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ゲンノプログレ&あらすじ.COM出演結果 [企画]

【動画はこちら】
http://www.ustream.tv/channel/pikozone#/new/search?q=pikozone&type=all

いきなり変な感想からですが、本当に時代は進みました。
スマホで撮影し、それをそのままユーストリームでライブ放送するということができるという世の中が信じられません。
これだけお手軽にできるとなると、私設番組が増えるのではないかと、勝手に予想します。

それで放送を見たからからご意見をいただきました。
まず音声。
テストのときはよく聞こえたのですが、話しているうちにいつのまにかマイクから遠ざかってしまったようです。
マイクをより近づける必要があったかもしれません。
あと放送が途中で何回か切れてしまったこと。
原因はメールの着信という意外な理由。これはスマホの設定を変更することで対処できるとか。ご覧になった方にはご不便をおかけしましたが、実地で試して分かることがたくさんあるということを実感しました。
(セッティングを全てしてくださったぴこ蔵さんと関口元さんにはお世話になりっぱなしです)

実際に話してみると、1時間はあっというまでした。
事前にこれを話そう、あれを話そうと、ある程度は決めていたのですが、実際に話したことは用意していた題材の一部です。
台本がなくその場のノリで受け答えをしたのですが、まあ、脱線しまくりで、予定に無いことをあれこれ喋っているうちに時間になりました。

ぴこ蔵さんから「例えば通勤に鳥を使っている社会」というお題が出ました。話を作るのにどのくらいと聞かれて、とりあえず「1日」と答えてしまいました。本当は放送中にスラスラとストーリーを作れれば良かったのですが、瞬間的にはいいネタができず、考えるのに1晩かかってしまいました。
しかしまあ、1日と言い切った手前、書いてみます。

―――――

『毒沼』 齊藤 想


 私が乗る鳥は、喘ぎながら羽を動かし続けていた。気を緩めるとすぐに高度が下がり、眼下に広がる毒沼に落ちそうになる。沼に落ちれば命は無い。手綱を引き寄せ、首をしごき、ムチを入れることでなんとか持ち直す。
 こいつに乗り始めて十年になるか、と私は思った。
 この村は毒沼に広がっている林の上にある。地面を歩くことなど不可能で、移動手段は鳥に限られる。この村の人たちは、林の木々から取れる果実を近隣の村に売ることで成り立っている。不思議なことに、毒沼に生える木はあらゆる毒を取り除く力があり、その果実は美味な上にその木の力を体内に取り込む健康食品として人気があった。
 乗鳥が苦しそうな声を上げた。
 もう限界だな。そう思うが、裕福な村人なら、都市で販売されている新鳥に買い換えることができるが、私のような貧乏農民にはそのような手段は無い。古鳥に乗り続け、この鳥が力尽きたときが、私の人生が終わるときだ。
 今日もなんとか家にたどり着いた。
「ねえ、パパ。何か買ってきてくれた?」
 子供たちがよってくる。毒沼を越えた地上の村から仕入れることができたのは、僅かな小麦だけだった。これを家族四人で樹液を混ぜたスープにして食べる。子供たちはわずかな小麦を見て、少し残念そうな顔をしたが、それでも嬉しそうに軽い袋を持ち上げてはしゃぎまくる。
「無事でよかった」
 妻が安堵した表情でつぶやく。私にはこの気持ちが痛いほど分かる。すでに私の鳥は耐用年数が過ぎ、いつ墜落してもおかしくない。果実を取り、売る。この生活が終わるのも時間の問題なのだが、家族はだれもそのことを口にしない。分かっていても避けようがないのだ。
 今日も私は果実を集めて、地上の村に旅立った。
 体調が良いのか乗鳥は順調に風を受け、そして湖畔にある地上村に到着した。私は業者に果樹を渡す。業者は数を数えて、小麦の袋を渡す。昨日よりさらに少ない量だった。
「おい、これだけかよ」
「ばかなことをいうな。こっちだって大変なんだ。この沼を見ろ」
 私はどす黒い沼を見渡した。
「近年になり毒沼が広がったせいで、おれたちの農地が減っているんだ」
「毒沼を広げたのは都市の連中じゃないか。おれたちには責任がない」
 都市には工場が立ち並んでおり、そこから怪しげな赤い液体が毒沼に向かって流れ続けていた。
「だれが広げたって関係ねえ。とにかく農地が減り、小麦の価格が上がっている。おまけに新鳥に乗った連中が果実をやたらと持ってくるから、果実の卸値は下がる一方だ。仕方が無いじゃないか。それとも、鶏肉を分けてくれるのか。いまや古鳥は貴重だからな」
 業者は私の愛機に向けて顎を出した。何かを悟ったのか、鳥は悲しそうな声を上げた。
「金輪際ごめんだ」
 私は僅かな小麦を受け取ると、振り返りもせずに旅立った。
 鳥は喘ぎながら羽を動かし続けた。その上を、銀色の羽を持つ新鳥が追い越していく。
 新鳥はエサを食べない。その代わり都市で生産させる発揮性の液体を飲む。飛翔力は古鳥をはるかに上回り、広い範囲の果実を集めることができる。
 といっても、彼らもいいことばかりではない。新鳥は高い。購入する際に背負った借金に追い立てられるようにして果実を集めるが、卸値が下がる一方なので生活は楽にならない。自殺したものもいるという。
 かといって、古鳥ではもはや新鳥に太刀打ちできない。採算が取れないことを分かっていながら新鳥に乗り移るか、それか力尽きるまで古鳥に乗り続けて、毒沼に落ちるか。
 私は家族の顔を思い浮かべた。どちらも選べないように思えた。かといって、座して死を待つこともできない。
 全てを捨てて都市に移住しようか。
 そのようなことを、ふと考えた。

