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【書評】乾くるみ『イニシエーション・ラブ』 [書評]

恋愛小説と見せかけて、実は違う。これは傑作だと思います。


イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

  • 作者: 乾 くるみ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/20
  • メディア: Kindle版



舞台は1980年代の後半の静岡と東京です。
物語はサイドAとサイドBに分かれています。
素直に読むと、マユとたっちゃんとの出会いから別れです。
サイドAは大学生だったたっちゃんがマユと出会い、幸せなクリスマスを過ごすまで。
サイドBはたっちゃんが就職して東京転勤となり、次第にすれちがい、意図せぬ妊娠~胎児となり、二人が別れるまで。
イニシエーションは通過儀礼のこと。タイトルのイニシエーション・ラブは、通過儀礼としての恋愛、成就しない大人になるための恋愛、そういう意味です。
ストーリーもしっかりしており、テーマも盛り込まれています。
内容のあるしっかりとした恋愛小説でありながら、最期の2行目を読むと、いままでの物語が別の意味をもってくる。そして、もうひとつのイニシエーション・ラブについても。
そういう構造です。
この手の作品は、最期のどんでん返しにこだわるあまり、地のストーリーがおざなりになることがあります。
本作は地のストーリーをしっかりさせながら、どんでん返しを成立させているところが素晴らしいです。
たぶん、恋愛小説と読んでいると気が付きません。だれもがどんでん返しに気が付くような親切設計ではありません。
なので、いつかはどんでん返しがあると思って読むのがおススメです。

自信をもってお勧めできる恋愛・ミステリ小説を読みたいひとのために!

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