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齊藤想『ジャンプシューズ』 [自作ショートショート]

ぼくは自分が書き溜めた作品の整理をするのが苦手です。
なんだかよくわからないフォルダに格納された作品がゴロゴロあって、いまや整理不能状態です。
ということで、ぼくのフォルダの中に、昔HPを立ち上げていたときに公開していた作品群がありますので、その中から選りすぐって……というわけではありませんが、ときおり気ままにUPしてみたいと思います。

ということで、どうぞ(笑)

――――――――――――――

『ジャンプシューズ』 齊藤 想


 教授は完成したばかりの靴を助手に見せた。靴とは思えないほど大きく、その姿はまるで象の足のようだった。
 教授は銀色に光る靴を撫でた。
「さあ、新開発したこの靴を見てくれ。こいつの靴底にはとんでもない秘密があってな、この皺だらけのボディーの内側に超強力バネと高反発素材が何重にも挟まれておる。この靴さえあれば、われわれの研究所を見下ろすように建っている隣のビルを楽々と飛び越えることができるのじゃ」
「そんなに凄いのですか」
「もちろんではないか。君が疑うならいますぐ実験しようではないか。さあいくぞ!」
 教授と助手は平屋建ての研究所の庭に出ると、靴をきつく締め付けた。本体と足を完全に固定するために、ボルトを何本も埋める。巨大な圧力に耐えるために、地面には鉄板を何枚も引いた。
 実験の準備が完璧に整うと、教授と青年は合図とともに全力で鉄板を踏みつけた。驚くことに、教授と青年の体は大砲から打ち出されたように跳ね上がった。またたくまに隣のビルを飛び越え、いまや町全体を見下ろせる高さにまで上昇した。
 助手は、興奮気味に言った。
「これはすごい、世界記録更新どころの話ではありませんよ」
「うむ、我ながらここまで飛べるとは思わなかった」
 助手は両手を広げて空中遊泳を楽しんだ。足下に広がる町並み、手が届きそうな雲、すべてが新鮮だった。
 助手の体は放物線の頂点に達して、徐々に落下を始めた。助手は教授に尋ねた。
「ところで、教授。着地はどうするのですか」
「うむ、それは盲点だったなあ」

――――――――――――――

どうもこの作品はH13.4に書いたようです。
そのまま掲載するのはさすがに文書が下手すぎるので、2/3ほど書き直しました。

少しは成長したのかなあ。どうだろう。


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http://p.booklog.jp/book/57753
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