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【書評】門田隆将『神宮の奇跡』 [書評]

東都野球リーグで学習院大学が唯一優勝した昭和33年のノンフィクションです。


神宮の奇跡 (講談社文庫)

神宮の奇跡 (講談社文庫)

  • 作者: 門田隆将
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/10/09
  • メディア: Kindle版




東都野球リーグはレベルが高く、本書の舞台となった昭和33年当時も、各大学にはプロ入りする逸材がそろっていました。
そうしたなか、学習院大学はなんと大学から野球を始めた選手がレギュラーになるほど枯渇した戦力で戦っていました。
前半では奇跡の優勝を成し遂げたメンバーの前半生が語られます。大企業の御曹司から父母を失いながら命からがら満州から逃げてきた少年など様々です。
そうした雑草軍団が、各自の工夫と必死の練習で、奇跡を起こします。
感動を呼ぶのは優勝後です。
それぞれのメンバーの後日譚か語られます。
幼いころに分かれた母が、合えないまま子供の成長を喜び、東都野球リーグの記事を大事にスクラップしていたことが明かされる場面は思わ涙です。
特別な人間ではなく、普通の人間の努力が、胸を打ちます。

普通の大学生が奇跡を起こした瞬間に立ち会いたいひとのために!
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第3期ヒューリック杯白玲戦展望【中盤戦】 [将棋]

概ね5~6局まで終了です。

[A級]
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/3/a.html
前白玲である西山朋佳女流三冠が5勝1敗とリード。上位陣との対戦は伊藤沙恵女流四段のみであり、かなり有利な位置にいます。
2敗で追うのは、伊藤沙恵女流四段、加藤桃子女流三段、山根ことみ女流二段の3人です。山根女流二段は、加藤女流三段を破った星が目立ちます。
残留争いでは中井広恵女流六段が1勝5敗で苦戦中。西山女流三冠、加藤女流三段戦を残しているのも痛いです。2勝勢が3人いますが、3勝勢との直接対決が残っており、まだまだ分かりません。

[B級]
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/3/b.html
塚田恵梨花女流初段が6連勝と2位と星2つの差をつけて独走です。順位も良いので、残り3戦を全敗しない限り昇級です。
2番手を2敗の鈴木環那女流三段、香川愛生女流四段が争いますが、順位がよいだけに鈴木女流三段が一歩リードです。
残留争いでは、山田久美女流四段が1勝5敗、岩根忍女流三段が0勝6敗と追い込まれています。次戦でどちらかの降級が決まる可能性もあります。
岩根女流三段は勝つしかありません。

[C級]
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/3/c.html
概ね5~6局終了ですが、5連勝が伊奈川愛菓女流二段、和田あき女流初段、加藤結李愛女流初段と3人もいます。特に伊奈川女流二段は順位が2位なので、あと1勝で昇級決定です。
1敗は室谷由紀女流三段で、昇級戦線は実質ここまででしょうか。和田あ女流初段との直接対決が残っており、順位も良いので自力昇級の目が残っています。
残留戦線では船戸陽子女流三段、宮宗紫野女流二段の2人が5連敗で後がありません。あと1敗で降級確定です。

[D級]
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/3/d.html
D級は32人の大所帯。組合せの運不運も大きく影響しそうです。
5戦全勝は渡辺弥生女流二段と大島綾華女流初段。渡辺女流二段は順位が良く1敗してもセーフなのでマジック2です。
1敗勢は内山あや女流初段、村田智穂女流二段、村田智穂女流二段、、梅津美琴女流2級、松下舞琳女流1級の5名。順位が良く、上位陣との対戦がない村田女流二段が少し有利な情勢です。
ですが、全勝と1敗で7人いる混戦なので、まだまだ分かりません。
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【掌編】齊藤想『悪役レスラー志望』 [自作ショートショート]

第18回小説でもどうぞに応募した作品その1です。
ありがたいことに、選外佳作に選ばれました。
https://koubo.jp/article/14228
テーマは「噂」です。

