません。
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