SSブログ

【映画】ファンタスティック・プラネット [映画評]

半ば伝説となっている1973年公開のフランス・チェコスロバキア製SFアニメです。


ファンタスティック・プラネット [Blu-ray]

ファンタスティック・プラネット [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/09/27
  • メディア: Blu-ray



舞台となるのはある星です。
そこには巨大な半魚人のようなドラーク人が支配しており、人類はまるで虫のように扱われていました。
ある少年は母親をドラーク人に殺され、そして赤ん坊はドラーク人の娘に拾われてペットにされます。
けど、大きくなったとき、ドラーク人の学習機を盗み出して脱出します。
たどりついたのは人類の集落です。
人類は学習機で進歩します。
それを脅威に感じたドラーク人が人類を駆逐することを決議します。多くの人類が殺されますが、ひとりのドラーク人を反撃で殺害することに成功します。
人類はロケットの墓場に逃げ込み、そこで人類用のロケットを開発し、ドラーク人の自動駆除装置から逃げるように「野生の惑星」に脱出します。
その「野生の惑星」にドラーク人の弱点がありました。
ドラーク人は瞑想を大事にしていますが、その瞑想の行き先は「野生の惑星」で、ここにある首なしの像を壊すと、瞑想していたドラーク人も死んでしまうのです。
追い詰められたドラーク人は和平交渉を提案し、人類も受け入れます。
こうして人類は、ドラーク人が用意した人工の惑星、地球へと移住することになりました。
というストーリーです。
ラストはこうなるだろうな、という感じです。
アニメ技術としては、時代を考えてもチャチで、パラパラ漫画に近いです。
ですが、このシュールな世界観が独特で、いや、これはすごいです。
登場する異世界の生物たち、奇妙な豚、頭がでかい二本足の生物、チンアナゴみたな巨大な草など、異世界の雰囲気が満載です。
wikiにも書かれていますが15世紀中頃~16世紀頭に活躍したオランダの画家ヒエロニムス・ボスの世界感に近いです(特に『快楽の園』『最後の審判』)。
その一方で、人類が進歩していないことを示すためか、人類の服は古代ローマのようです。
ドラーク人がペットの人類に着せるのは、中世ヨーロッパみたいな服です。
大きさや立場だけでなく、こうしたところでも、進歩の差を表現しているのかなと思います。
ドラーク人と人類の差は圧倒的。だが越えられない壁ではない。そういう微妙なラインを示しているのではないかと。
ストーリーとしては前半がひたすら人類の苦難、反撃、そして和解というキリスト教的な感覚なのかな、と思います。
驚きはありませんが、手堅い作りかと思います。
映画のメインが独特な世界観なので、手堅いストーリーでバランスが取れているのかもしれません。
不思議な世界観に浸ることができました。

伝説的なSFアニメを視聴したいひとのために!
nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【書評】福島正実『未踏の時代』 [書評]

福島正実による日本SF創成期の回顧録です。


未踏の時代 (ハヤカワ文庫JA)

未踏の時代 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 福島 正実
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/10/31
  • メディア: Kindle版



日本SFの創成期において、福島正実の存在は大きかったです。
早川書房でSFマガジンを創設し、編集・執筆・新人育成とマルチな才能を発揮し、次々と新進気鋭のSF作家を世に送り出しました。
SF愛との裏腹ではあるのですが、意に沿わない意見には俄然と反論し、様々な問題を引き起こしたようです。
SFに好意的だった文芸評論家の荒正人を激怒させたり、児童文学者協会に対して品のない意見をSFマガジンで書いたりしています。
本書では触れられていませんが、「覆面座談会事件」も引き起こしています。
それでも、SF界の真ん中にいた人物だけに、回顧録は面白いです。
半村良の住所が分からず、受賞通知を出せずに困っていたら喫茶店でばったり会った話や、小松左京のファースト長編を他社にとられたことに出版直前まで気が付かなった話や、超多忙の手塚治虫から原稿の承諾を得た際に、マネージャーから「先生が勝手に決めた話なので責任を持てません」と言われた話など、秘話がたくさんです。
初期から活躍してきた星新一の名前も頻出していますが、いつもユーモア満載のひとだったようです。

SF創成期の熱量を感じたいひとのために!
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ: