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第72期王座戦王座戦第3局(藤井聡太王座VS永瀬拓矢九段) [将棋]

藤井王座の2勝で迎えた第3局です。

〔主催者サイト〕
http://live.shogi.or.jp/ouza/

永瀬九段は第2局敗戦後のインタビューで、自分がASDであったことを告白しています。
ASD(自閉スペクトラム症)の診断基準は「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された興味」の2つを満たすことです。
言われてみると、うなずける部分が多いと思います。周りの気持ちを察するタイプではなく、趣味も仕事も将棋とう興味が極端に限定されています。
それがインタビューでは、徐々に緩和されていったとあります。その結果、人間らしくなってしまい、これでは藤井聡太には勝てないと。
「悲しい」とまで表現しています。おどろきの勝負熱です。
永瀬九段は2連敗と後のない状況ですが、勝負熱を発揮して、ここから逆転に向けての第1歩を踏み出すことができたでしょうか!

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/ouza/kifu/72/ouza202409300101.html

ということで、将棋です。
永瀬九段の先手で角換わりとなり、後手藤井王座の選択は最近よく見る右玉です。
金を三段目まで上げて玉周りはスカスカですが、広さとバランスで勝負です。
戦いは盤面右側で始まり藤井王座は馬を作りますが、永瀬九段はお互いの玉側である9筋を突破することに成功します。
評価値は五分五分でも、玉形が大差であること、9筋に逃げ込めば先手玉が広いこと、から先手永瀬九段が勝ちやすい将棋かと思います。持ち時間も永瀬九段が大きくリードしています。
藤井王座が1分将棋に追い込まれる中で、永瀬九段はこまめに時間を使い、121手目の34分で持ち時間を使い切ります。
評価値は永瀬九段の勝勢で、苦しい藤井王座は9七香と王手をかけます。選択肢は2つで合駒に歩を打つか、桂馬の移動合いです。
桂馬の移動合いはいかにも危ないので永瀬九段は歩を打ちますが、この瞬間に逆転しました。
9筋に歩が立たなくなったため後手玉は不詰みとなり、逆に先手玉は7八銀と打たれて詰めろです。
永瀬九段は王手を続けますが、不詰みがはっきりしたところで投了。
なかなかみない大逆転で、藤井王座が3連勝。王座防衛を決めました。

藤井王座おめでとうございます!
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【掌編】齊藤想『旧聞紙』 [自作ショートショート]

本作は愛媛新聞主催の超ショートショート2022用に書いてボツにした作品です。
超ショートショートはテーマが5つあり、本作では「新聞」を選んでいます。
本作をボツにした理由については、こちらの無料ニュースレターで紹介します。次回は10/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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『旧聞紙』 齊藤想

 速報性ではネットにかなわない。発信力ではテレビや動画に負ける。八方ふさがりで右肩下がりの新聞業界の救世主として「旧聞紙」が創刊された。
 主要顧客は若い時代を回顧したい高齢者。彼らが喜びそうな古い情報を、ひたすら流すのだ。旧聞紙を手にした高齢者は、涙を流して過ぎ去りし日々を回顧し、ときには若いころを思い出して元気を取り戻した。
 旧聞紙は思わぬヒットとなった。取材の必要がなく経費も掛からないので、収益はまたたくまに改善した。
 いつしか新聞紙は旧聞紙を作るためだけに発行されるようになった。配達どころか印刷されることもなく、読者の目にふれることもない。下らない記事でも古くなれば価値がでる。むしろ、古くなれば喜ばれそうな記事をのみを集めるようになった。業界は旧聞になるまで記事を蓄積することを「熟成」と呼んだ。
 時代とともに価値を失うじめな取材や社会派の記事は流行らなくなった。そのような記事は利益を生まないからだ。
 いつしか、世の中から新聞が消えた。

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【映画】シックス・センス [映画評]

Мナイトシャラマンを一躍、人気監督にのし上げた超有名作です。


シックス・センス [Blu-ray]

