SSブログ

【書評】高野和明『グレイヴデッィガー』 [書評]

タイトルは「墓堀人」の意味です。


グレイヴディッガー (講談社文庫)

グレイヴディッガー (講談社文庫)

  • 作者: 高野 和明
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/06/15
  • メディア: 文庫



プロローグで、殺害された麻薬密売人の遺体が盗まれる事件がおきます。
その事件を発端として、壮大な復讐劇が幕を開けます。

本作の構成はかなり技巧を凝らしています。
メインストーリーは主人公の逃走ですが、逃げる理由も背景もしっかりしており、おまけにタイムリミットと主人公がたどり着かなければならないゴールも設定されています。
タイムリミットとゴールの組み合わせは、著者の代表作である『ジェノサイド』でも使われています。
このメインストーリー以外に、複数のストーリーラインが複雑に絡み合います。
道筋が見えてきたと思ったら逆転、また逆転で、最後の最後まで油断できません。
それと同時に闘争劇でも追い詰められながらまた逆転、逆転で読者を休ませません。
構成としては最初にキーワードをばらまいておきます。それに新しい情報が付加されて真相が見えたと思いますが、一部のキーワードが謎のままのこります。
そこにさらに新しい情報が付加されてまたひとつキーワードの意味が判明しますが、まだ謎のキーワードが残ります。
そこにさらに新しい情報が加わり……の繰り返しです。
非常に参考となる手法だと思います。
もちろん戦闘シーンも盛り込まれており、展開に抑揚を付けています。

著者はエンターテイメントのキモを知り尽くしています。
ストーリーテリングの勉強をしたい方にお勧めです!