SSブログ

『門番』  Tome館長さん [ショートショートの紹介!]

Tome館長さんの作品を紹介するのは3回目です。
(1回目 『忘れたい女』 → http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2011-05-23 )
(2回目 『ピアノの失恋』 → http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2011-06-29 )

Tome館長さんは短い作品にこだわりをお持ちで、今回も原稿用紙1枚程度の超短編です。
門番も独自の雰囲気を醸し出した佳作です。
絵の雰囲気も素朴なフレスコ画を連想させます。
ぜひともTome館長さんの作品を絵と文章の両方ともお楽しみください!


【Tome館長さんのブログ・Tome文芸館】 → ほぼ毎日更新中!
http://poetome.exblog.jp/

【FC2 小説】
http://novel.fc2.com/user/10003215/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『門番』   Tome館長さん


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

門番表紙.jpg

それはそれは立派な門であった。

絵にもかけないほど立派だった。
つい入ってみたくなるのだった。


「いらっしゃいませ」

高過ぎず低過ぎず、
じつに感じの良い声だった。

「お待ちしておりました」

おそらく門番とでも呼ぶのだろう。

その男に家まで案内された。


意外に狭い庭である。
家も小さかった。

玄関を抜け、居間らしき部屋に入り、
そこで主人と対面した。

「つい入ってしまいました」
「そうでしょう、そうでしょう」

この主人とは初対面であった。

「私を待っていたそうですが」
「話し相手が欲しくてね」

幸せそうな笑顔の老人である。

「それにしても、立派な門ですね」
「そうでしょう、そうでしょう」

「不思議な門と言いますか」

老人の笑顔はそのままであった。

「あれは、あとで建てたんですよ」
「あと、と言いますと?」

「あの門番を雇ったあとですよ」

そう言えば、好感の持てる男だった。

「なるほど。確かに立派な門番でしたね」
「そうでしょう、そうでしょう」

「そうですね、そうですね」


もうなにも話すことがないのだった。

(終わり)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
門番をやとってから門を作るという発想がいいですね。
カフカの短編を彷彿とさせました。
nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 1

コメント 3

Tome館長

齊藤 想さん。
紹介していただき、感謝いたします。

外見が立派で内容が伴わない状況を風刺してますが、それとは別に発想の面白さを認めていただき、嬉しい限りです。
by Tome館長 (2011-08-25 21:54) 

雫石鉄也

いいですね。
実にいさぎよい終り方でした。
立派な門ですが、ほんとうに自慢したいのは、立派な門番なんですね。
どんな立派な男でしょう。
by 雫石鉄也 (2011-08-26 13:14) 

サイトー

>Tome館長さん
外見を立派で内容がを強調するのなら、立派な門に貧弱な門番がいいかもしれませんね。
これからもどんどん紹介いたしますので、よろしくお願いします!

>雫石鉄也さん
ぼくは中国の故事に出てきそうな門番をイメージしました。
例えは変ですが、主人が立派で部下が貧弱な旅人の話です。
部下を馬に乗せて主人が部下のふりをすると、宿の人が「こんな立派な部下を連れているのだから、主人も立派に違いない」と思って便宜を図ってくれるようになる話です。
その主人のイメージです。
(長い説明ですみません……)
by サイトー (2011-08-26 17:37) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0