【映画】ヨーシャンクの空に [映画評]
ジワジワと評価が高まったオールタイムベストに相応しい傑作です。
主人公は無実の罪で服役となった元銀行員ですが、物語は長期服役囚の調達人レッドの語りで綴られていきます。
主人公は刑務所で痛めつけられ、レイプされたりしますが、元銀行員であるスキルを活かして刑務官たちの税務申告を手伝ったり、刑務所長の裏金帳簿の管理と資金洗浄をすることで刑務所内の地位を獲得していきます。
もちろん仲間への配慮は忘れません。
そんななか、50年以上も服役してきた老服役囚が仮釈放されますが、世間になじめず自殺してしまいます。
老服役囚からの最後の手紙を見て、主人公とレッドは苛まれます。
その後、新しい服役囚から、主人公の事件の真犯人と思われる人物についての情報を得ます。しかし、裏金管理に主人公の力が必要だった刑務所長は再審請求を許しません。
あげくのはてに、意見をかえない新しい服役囚を、脱獄の疑いで射殺します。
主人公は死ぬまで刑務所に縛り付けられる未来が見えて、絶望します。
レッドは主人公が自殺するのではないかと心配しますが、実は今日まで20年間コツコツと準備してきた脱獄を主人公は果たします。
そして仮釈放されたレッドと再会したところで、映画は終わります。
実にいい、そして素晴らしい映画です。
テーマは直接的には「希望のすばらしさ」ですが、広い解釈では「生きる意味」ではないかと思います。
途中で主人公が懲罰覚悟でオペラ「フィガロの結婚」を放送で流すシーンがあります。
これなど、「生きる意味」のひとつですし、主人公が図書室の拡充に汗を流したり、服役囚に高校資格を取らせるシーンも、「生きる意味」です。
老服役囚は世間にでてから「生きる意味」を見付けることができずに自殺してしまいました。その反省からか、主人公はレッドに仮釈放になったら、ということであることを頼みます。
主人公はレッドのことを心配し、生きる意味を預けていったのです。
脱獄まで20年ですが、ちゃんと伏線は貼ってあります。
ロックハンマーにしろ、聖書にしろ、資金洗浄のシステムなど、これらが全てラストに生きてきます。
けど、この映画については、これらの伏線はあくまでおまけです。
希望の持つ力、生きる意味をもつ大切さ、これらを訴えるヒューマンドラマがメインです。
ラストのレッドの独白。
「太平洋が青く美しいといいが」
はごくごく普通のセリフですが、とてもなく泣けます。こうした普通のセリフで泣かせてしまうのは、素晴らしい映画である証拠だと思っています。
ただ興行成績的にはいまひとつで、製作費25百万ドルに興行収入58百万ドルにすぎません。
アカデミー賞7部門にノミネートされますが、『フォレストガンプ』と重なった不運もあり受賞もできませんでした。
しかし、2015年には、アメリカ合衆国議会図書館によって、アメリカ国立フィルム登録簿に「文化的、歴史的、芸術的に重要な映画」として保存されることが決定するなど、歴史に残る名作である評価は揺るがないと思います。
オールタイムベストにも選ばれる傑作を堪能したいひとのために!
主人公は無実の罪で服役となった元銀行員ですが、物語は長期服役囚の調達人レッドの語りで綴られていきます。
主人公は刑務所で痛めつけられ、レイプされたりしますが、元銀行員であるスキルを活かして刑務官たちの税務申告を手伝ったり、刑務所長の裏金帳簿の管理と資金洗浄をすることで刑務所内の地位を獲得していきます。
もちろん仲間への配慮は忘れません。
そんななか、50年以上も服役してきた老服役囚が仮釈放されますが、世間になじめず自殺してしまいます。
老服役囚からの最後の手紙を見て、主人公とレッドは苛まれます。
その後、新しい服役囚から、主人公の事件の真犯人と思われる人物についての情報を得ます。しかし、裏金管理に主人公の力が必要だった刑務所長は再審請求を許しません。
あげくのはてに、意見をかえない新しい服役囚を、脱獄の疑いで射殺します。
主人公は死ぬまで刑務所に縛り付けられる未来が見えて、絶望します。
レッドは主人公が自殺するのではないかと心配しますが、実は今日まで20年間コツコツと準備してきた脱獄を主人公は果たします。
そして仮釈放されたレッドと再会したところで、映画は終わります。
実にいい、そして素晴らしい映画です。
テーマは直接的には「希望のすばらしさ」ですが、広い解釈では「生きる意味」ではないかと思います。
途中で主人公が懲罰覚悟でオペラ「フィガロの結婚」を放送で流すシーンがあります。
これなど、「生きる意味」のひとつですし、主人公が図書室の拡充に汗を流したり、服役囚に高校資格を取らせるシーンも、「生きる意味」です。
老服役囚は世間にでてから「生きる意味」を見付けることができずに自殺してしまいました。その反省からか、主人公はレッドに仮釈放になったら、ということであることを頼みます。
主人公はレッドのことを心配し、生きる意味を預けていったのです。
脱獄まで20年ですが、ちゃんと伏線は貼ってあります。
ロックハンマーにしろ、聖書にしろ、資金洗浄のシステムなど、これらが全てラストに生きてきます。
けど、この映画については、これらの伏線はあくまでおまけです。
希望の持つ力、生きる意味をもつ大切さ、これらを訴えるヒューマンドラマがメインです。
ラストのレッドの独白。
「太平洋が青く美しいといいが」
はごくごく普通のセリフですが、とてもなく泣けます。こうした普通のセリフで泣かせてしまうのは、素晴らしい映画である証拠だと思っています。
ただ興行成績的にはいまひとつで、製作費25百万ドルに興行収入58百万ドルにすぎません。
アカデミー賞7部門にノミネートされますが、『フォレストガンプ』と重なった不運もあり受賞もできませんでした。
しかし、2015年には、アメリカ合衆国議会図書館によって、アメリカ国立フィルム登録簿に「文化的、歴史的、芸術的に重要な映画」として保存されることが決定するなど、歴史に残る名作である評価は揺るがないと思います。
オールタイムベストにも選ばれる傑作を堪能したいひとのために!
