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【書評】三島由紀夫『午後の曳航』 [書評]

三島由紀夫作品の中でも、国内外で高い評価を受けた小説のひとつです。


午後の曳航 (1976年)

午後の曳航 (1976年)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1976
  • メディア: -



主人公は少年法に守られている年齢の少年です。
少年は純粋になるために、他人のふとした行動が許せなくなり、残忍な行為に及びます。
一読して、「透明な作品」という印象を持ちました。
少年たちの思考は哲学的ではあるものの極めて偏狭で、一徹で、かつ芸術的です。
これは自分の解釈ですが、少年たちは大人を汚れたものと認識し、その汚れたものに自分たちも近づいていくことに心の奥底で恐怖感を抱いていたのではないかと思います。
そうした恐怖感の噴出が高尚らしく見える哲学であり、汚れたものへの殺戮です。
純文学的な要素が詰まった作品だと思います。

中編に近い長さなので、三島文学のとっかかりに!
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