―――――

番組の途中で話したアイデアは全部ボツにしました。
ただ、結果的にぴこ蔵さんが話された「対立軸」は残っています。その軸が、村と都市とです。
どちらがいいという話ではなく、貨幣経済に飲み込まれていく農村の悲劇を、SFの形を借りて書いてみました。
といっても、結果的にそうなっただけですが。

発想の流れは「なぜ通勤に鳥を使わなくてはならいのか?」→「毒沼の上の村という設定にしよう」→「毒沼の村の生活はどのようなものだろうか」→「果実を集めることにしよう」という流れです。

どんなものでしょうか?
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コメント 3

雫石鉄也

>発想の流れは「なぜ通勤に鳥を使わなくてはならいのか?」→「毒沼>の上の村という設定にしよう」→「毒沼の村の生活はどのようなものだ>ろうか」→「果実を集めることにしよう」という流れです。

この流れを考えられたことは、さすがです。とても面白かったです。
ただ、鳥→自動車というアイデアがちょっとストレートすぎた感じがしました。あいだに、もうひとひねりあればよかったですね。

by 雫石鉄也 (2012-11-25 15:54) 

平渡敏

サイトーさんの実物、結構意外な感じでした。
(何となく小太りな人を想像していました)

『毒沼』もよかったです。
古鳥と運命を共同にした家族の悲しみが上手く描けていますし、誰も幸せにしない新自由主義への批判のような寓意性も感じます。
投稿すればよかったのに。
by 平渡敏 (2012-11-25 16:45) 

サイトー

>雫石鉄也さん
感想ありがとうございます。
思考の流れを褒めていただき嬉しい限りです。この辺りをテーマにまた出演を目指して……となりますかどうか(笑)
あと、おちに一捻りほしかったのですが、いいアイディアが浮かばず(汗)

>平渡敏さん
ぼくは痩せ過ぎとやせぎみの境界線をさまよっている人間だったりする。
油物好きだし、甘いものも好きだし、基本的に夜ドカ食いと太る要素満載の生活なのですが、体質なんでしょうね。
『毒沼』の感想ありがとうございます。
改稿して投稿しようかな(笑)



by サイトー (2012-11-25 20:38) 

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