―――――

『悪役レスラー志望』 齊藤 想

 朱里はまだ小学五年生だが、悪役女子プロレスラーを目指している。
 ひとなみ外れた巨漢で、力も強い。せり出たお腹は、何杯でもご飯を詰め込める。
 そして、なにより悪役レスラーにピッタリなのは、この顔だ。つぶれた鼻に、釣りあがった小さな目。美人ではないことは、幼稚園から自覚している。
 舞台では主役になれない。けど、悪役レスラーならヒーローになれる。
 そう信じているからこそ、毎日のように鏡に向かい、怖い顔を研究していた。あえてガサツな行動を取り、作り上げた顔で同級生をにらみつける。
 悲しいといえば悲しい。けど、これが朱里のアイデンティティなのだ。
 ところが、朱里にとって困ったことが起こった。となりのクラスの慎也君が、朱里のことを「かわいい」と言い出したらしい。しかも朱里のことを「好き」という噂だ。
 かわいい悪役など存在しない。怖がられることが朱里の存在価値だ。朱里はプライドを傷つけられた気がした。
 慎也は小柄で、いつもオドオドしてる気の弱い男子だ。少し脅せばビビッて、二度と朱里のことを「かわいい」なんて言わなくなるだろう。
 そう思った朱里は、相撲取りのようにノシノシと歩いてとなりのクラスに侵入し、慎也を問い詰めた。
 慎也は震えながら言い訳をする。
「本当は、朱里のことを”怖い”って言ったんだ。それが”かわいい”と聞き間違えられて、こんな噂を立てられたんだ」
 知ってしまえば下らない。朱里は半分安心して、半分がっかりした。
 朱里は慎也に「二度と余計なことを言うなよ」と念を押してから立ち去った。

 ところが、しばらくしてまた別の噂がたった。今度は慎也が朱里のことを「格好良くて、きれいだ」と褒めているという。
 朱里は怒った。
 私のどこが”格好良くて、きれい”だというのか。団子鼻に三段腹。この顔と体形は、悪役レスラーだからこそ活かされる。
 からかわれているのではないか。朱里は慎也のことが許せなくなった。
 朱里が放課後に慎也を呼び寄せるて、体育館の裏側で問い詰めた。慎也は泣きそうな顔でまた言い訳をする。
「朱里は”学校ですぐにキレる”と言っただけなのに、それがいつも間にかに”カッコよくてキレイだ”になって、はやし立てられたんだ。聞き間違えにもほどがある」
「そう思うなら、その場で違うと否定すればいいじゃないか。変な噂を立てられて、こっちは迷惑なんだよ。黒板に、慎也と朱里のあいあい傘なんて書かれたりして」
 慎也はオドオドしている。
「ごめんよ、ごめんよ。けど……朱里ならヒールじゃなくて、ベビーフェイスでもいけると思うけどなあ」
「おいおい、やめてくれ。気持ち悪い。この自分がベビーフェイスだなんて。ベビーフェイスはかわいい女子がなるもので……」
 朱里は「うん?」と思った。そして、慎也の胸倉をつかむ。
「おい、なぜ慎也がプロレス用語を知っているんだよ。もしかしてマニアか?」
「いや……実は最近、知った」
 慎也が恥ずかしそうに頭をかく。
「みんなの聞き間違いということになっているけど、実は……」
「バカ。お前、いまから変なことを言おうとしてるだろ。それが、迷惑なんだよ」
「朱里はそう言うけど、夢に向かって努力する姿はステキだし、キレイだと思う」
「おい、いい加減にしろよ。この顔と体形で、私がどれが傷つき、苦しんできたのか慎也にはわからないのか」
「だからどうした。ぼくが誰にあこがれようと、自由じゃないか」
 朱里はドギマギした。こんなことで動揺して女子プロレスラーになれるのか。それとも試されているのか。
 朱里は大きく息を吸った。
「女子プロレスラーは恋愛禁止だ」
 少し間を置いた。
「だが、ファンレターは禁止されていない」
 慎也の目が輝いた。
「朱里なら必ずプロになれる。デビューしたらすぐにファンレターを書くから」
「プロ入りどころか、雑誌の一面だってすぐに飾ってやるさ。ここにいる、ファン第1号のためにも」
 朱里はあえて強く慎也の背中を叩いた。
 ほかの人がなんと言おうと、それがどうだというのか。朱里は自分の夢を、誇りにしようと思った。

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