【書評】イザベラ・バード『朝鮮紀行』 [書評]
最末期の李氏朝鮮を訪れた旅行記であり、当時の風俗を知る貴重な資料です。
英国人であるイザベラバードが最初に朝鮮を訪れたのは1894年です。
時代背景としては日清戦争の直前で、朝鮮国内では日本と結んで近代化を図ろうとする勢力と、旧来通りに清を頼りにする保守派とで激しい抗争が繰り広げられていました。
当時の朝鮮について、イザベラバードの第一印象は「不潔」「怠惰」と散々です。貨幣経済も未発達で商品は少なく、市井で使える貨幣は不便な穴あき銭程度しかありません。また因習がはびこっており、鬼人の退治や風水に大金を払います。
日本だと室町時代に近い感覚かもしれません。
また朝鮮特有の女性蔑視も甚だしく、プライバシーの概念はなく、さらに見るべき名所もなく、官僚は腐敗しきっていると評価は散々です。僧侶も「だれも見ていなければ戒律を破ってもいい」と酷いものです。少しでも金があるとみなされると、両班がやってきて「金を貸せ」と言って巻き上げる。もちろん返ってこない。だからだれも働かない。
そんな社会だったようです。
ただ、イザベラバードはただ嫌悪することに留まらず、その筆は風靡な風景に目を向け、ときには人々との交流を楽しみ、ロシア国内で懸命に働く朝鮮人の姿に未来への希望を持ちます。
日清戦争後もイザベラバードは朝鮮を訪れていますが、日本が入ってからは一気に環境が改善していきます。
とはいえ、日本人はずいぶんと嫌われていたようです。
口うるさいけど金払いは良く、秩序も守るので、暴虐の限りを尽くした清国人より遥かに良いと思うのですが、このあたりは歴史的なDNAなのでしょうか。
当時の朝鮮を知りたいひとのために!
英国人であるイザベラバードが最初に朝鮮を訪れたのは1894年です。
時代背景としては日清戦争の直前で、朝鮮国内では日本と結んで近代化を図ろうとする勢力と、旧来通りに清を頼りにする保守派とで激しい抗争が繰り広げられていました。
当時の朝鮮について、イザベラバードの第一印象は「不潔」「怠惰」と散々です。貨幣経済も未発達で商品は少なく、市井で使える貨幣は不便な穴あき銭程度しかありません。また因習がはびこっており、鬼人の退治や風水に大金を払います。
日本だと室町時代に近い感覚かもしれません。
また朝鮮特有の女性蔑視も甚だしく、プライバシーの概念はなく、さらに見るべき名所もなく、官僚は腐敗しきっていると評価は散々です。僧侶も「だれも見ていなければ戒律を破ってもいい」と酷いものです。少しでも金があるとみなされると、両班がやってきて「金を貸せ」と言って巻き上げる。もちろん返ってこない。だからだれも働かない。
そんな社会だったようです。
ただ、イザベラバードはただ嫌悪することに留まらず、その筆は風靡な風景に目を向け、ときには人々との交流を楽しみ、ロシア国内で懸命に働く朝鮮人の姿に未来への希望を持ちます。
日清戦争後もイザベラバードは朝鮮を訪れていますが、日本が入ってからは一気に環境が改善していきます。
とはいえ、日本人はずいぶんと嫌われていたようです。
口うるさいけど金払いは良く、秩序も守るので、暴虐の限りを尽くした清国人より遥かに良いと思うのですが、このあたりは歴史的なDNAなのでしょうか。
当時の朝鮮を知りたいひとのために!