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【書評】一田和樹『絶望トレジャー』 [書評]


ネットセキュリティー君島悟シリーズの第4弾です。君島シリーズは全5作の予定なので、ファイナルに向けての秘密や仕掛けが満載です。


絶望トレジャー

絶望トレジャー

  • 作者: 一田 和樹
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2014/11/25
  • メディア: 単行本



長編小説でありながら、章毎にネットセキュリティーについてのトピックスが配置されていて、短編小説集のような味わいもあります。
第1章『絶望トレジャー』はマルウェアの危険性について。
第2章『暗号遺書』はネット上における本人身元確認について。
第3章『黄昏のテイクダウン』は個人情報について。
第4章『掃除人』は忘れ去られる権利について
もちろん長編として各章は直線で繋がっているのですが、これらのトピックスが第5章で有機的に結びつけられ、事件の真の意味が明らかにされます。
著者はネットセキュリティーの専門家なので、各章における問題提起は興味深く、かつ深刻で、何度もうなずきながら読みました。

ネタバレにならないように伝えるのが難しいのですが、ぼくが読んでいて、一箇所違和感がある場所がありました。
その違和感の正体を最後に知ったときの驚きは「こんな手法があったのか」と、まさに目からうろこがボロボロ落ちました。
この違和感というのは、直接的なものではなく、間接的なものですが、読者になんとなくそういう気分を持たせるのが作者の狙いと思われます。
そうすることで、そのシーンの記憶を鮮明にしてラストの驚きを強化させ、さらにあえて居心地の悪さを抱かせることで、それらが一気に開放されるカタルシス感を増幅させることに成功しています。読者としても、気持ちの良いだまされ方でした。
このテクニックは、本当に驚きました。これを具体的に説明してしまうのは非常にもったいないので、ぜひとも、読んでその技を味わって欲しいです。

ひとつ改善してほしい点を挙げると、書名だけでは君島悟シリーズであることが分からないことです。シリーズ物を第1作から読みたいひともいると思うのですが、出版社の戦略なんですかね?

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