【映画】007/美しき獲物たち [映画評]
ロジャームーアの最後を飾る最高の007です。
公開時の年齢は57歳で、現時点における007最高齢です。
でもユーモアテイストの強いロジャームーアなら年齢は関係ありません。
ということで映画ですが、雪原におけるICチップ争奪戦から始まります。
時代を反映して、今回のボンドは即興ボードで走り回り、流氷に偽装したおもちゃみたいな特殊艇に乗り込んで脱出します。
これがプロローグで、いよいよ本編です。
今回の主敵はゾリンです。
この特殊ICチップの設計は盗まれた可能性が濃厚で、製造元のゾリンが怪しいと睨み、ゾリンを調べている探偵に接触します。
しかし、この探偵が、ゾリンの部下で女殺し屋、メイデイに殺害されます。
ボンドがメイデイを追うのですが、このシーンが傑作です。
パラシュートで脱出したメイデイをボンドが車で追うのですが、障害物にぶつかるたびに上部を取られ、後ろ半分を取られ、最後は前半分になってしまいます。
もちろんメイデイを取り逃がします。
そこからいろいろあり、ゾリンの目的はICチップを独占すること、そのためにシリコンバレーの地下で石油開発を偽装して掘り進めて大爆を起こして、湖の底を抜けさせると同時に地質学的に大地震を起こしてシリコンバレーを壊滅させることです。
その計画に感づいた元石油鉱区所有者の孫、ステイシーと阻止に奔走します。
という感じなのですが、冒頭の車だけでなく、見所満載です。
消防車を奪って逃走するシーンでは、ボンドは梯子にぶら下がるのですが、固定されていないために消防車が曲がるたびに梯子が右へ左へと暴れまわり、ボンドもそのたびに体を大きく振られます。
ラストもゴールデンブリッジの上という高所での格闘など、これでもかとばかりに、斬新なアクションシーンのアイデアを次々と放り込んできます。
アクションだけでなくストーリーもしっかりしています。
雪原、競馬場、オペラハウス、エッフェル塔、大邸宅、馬術場……さらに市役所、坑道、飛行船、ゴールデンブリッジなど、シーンが次々と入れ替わり、そのたびに謎が明かされたりアクションシーンが入ったります。
観客を飽きさせまん。
もちろんすべてが順調に進むのではなく、ボンドに協力するティベット卿、チャック・リーは命を落とします。ボンドも何度も捕まり、そのたびに命からがら脱出します。
ボンドガールもボンドに助けられるだけでなく、ラストは一緒に戦います。
また敵役のメイデイもいいキャラです。
超人的な能力を持ちながら、独特の見た目もあり、愛に飢えています。
だからこそ、見せかけの愛を語るゾリンについていたのですが、そのゾリンに切り捨てられたのを知り、最後は自らの命を捨ててまでボンドに協力します。
この辺りの流れは、『ムーンレイカー』のジョーズを思わせます。
また、ゾリンは人体実験で作られた天才児という設定ですが、冷酷非道な様子は、敵キャラとしてインパクト十分です。
アクションシーン、ストーリー、キャラのどれも作りこまれた、最高の007だと思います。
ただ、ロジャームーアはボンド映画の中で「最も好きではない映画」と語っているそうです。
年齢のこともあったのかもしれません。
製作費30百万ドルで、興行収入は1憶53百万ドルの成績をおさめました。
ロジャームーアの集大成を堪能したいひとのために!