シックス・センス [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2009/07/24
  • メディア: Blu-ray



公開は1998年。主役はブルースウィルス。
ブルースウィルスといえばダイハードの印象が強いですが、本作ではケビンコスナーのような雰囲気です。
子役のハーレイ・ジョエル・オスメントも天才子役との評価を得ますが、大人になってからの活躍はいまひとつのようです。
なかなか難しいです。
さて映画ですが、主人公は精神科医です。以前の患者に逆恨みされ、銃撃されます。
そこから数カ月後、主人公はある少年の治療に取り掛かります。
少年は奇妙な妄想、残酷な考えに囚われています。
実は彼には第六感(シックスセンス)があり、死者が見えるのです。その死者におびえ続けています。
精神科医も治療方針に戸惑い、すれ違いの妻との関係改善のために治療を放棄しようとしますが、少年の懇意により治療を継続します。
二人はある少女の葬式に向かいます。
ここがミッドポイントです。
少年は死者である少女の声を聴き、父親にあるビデオを渡します。そのビデオには、少女が母親によって毒殺された証拠が映っていました。
少年は死者との会話におびえるのではなく、死者の声に耳を傾けることにしたのです。
そう思わせたのは、精神科医の功績です。
孤独だった少年も元気になり、学芸会で主役を演じるまでになります。
その一方で、精神科医は妻との関係に悩んでいました。そんな彼に少年はアドバイスをします。
「寝ているときに話しかければいい」
そうして妻に話かけ、精神科医は実は自らが死者であることを悟ります。
そして、妻に別れを告げます。
実によくできた映画です。
実は死者だった、という設定は他の映画でも使われ2001年『アザーズ』はそのまんまだし、1999年『ファイトクラブ』も改造版です。
それだけ影響を与えた映画と言えます。
本作の素晴らしいところは、ただ「実は死者だった」で終わらせないところです。
精神科医と少年の交流という点、精神科医と妻との関係性、少年と母親との関係性、というドラマを作りそれをオチとは無関係なところでしっかりと成立させているところです。
だからこそ、驚いて終わりの映画ではありません。
製作費40百万ドルで、興行収入は6億73百万ドルと世界的な大ヒットになるとともに、アカデミー賞受賞にはならなかったものの5部門でノミネートされました。

Мナイト・シャラマンの傑作スリラーを堪能したいひとのために!
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【書評】小松左京『こちらニッポン……』 [書評]

小松左京得意のパニックSFです。


こちらニッポン… (ハルキ文庫)

こちらニッポン… (ハルキ文庫)

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2021/12/13
  • メディア: 文庫




ある日、突如として人類のほとんどが消滅します。
日本国内で「消え残った」と推測されるのは二十人ほど。わずかな消え残りのひとりである主人公は、日本各地に散らばる仲間たちとコンタクトをとり、なんとか生活のめどを付けようと奮闘します。
『復活の日』『アメリカの壁』『首都消失』『日本沈没』といった系譜につらなるパニックSFです。
『復活の日』では全世界が新種のウィルスにより南極を残して全滅する世界を描き、『アメリカの壁』ではアメリカが不思議な壁により世界から孤立する話を『首都消失』では逆に不思議な壁によって首都圏にアクセスができなくなる話を『日本沈没』では地殻変動によって日本が海に飲み込まれる話を書いています。
これらの話と『こちらニッポン……』の大きな違いは、人間の少なさです。
急に人間が消えたら社会はどうなるのか、というシミレーション小説ではあるのですが、人間が少ないために人間ドラマが希薄になっています。
終盤で少ない女性を巡って男性同士でトラブルになりますが、なぐりあって解決というのはなんだかなあと。
また、オチも、途中でにおわせられて「まさかこれはないよなあ」と思っていたその「まさか」だったので、うーん、という感じです。
ただ、リーダビリティーは抜群だと思います。

小松左京のパニックSFを読みたいひとのために!
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