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【映画】007/サンダーボール作戦 [映画評]

007シリーズが大作化するターニングポイントの作品だと思います。


007/サンダーボール作戦 [Blu-ray]

007/サンダーボール作戦 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2021/09/29
  • メディア: Blu-ray



冒頭はスパイ映画らしく活劇から始まります。
007は葬式に参列するのですが、屋敷で未亡人に変装した敵に襲われて返り討ちにします。
敵の仲間が集まる中、ボンドは背負うジェット噴射装置で脱出。
まだまだ敵が襲ってきますが、今度はボンドカーが盾を出して、放水(ちょっとしょぼい)で撃退です。
今回の敵もスペクターです。
整形手術で爆撃機パイロットに偽装したスペクターの一員が、爆撃機を乗っ取り、搭載されていた原爆2発を盗みます。
原爆を投下されたくなかったら大金をはらうよう、米英を脅迫します。
007は原爆を探すため、バハマのナッソーに飛びます。
そこで表向きは実業家、裏の顔はスペクターのNo2アルゴへの接触を開始します。
という感じの映画です。
本作から予算が一気に上がったこともあり、大掛かりになっています。
冒頭のジェット噴射装置もさることながら、アルゴの船も危機になると前後分離して前だけ脱走できるようになっています。
アクションも、いままでは単純に殴り合うことが多かったですが、身近にあるものを使うことで格闘のバリエーションが増えています。
カリブ海をアピールするためか、海のシーンが多く、35歳のジェームスボンドは惜しげもなく肉体美と胸毛を披露します。
風景からすると、実際にナッソーで撮影されたのかな、と思います。予算も増えましたし。
また敵の作戦も、爆撃機を盗むところとか、なかなか壮大で楽しめました。
敵の作戦にアイデアがあると、見ている方は楽しいです。
スパイ映画はスケールが大きいほど、頭脳戦になるほど面白いです。
映画の序盤でボンドが病院で襲われるなどのコミカルなシーンがありますが、これが伏線で、顔中に包帯をしていた男は、爆撃機のパイロットに成りすますために整形手術中の男です。
ストーリーについては、ボンドガールが敵と味方の間を揺れ動きます。
ボンドガールは基本的にはアルゴの庇護を受けており、兄は爆撃機のパイロットで、それが彼女の誇りになっています。
その兄がアルゴたちに殺されたことを知り、一気にボンドの味方になります。
が、あまり活躍できないうちに(というか瞬殺で)アルゴにバレて拘束されるのは、まあ、007らしいでしょうか。
タイムリミットの設定として、大金の支払期限、原爆の投下期限があるはずですが、残念なことにいまいち効いていません。
ラストはたぶん期限ギリギリのはずですが、そうした描写があまりなく、どれだけ切羽詰まっているのか不明ですし、そもそも原爆を移動させている途中で最後の格闘になってしまうので。
どこかに設置して……という設定だったらタイムリミットが効果的になるはずですが。
製作費は前作の3倍、第1作の9倍になる9百万ドルで、興行収入は1億41百万ドルの大ヒットとなりました。

よりエンタメ色が強くなった007を楽しみたいひとのために!
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【書評】筒井康隆『ベトナム観光公社』 [書評]

昭和40年代に書かれた筒井康隆初期の短編集です。


ベトナム観光公社 (中公文庫)

ベトナム観光公社 (中公文庫)

  • 作者: 筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1997/12/18
  • メディア: 文庫



一読した感想は、これこそ「ザ・筒井康隆」です。
筒井康隆というと、パロディやナンセンスというイメージがありますが、タブーをタブーとしない突き抜けた感じが好きです。
表題作の『ベトナム観光公社』は、ベトナム戦争が永遠に続き、戦争が観光資源になった時代というパロディ作品ですし、『最高級有機質肥料』は植物星人が人間の廃棄物をありがたかって貪り食う世界というバリバリの下ネタです。
『火星のツァラトゥストラ』はメディアと市民が、持ち上げるだけ持ち上げて飽きると捨てるという世相への皮肉ですし、『マグロマル』は目的のよく分からない会議をちゃかしています。
こうしたおふざけ要素満載の作品もあれば、『血と肉と愛情』といったカリバニズムをテーマとした不気味な話もあります。
『カメロイド文部省』は人類の欲望をモロに描きます。
筒井康隆を満喫できる一冊だと思います。

筒井康隆ワールドを堪能したいひとのために!
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