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【映画】007/死ぬのは奴らだ [映画評]

1973年公開の、007シリーズ8作目です。


007/死ぬのは奴らだ [Blu-ray]

007/死ぬのは奴らだ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2021/09/29
  • メディア: Blu-ray



三代目ジェームスボンドを演じるのはロジャー・ムーアです。
初代ジェームスボンドがロジャーより3歳下と考えると不思議な感じがします。
映画は印象的な葬式のシーンから始まります。南国らしく音楽付きの葬列が続きますが、実はこれから殺される諜報員のための葬列で、不意を突かれて殺害された諜報員はそのまま棺桶に放り込まれます。
群衆たちはサンバのリズムで踊りだします。
主敵は架空国家、サン・モニークの首長です。
彼は宗教を隠れ蓑にして麻薬を栽培しています。その麻薬は米国で無料配布し、麻薬中毒者が増えたところで大儲けをしようとしています。
彼はアドバイスを女性タロット占い師から受けています。
サン・モニークに潜入したボンドは、女性タロット占い師を垂らし込み……というストーリーです。
近年の派手な007を見慣れると、さすがに時代を感じる部分はあります。
いつものようにボンドは捕まりますが、すぐに殺さずにワニがいる池に放置するという演出とか、これはもう時代ですね。
カーチェイスでもわざわざ車をひっくり返す演出のために、不自然にジャンプ台のような土盛りがしてあったり、これも時代でしょう。ただ、古い二階建てバスを必死になって運転するシーンは面白かったです。
次々と襲い掛かる危機を、身近にあるものでなんとかするのも、007シリーズの楽しみです。
見せ場としては、ボートでの逃走劇でしょうか。
ときおり地上に飛び出て、結婚式をメチャメチャにしたり、追いかける敵側のボートがプールにはまったり、パトカーに突き刺さったりと、アクションの中にもユーモア満載です。
シリアスとユーモアの融合が、007の魅力です。
ちなみに逃走劇の少し前から町の平和を守る保安官としてペッパー警部が登場です。ペッパー警部は自己評価が高すぎる間抜けな人物として描かれています。
彼自慢の義弟がもっている高速ボートは敵側に奪われているのですが、まったく気が付きません。
なかなかいい味がでています。これで人気が出たのか、次作にも登場します。
Qの秘密道具はでてきますが、今回はいまひとつ活躍しません。Qも登場しません。
主敵を倒した後にも、手下が追跡してきたり、最後までドキドキさせる仕掛けは用意されています。
製作費は7百万ドルで、これは2022年換算しても約50百万ドルです。この予算でこれだけの映画を作るのはさすがです。
興行収入も1億62百万ドルと製作費の20倍を超える大ヒットとなりました。

ロジャームーアの007を見たいひとのために!
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【書評】早坂隆『幻の甲子園 ~昭和17年の夏 戦時下の球児たち~』 [書評]

昭和17年に実施された幻の甲子園のルポです。


昭和十七年の夏 幻の甲子園 戦時下の球児たち (文春文庫)

昭和十七年の夏 幻の甲子園 戦時下の球児たち (文春文庫)

  • 作者: 早坂 隆
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/07/19
  • メディア: Kindle版



戦時中、朝日新聞が主催する甲子園は中止となりました。
ところが昭和17年になり、文部省とその外郭団体の主催で復活します。
主催者が異なるということで昭和17年の甲子園は公式記録には含まれず、「幻の甲子園」として知られるようになります。
国が主催したためか「ローマ字禁止」「選手交代禁止」「死球から逃げるの禁止」など奇妙なルールが定められます。おまけに準決勝2試合目が雨天順延のため、ダブルヘッダーで決勝戦というかなり無理なスケジュールになってしまいます。

本書はこの甲子園に出場した16校、全15試合を、すべて取材して再現した渾身のルポです。
取材時が平成21年なので、幻の甲子園から約70年後です。戦争もあり鬼籍に入った球児も少なくなく、生存している球児も八十代後半です。
取材も大変だったかと思いますが、そのなかで丁寧に証言を拾い、また戦後の記録も合わせて球児たちのその後を追う姿に好感が持てます。
敵性スポーツとして戦時中は迫害され、戦争終盤には名門校といえども野球部は解散となってしまいます。
当時はそのような空気だったのだとは思いますが、いま振り返ると、狂った時代でした。
戦後、すぐに野球は復活し、優勝した徳島中学の球児たちが進駐軍と対戦して、圧勝した話にはほっこりです。

幻の甲子園渾身のルポを読みたい人のために!
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