公開時の年齢は57歳で、現時点における007最高齢です。
でもユーモアテイストの強いロジャームーアなら年齢は関係ありません。
ということで映画ですが、雪原におけるICチップ争奪戦から始まります。
時代を反映して、今回のボンドは即興ボードで走り回り、流氷に偽装したおもちゃみたいな特殊艇に乗り込んで脱出します。
これがプロローグで、いよいよ本編です。
今回の主敵はゾリンです。
この特殊ICチップの設計は盗まれた可能性が濃厚で、製造元のゾリンが怪しいと睨み、ゾリンを調べている探偵に接触します。
しかし、この探偵が、ゾリンの部下で女殺し屋、メイデイに殺害されます。
ボンドがメイデイを追うのですが、このシーンが傑作です。
パラシュートで脱出したメイデイをボンドが車で追うのですが、障害物にぶつかるたびに上部を取られ、後ろ半分を取られ、最後は前半分になってしまいます。
もちろんメイデイを取り逃がします。
そこからいろいろあり、ゾリンの目的はICチップを独占すること、そのためにシリコンバレーの地下で石油開発を偽装して掘り進めて大爆を起こして、湖の底を抜けさせると同時に地質学的に大地震を起こしてシリコンバレーを壊滅させることです。
その計画に感づいた元石油鉱区所有者の孫、ステイシーと阻止に奔走します。
という感じなのですが、冒頭の車だけでなく、見所満載です。
消防車を奪って逃走するシーンでは、ボンドは梯子にぶら下がるのですが、固定されていないために消防車が曲がるたびに梯子が右へ左へと暴れまわり、ボンドもそのたびに体を大きく振られます。
ラストもゴールデンブリッジの上という高所での格闘など、これでもかとばかりに、斬新なアクションシーンのアイデアを次々と放り込んできます。
アクションだけでなくストーリーもしっかりしています。
雪原、競馬場、オペラハウス、エッフェル塔、大邸宅、馬術場……さらに市役所、坑道、飛行船、ゴールデンブリッジなど、シーンが次々と入れ替わり、そのたびに謎が明かされたりアクションシーンが入ったります。
観客を飽きさせまん。
もちろんすべてが順調に進むのではなく、ボンドに協力するティベット卿、チャック・リーは命を落とします。ボンドも何度も捕まり、そのたびに命からがら脱出します。
ボンドガールもボンドに助けられるだけでなく、ラストは一緒に戦います。
また敵役のメイデイもいいキャラです。
超人的な能力を持ちながら、独特の見た目もあり、愛に飢えています。
だからこそ、見せかけの愛を語るゾリンについていたのですが、そのゾリンに切り捨てられたのを知り、最後は自らの命を捨ててまでボンドに協力します。
この辺りの流れは、『ムーンレイカー』のジョーズを思わせます。
また、ゾリンは人体実験で作られた天才児という設定ですが、冷酷非道な様子は、敵キャラとしてインパクト十分です。
アクションシーン、ストーリー、キャラのどれも作りこまれた、最高の007だと思います。
ただ、ロジャームーアはボンド映画の中で「最も好きではない映画」と語っているそうです。
年齢のこともあったのかもしれません。
製作費30百万ドルで、興行収入は1憶53百万ドルの成績をおさめました。
ロジャームーアの集大成を堪能したいひとのために!
【書評】川又千秋『反在士の鏡』 [書評]
古き良きSFの香りが満載です。
ストーリーとしては、鏡をくぐりぬけて宇宙空間をワープする「アリス・ドライブ」が一般化された世界における、二大勢力の不毛な戦いを描きます。
解説で「SFは通俗的なものに慣れている」と書かれていますが、そういう意味で、本書は通俗的なSFのど真ん中です。
冒頭でかっこよくラインオンと名付けられた戦士が登場しますが、このあたりは西部劇のノリです。
主人公は金次第でどちらがわにも雇われる傭兵で、これまたハードボイルド臭がします。
SFの形を取った、古くからよくある物語のパターンです。
反在士は鏡を通じていろいろな場所にいけるのですが、鏡に映る虚像との入れ替わり、さてどちらが虚像で実像なのか分からなくなり……というのもよくありそうです。
ストレートな作品ですが、近年の複雑怪奇なSFとは違い、とても読みやすいです。
文庫版の初版が昭和56年です。
その頃のSFを満喫できる作品です。
エンターテイメント的なSFを堪能したいひとのために!
ストーリーとしては、鏡をくぐりぬけて宇宙空間をワープする「アリス・ドライブ」が一般化された世界における、二大勢力の不毛な戦いを描きます。
解説で「SFは通俗的なものに慣れている」と書かれていますが、そういう意味で、本書は通俗的なSFのど真ん中です。
冒頭でかっこよくラインオンと名付けられた戦士が登場しますが、このあたりは西部劇のノリです。
主人公は金次第でどちらがわにも雇われる傭兵で、これまたハードボイルド臭がします。
SFの形を取った、古くからよくある物語のパターンです。
反在士は鏡を通じていろいろな場所にいけるのですが、鏡に映る虚像との入れ替わり、さてどちらが虚像で実像なのか分からなくなり……というのもよくありそうです。
ストレートな作品ですが、近年の複雑怪奇なSFとは違い、とても読みやすいです。
文庫版の初版が昭和56年です。
その頃のSFを満喫できる作品です。
エンターテイメント的なSFを堪能したいひとのために!